BtoB向け市場調査の効率的なやり方|進め方のコツ

BtoB市場調査を効率的に進める要は、①調査で「何を決めるか」を一文で定義する、②社内の情報を使い切って仮説を立てる、③少数のインタビューで仮説を磨き、必要なときだけアンケートで検証する、の3点です。

BtoB市場調査は、対象となる企業や担当者が限られるうえ、購買に複数の人が関わるため、「誰に聞くか」の設定も重要です。

本記事では、BtoB特有の対象者や意思決定構造を踏まえ、限られた予算と人手でBtoB市場調査を効率的に進めるやり方を、実務に即して解説します。

なお、市場調査そのものの定義や目的、基本的なプロセスについては、関連記事「市場調査ってなに?簡単にわかる目的・やり方・ポイント」で解説しています。

本記事の全体像は、下図の通りです。

BtoB市場調査の効率的なやり方)の全体像

目次[非表示]

  1. 1.BtoB向け市場調査とは?BtoCとの違いと手間がかかる理由
    1. 1.1.BtoB市場調査の定義と目的
    2. 1.2.BtoC調査との違いは、対象者・意思決定・評価軸
    3. 1.3.BtoB市場調査で時間とコストがかかる3つのボトルネック
  2. 2.BtoB市場調査の種類|目的に合わせて選ぶ3つのアプローチ
    1. 2.1.二次データの活用(社内データ・デスクリサーチ)
    2. 2.2.定性調査
    3. 2.3.定量調査
  3. 3.BtoB市場調査を効率的に進める5ステップ
    1. 3.1.STEP1.調査で「何を決めるか」を一文で定義する
    2. 3.2.STEP2.社内にある情報を使い切ってから仮説を立てる
    3. 3.3.STEP3.調査対象者を「業種・規模・役職・関与度」で定義する
    4. 3.4.STEP4.少数のインタビューで仮説を磨く
    5. 3.5.STEP5.必要な時だけアンケートで検証し、意思決定につなげる
  4. 4.BtoB市場調査をさらに効率化する実践テクニック
    1. 4.1.対象者集め(リクルーティング)の手間を減らす方法
    2. 4.2.調査会社への依頼・セルフ型ツール・自社実施の使い分け
    3. 4.3.回答の質を落とさない設問・謝礼・機密配慮のコツ
  5. 5.BtoB市場調査の活用事例
    1. 5.1.①新規事業・新サービスの需要を検証する
    2. 5.2.②既存顧客の満足度や失注・解約理由を把握する
    3. 5.3.③営業資料やPR向けの調査データの作成
  6. 6.よくある質問
    1. 6.1.BtoB市場調査は自社で実施できますか?調査会社に依頼すべきですか?
    2. 6.2.アンケートとインタビュー、どちらから始めるべきでしょうか?
    3. 6.3.決裁者や特定業種の担当者にもネットリサーチで回答してもらえますか?
  7. 7.まとめ

BtoB向け市場調査とは?BtoCとの違いと手間がかかる理由

BtoB市場調査とBtoC調査は、基本的な考え方は同じですが、調査の対象者と購買の意思決定の仕組みが大きく異なります。この違いを押さえることが、調査を効率化する出発点です。

本章では、BtoB市場調査の定義と目的、BtoC調査との違いを確認したうえで、どこで手間とコストがかかりやすいのかを解説します。

なお、市場調査そのものの定義や、マーケットリサーチとマーケティングリサーチの違いについては、以下の記事で解説しています。
🔗市場調査ってなに?簡単にわかる目的・やり方・ポイント
🔗マーケティングリサーチとは?基本用語と手法を分かりやすく解説! 

BtoB市場調査の定義と目的

BtoB市場調査とは、企業を顧客とする商品・サービスについて、顧客企業の課題やニーズ、購買プロセス、競合状況などを把握し、事業や営業・マーケティングの意思決定に活かす調査です。

BtoB市場調査調査が必要になる場面は、ある程度パターン化されています。代表的な目的は次の通りです。

①新規事業・新製品の需要検証
ターゲット企業に本当に課題があるか、購入する理由があるかを確認する。

②既存顧客の満足度・解約理由の把握
更新や拡販の判断材料、離脱防止の手がかりを得る。

③競合比較・選定理由の把握
比較検討時の自社の立ち位置や、負けている理由を知る。

④開拓する業界・規模の市場性確認
どのセグメントから攻めるか、優先順位をつける。

いずれの目的でも大切なのは、整った市場データを作ること自体ではなく、次の行動に使える判断材料を得ることです。経験上、BtoB市場調査でつまずきやすいのは、目的そのものよりも、「どんな数字や意見があれば判断できるのか」が社内で固まらないまま調査に入ってしまうことです。

そのため、調査設計に入る前に、調査で何を決めるのかを文で書き出しておくことが欠かせません(詳しくは後述のSTEP1で解説します)。

BtoC調査との違いは、対象者・意思決定・評価軸

BtoB調査とBtoC調査との違いは、主に①対象者、②意思決定の仕組み、③評価軸の3点です。大切なのは、違いを知るだけではなく、それが調査設計にどう影響するかまで押さえておくことです。下記の比較表では、この3点に「意思決定期間」と「回答への制約」を加え、調査設計への影響とあわせて整理しました。

観点

BtoB

BtoC

BtoB市場調査設計への影響

対象者

業種・規模・役職の特定条件で限定され、母数は小さい

年齢・性別・居住地域などの属性で、比較的広く抽出できる

インタビューの比重が上がり、定量調査は傾向把握として割り切る

意思決定
の仕組み

複数の役割(DMU)の関与により決定する

個人が短時間で自発的に決める

「誰に聞くか」の設計が品質を決める。役職よりも関与度で絞る

意思決定期間

数か月から数年に及ぶこともある

数分~数日(高額な商品では数週間以上)

一時点の断面では購買文脈を拾い切れない。失注・解約・検討中断の声で補うことも有効

評価軸

ROI・リスクなどの「企業の論理」

ニーズ、好み、流行、自己表現など

設問は「課題の強さ」「経済合理性」を軸にしつつ、現場の事情もあわせて聞く

回答への制約

守秘義務と担当者の多忙さによる制約が大きい

生活者が気軽に回答できる

匿名性の保証・第三者調査機関による実施・個別より一般的な設問など、安心して回答できる設計が必要

特に見落としやすいのが、「意思決定の仕組み」です。

BtoC調査では、1人(または1世帯)を1つの対象として聞けるため、設問を直感的に作れます。一方、BtoB市場調査では、同じ会社の中でも立場が違う複数の人が、同じ商品・サービスをまったく異なる基準で評価しています。「複数の関与者」の理解を省いたまま調査すると、結果が「設問ごとに矛盾した、まとまらない情報」になりがちです。

またBtoB市場調査は、BtoC調査に比べ調査対象者の母数が少ないため、十分なサンプル確保が難しく、統計的な精度より傾向把握を重視するケースもあります。

DMU(購買関与者)ごとに変わる聞くべきこと

同じ企業の中でも、現場の利用者は「使いやすさ」、情報システム部門は「セキュリティ」、決裁者は「投資対効果」を重視するなど、立場によって評価のポイントが異なります。

このように購買に関わる人々の集まりを、DMU(Decision Making Unit:購買関与者集団)と呼びます。BtoB市場調査の設計では、必ず「誰に聞くか(DMUのどの立場か)」を先に決めてください。決めないまま始めると、結果がぼやけます。

下図に、DMUの5つの役割と、それぞれの主な関心事を整理しました。

DMU(購買関与者)とそれぞれの主な関心事

誰に聞くかを決めるうえで、まず大切なのは、調査で決めたいことに最も影響力のある立場を優先することです。例えば、価格改定の判断なら購買部門、UI改善なら利用者です。

次に大切なのは、役職名ではなく、購買への関与度(利用・選定・情報収集・最終判断)で対象者を絞ることです。

実際の調査では、可能な範囲で顧客に事前にヒアリングし、相手企業の社内事情を把握したうえでDMUの優先順位を付けるようにしています。例えば、次のような点です。

  • 情シス部門の発言力が強いのか?
  • 選定担当がボトルネックになりやすいのか?
  • 利用者(現場)や購買部門から評価されても、決裁者の“一声”次第なのか?

BtoB市場調査で時間とコストがかかる3つのボトルネック

BtoB市場調査が「時間がかかる・結果が使えない」と言われる原因は、①問いが肥大化する、②対象者探し(リクルーティング)が難しい、③結果が社内で共有・活用されない、の3つに集約できます。

以下では、それぞれの内容と、本記事の後半で紹介する解決策をあわせて整理します。

ボトルネック①問いの肥大化

「せっかく調査するなら」と、ついでに聞きたいことが増えていくパターンです。設問が100問を超える調査では、設計から回収・分析・報告書作成の全てに時間がかかり、回答品質も落ちます。

実際に、当初10問程度だった設問が、実施直前にはその数倍まで膨らんだ案件もありました。
⇒ STEP1で「何を決めるか」を一文で定義することで解消します。

ボトルネック②対象者探し(リクルーティング)の難しさ

BtoB市場調査の対象者は母数が少なく、業種・役職・購買関与度の組み合わせで対象者数が急減します。さらに「決裁者」のように立場が上の人は、守秘義務(担当案件について詳しく話せないこと)や多忙さから、回答を敬遠しがちです。

⇒STEP3の4軸の条件定義と出現率の考え方、「対象者集め」で紹介する既存接点と外部モニターの使い分けで解消します。

ボトルネック③結果が社内で共有・活用されない

回収して終わりという調査では意味がありません。「報告会を開きました」で終わり、営業や商品企画の判断に結びつかない調査は、実施しなかったのとほぼ同じです。

このようなボトルネックをクリアするには、まず「手法の選択肢」を知り、そのうえで進め方を設計することが重要です。次章では、目的に合わせて手法をどう選び、組み合わせるかを解説します。

⇒STEP5で、結果を意思決定文に照らして報告することで解消します。

BtoB市場調査の種類|目的に合わせて選ぶ3つのアプローチ

BtoB市場調査の手法は、既存の情報を活用する「二次データの活用」と、新たに情報を集める「定性調査」「定量調査」の3つに大別できます。手法の名前から選ぶのではなく、「調査で決めたいこと」から選ぶのが基本です。下記の早見表を、ご自身の状況に当てはめてみてください。

調査で決めたいこと

向いている手法

補足(BtoB市場調査での使いどころ)

市場規模・業界動向の把握

二次データ(社内データ+デスクリサーチ)

一次調査に進む前に、これで足りるか否かを判断(最も低コスト)

課題・選定理由・購買プロセスの深掘り

定性調査(デプスインタビュー中心)

母数の少ないBtoB市場調査では、インタビューが主軸になる

仮説が当てはまる割合の検証

定量調査

インタビューで仮説を構築してから実施するのが基本

営業・PR資料に使える「引用できる数字」づくり

定量調査

調査データをコンテンツ・営業資料に再利用

実務では、複数の手法を段階的に組み合わせて使います。仮説が十分に固まっていない場合は、「定性調査⇒定量調査」の順で進めるのが基本です。先に仮説を絞り込むことで、アンケートの設問の肥大化を防げます。

例えば、新しいSaaS開発に向けた市場検討なら、①競合のIR・導入事例・業界統計で市場の全体像をつかみ(デスクリサーチ)、②数社の現場担当者へのインタビューで課題と購買プロセスを把握して仮説を立て(定性調査)、③その仮説が当てはまる割合をアンケートで検証する(定量調査)、という三段構えで進めます。

各手法の一般的な定義や手順は下記の別記事で解説しているため、本記事では「BtoB市場調査ならではの使いどころ・判断基準」に絞って掘り下げます。

🔗定量調査・定性調査とは?違いと使い分けの判断基準を事例で解説
🔗マーケティングリサーチとは?基本用語と手法を分かりやすく解説

二次データの活用(社内データ・デスクリサーチ)

BtoB市場調査では、社内データが最もコストの低い情報源です。一次調査に進む前に、まず社内データと公開情報で何が分かるかを確認しましょう。

社内データとは、CRMやSFAの商談履歴・失注理由、解約記録、営業日報、問い合わせ・サポート履歴などです。これらからは、既存顧客の失注や解約、問い合わせの傾向や、顧客が実際に使う言葉での購買理由が分かります。一方、まだ接点のない企業や業界の声は分かりません。

公開情報とは、官公庁の統計や業界団体の資料、産業調査資料、競合企業のIR・導入事例などです。業界の規模や動向、競合の立ち位置、購入検討時に比較される視点などが分かりますが、競合が選ばれる本当の理由までは分かりません。

こうした「分からないこと」だけを、インタビュー(定性調査)やアンケート(定量調査)で補うのが効率的な進め方です。

社内データと公開情報で「わかること・わからないこと」を一覧にまとめました。

デスクリサーチの具体的な進め方や情報源の一覧、テキストマイニング(自由記述の量的分析)の手法については、以下の記事で解説しています。「デスクリサーチだけで足りるか」の判断の目安も、あわせてご確認ください。

🔗デスクリサーチとは|リサーチ マーケティング用語集
🔗市場調査は、デスクリサーチだけでも十分か(FAQ)
🔗テキストマイニングとは

定性調査

BtoB市場調査では、定性調査(特にデプスインタビュー=1対1の深掘りヒアリング)の比重が高くなります。その理由は、①母数が少なく十分なサンプル数を確保しにくい、②購買プロセスが複雑で、動機や背景まで聞かないと理解できない、の2点です。そのため、BtoB市場調査の設計の「核」になるのは定性調査です。

聞く相手の選び方の基本軸は、「調査で決めたいことに深く関与する立場か」です。

「なぜ競合に負けたか」を知りたいなら失注先、「業界横断的な課題」を知りたいならエキスパート(領域の専門家)が適しています。

聞く相手別に得られる情報を一覧表にまとめました。

聞く相手

得やすい情報

用途・注意点

既存顧客(導入済み)

選定理由、満足点、活用上の困りごと

拡販の検討に有用だが、成功例に偏りやすいことに注意

失注・解約先

検討からの離脱点、決めなかった本当の理由

営業には伝わっていない本音がわかる。匿名性の保証が必須

エキスパート(専門家)

業界横断的な課題・動向、課題の重要度

短時間で広い視野からの情報が得られる。最初の仮説づくりに有用

パートナー・代理店

顧客への提案状況、提案が受け入れられる理由・受け入れられない理由

「売れる理由」の裏付けが取れる。営業トークになりやすいため、本音を引き出す工夫が必要

デプス(1対1)とグループ(1対多)のどちらを選ぶかについては、BtoB市場調査ならではの注意点があります。 原則として、デプスインタビューを主軸にしてください。その理由は以下の2点です。

理由①同業他社の担当者が同席すると本音が出にくい
グループインタビューの利点は、同じ立場の人の意見を比較できることです。しかしBtoB市場調査では、競合他社の担当者が同席するだけで、社内の事情が伏せられ、本音が出にくくなります。

理由②購買プロセスの詳細は個別に深掘りしたほうが早くて正確
同じ企業内でも、利用者・情報システム部門・決裁者では、語れる情報の範囲が異なります。複数の立場の意見が混ざったままだと、現場のリアリティが薄れがちです。

逆に、「共通の課題を共有して反応を観察したい」場面(新しいコンセプトへの反応確認など)ではグループインタビューも有効です。ただしその場合も同業他社の同席は避けてください。

🔗デプスインタビューとは?目的・手法・活用・実践まで解説
🔗グループインタビューとは|リサーチ マーケティング用語集
🔗インタビュアーとは
🔗質的データとは

定量調査

BtoB市場調査における定量調査の役割は、インタビューで磨いた仮説の「検証」と、「割合の把握」の2つです。市場全体の平均値を出すことではなく、「ターゲットとなる企業の中で、この傾向が当てはまる割合はどれくらいか」を把握することが目的です。

母数の少ないBtoB市場調査では、統計的な精度よりも傾向把握を目的にする場面が多いと割り切ることが、設計をスムーズに進めるコツです。

配信先ごとの特徴を、比較表にまとめました。

配信先

向いている調査

注意点

調査会社・セルフ型ツールの外部モニター

・未接点企業・担当者の声

・業種・役職・関与度によるスクリーニング

条件が狭いと出現率が低下し、回収に時間がかかる

自社の顧客リスト・メルマガ読者

既存顧客の満足度、ニーズの分布

既存顧客に偏るため、失注の声が取れない

自社リスト(既存顧客・メルマガ読者)に限定すると、「競合検討中」「失注」の声が取りにくくなります。市場全体の傾向をつかむには未接点企業の声が必要な場合が多く、その場合は外部モニターを活用したネットリサーチが基本です。

一方で、外部モニターで「決裁者」など特定の立場の人に回答してもらう場合は、購買への関与度(利用・選定・情報収集・最終判断)を専用の設問で確認する必要があります。

ネットリサーチそのものの仕組み、定量調査の詳しい解説、量的データの定義は、以下の記事で解説しています。

🔗定量調査・定性調査とは?違いと使い分けの判断基準を事例で解説
🔗Webアンケート(ネットリサーチ)とは?作り方・メリット・回答率を上げるコツまで解説
🔗量的データとは|リサーチ マーケティング用語集

BtoB市場調査を効率的に進める5ステップ

BtoB市場調査は、以下の5ステップで進めるのが効率的です。ポイントは、最初から大きく調べるのではなく、小さく調べて仮説を磨き、必要な分だけ検証することです。

  • ①何を決めるかを一文で定義する
  • ②社内の情報を使い切って仮説を立てる
  • ③対象者を業種・規模・役職・関与度の4軸で定義する
  • ④少数のインタビューで仮説を磨く
  • ⑤必要な時だけアンケートで検証する

BtoB市場調査を効率的に進める5ステップ

STEP1.調査で「何を決めるか」を一文で定義する

「このサービスを中堅製造業向けに展開すべきか判断する」のように、調査結果をもとに下す意思決定を一文で書き出すと、聞くべきことと対象者が自然に絞られます。

逆に、ここが曖昧なまま進めると、設問も対象者も絞り込めず、その後のすべての工程に時間がかかります。

意思決定文の良い例と悪い例は、次のとおりです。

意思決定文の例

理由

○ 良い例

「このサービスを中堅製造業向けに展開すべきか判断する」

判断対象(展開の可否)と対象者(中堅製造業)が同時に決まる

○ 良い例

「既存顧客の解約防止に向けて、営業資料のどの点を改訂すべきかを決める」

対象者が「既存顧客」に固定され、設問を「解約動機」に絞れる

× 悪い例

「新しい事業機会を探したい」

決めることが書かれておらず、設問も対象者も定まらない

× 悪い例

「課題を広く確認したい」

「広く」が肥大化の原因となり、設問が際限なく増える

意思決定文を書いたら、「調査結果がAならXを実行する、BならYを実行する」と、結果ごとの行動を事前に想定しておくのも効果的です。どんな結果が出ても行動が変わらない問いは、調査する必要がありません。こうして問いを絞り込むことが、設問の肥大化を防ぐ一番の近道です。

STEP2.社内にある情報を使い切ってから仮説を立てる

営業担当者への30分のヒアリングや、直近の失注理由の集計だけでも、調査で検証すべき仮説の大半が見えてくることがあります。追加コストをかけずに仮説を立てる手順は、次の3つです。

①失注・解約理由の集計

SFA(Sales Force Automation)に「失注理由」「解約理由」の項目があれば、それを集計します。自由記述の場合は「価格・稟議・競合・体制・タイミング」など数個のカテゴリで粗く分類(コーディング)し、件数を数えるだけでも十分です。

②営業・カスタマーサクセスへの短時間ヒアリング

1人あたり30分程度で構いません。「最近、検討を中止した顧客を1〜2社挙げ、その理由は何か」「有力な競合と比較された商談で、なぜ勝った(負けた)のか」を聞くだけでも、方向性が見えてきます。

③問い合わせ・サポート履歴の分類

Web問い合わせやサポート履歴を月単位・タイプ別に分類し、頻出の内容を把握します。問い合わせの多い「業種・規模・立場」から、まだ接点がない領域の対象者像が推定できることがあります。

ここで立てる仮説は、「〇〇業界の情報システム部門は、△△を理由に導入を見送っている」のように、「主題+主語+理由」の検証可能な形が理想です。「価格が高いからだろう」のように、誰がそう考えているのかが分からない意見は、インタビューやアンケートで検証する材料にならないため、検証可能な形に書き直します。

仮説の整理シートの例を、下図に示します。

たとえば、失注理由を粗く集計すると「価格」が最も多かったとしても、営業担当者へのヒアリングを重ねると、その裏に「既存システムからの移行の手間」が隠れていることがあります。

この場合、「中堅製造業の情報システム部門は、既存システムからの移行の手間を理由に導入を見送っている」という仮説を立て、STEP4・STEP5で検証します。なお、SFAに記録された失注理由には営業担当者の推測が含まれるため、STEP4では必ず失注先や検討者本人に確認してください。

STEP2を省略して、いきなり外部に調査を依頼すると、何が課題なのかを把握する前に社外へコストをかけることになりがちです。社内の情報を使い切ったうえで、初めて「外部に聞かないと分からないこと」に絞って調査を進めてください。

STEP3.調査対象者を「業種・規模・役職・関与度」で定義する

調査対象者を決める際、例えば「製造業の担当者」では条件が広すぎます。「従業員300名以上の製造業で、生産管理システムの選定に関わった課長職以上」のように、①業種、②企業規模、③役職・部門、④購買への関与度の4つの軸で条件を言語化しましょう。

対象者定義のテンプレートを、下図にまとめました。

対象者定義のテンプレート

4軸のうち、BtoB市場調査ならではの鍵になるのが、④購買への関与度です。役職だけでは、実際に購買に関わった人を絞り込めないため、スクリーニング設問で関与度を確認します。例えば、次のような設問を役職の設問とあわせて入れるのが実践的です。

・過去1年以内に、〇〇の導入を検討しましたか?
・その検討で、あなたはどの立場でしたか?(利用・選定・情報収集・最終判断)

出現率から逆算して条件の優先順位を決める

出現率とは、モニター全体のうち、指定した条件に合う人の割合のことです。条件を1つ追加するごとに、対象者数は掛け算的に減っていきます。

条件を絞り込めば、よりターゲットに合った回答者を得られます。しかし絞り過ぎると、該当者が集まらなかったり、集まった回答者に偏りが生じて本来のターゲットを代表しなくなったりと、調査自体が成り立たなくなるリスクがあります。

条件追加による対象者数の減少イメージ

優先順位をつけるコツは、必須条件と希望条件を分けることです。例えば、「業種」と「購買への関与度」は調査の目的から外せない必須条件とし、「役職」や「従業員規模」のように代替可能な条件は希望条件にする、という考え方です。実務では、4軸すべてを機械的に必須条件とせず、調査目的に直結する条件を優先することが重要です。

なお、条件を絞るほど出現率が下がり、回収期間が延びたり費用がかさんだりする点も、念頭に置いておきましょう。

STEP4.少数のインタビューで仮説を磨く

仮説を磨く段階では、まず少数のインタビューから始めます。共通の質問テンプレートを用意し、短時間で効率よく話を聞きましょう。

BtoBインタビューの質問テンプレート例

Q1.現在の業務とその課題
「現在の業務で、どのようなことにお困りですか?」

Q2.これまでの取り組み
「その課題に対して、直近でどのように取り組みましたか?」

Q3.競合比較
「導入を検討した際、比較した商品・サービスはありましたか?」

Q4.選定基準
「選ぶ際に重視した基準を、重要な順に教えてください」

Q5.DMUの確認
「その判断は、ご自身が行いましたか? 他のどなたかが関与しましたか?」

Q6.決定の理由
「なぜその基準で判断されたのですか?」

Q7.中断理由(未導入の場合)
「どの時点で検討を中断しましたか? また、その理由を教えてください」

件数の目安と「打ち止め」の判断基準

一般的に、同じ意見の繰り返しが続き、新しい指摘や発見が出なくなった時点を、打ち止めの目安にします。実務では5〜8社程度を一つの目安として始め、意見の収束状況を見ながら追加する方法が現実的です。

複数部門が関わる購買など、対象者の立場によって意見が異なる場合は、必要に応じて追加で実施します。

1回あたりの時間

オンラインの場合、1回あたり30〜60分程度が現実的です。決裁者なら45分程度、現場の利用者なら30分程度が多いです。一般的に、1時間を超えると回答者の集中力が落ちて発言の質が下がるため、簡潔に区切ることを推奨します。

録画・文字起こし・AI要約による分析の短縮

Web会議の録画・文字起こし・AI要約を組み合わせると、分析担当者の手間を大幅に減らせます。「AIで文字起こし・要約→人が重要発言を確認」という流れがいいでしょう。

未接点の対象者を外部から集める

未接点企業・決裁者を自社の接点だけで集めるのは現実には難しい場合があります。そのような場合は、外部モニターに対してスクリーニングで条件を絞り込み、条件に合う人にインタビューへの協力を募る方法も有効です。具体的な進め方は、後述の「対象者集め(リクルーティング)の手間を減らす方法」で解説します。

🔗インタビュー協力者を募集できる「Freeasyリクルーティング」

STEP5.必要な時だけアンケートで検証し、意思決定につなげる

インタビューだけで意思決定ができるのでしたら、定量調査は必要ありません。定量調査を実施するかどうかの判断フローを、下図にまとめました。

定量調査実施可否の判断フロー

実施しなくてよいサイン

  • インタビューで十分に結論が出た(意見が一致し、判断できる)
  • 検証したい仮説が、数値化できない内容である(心情や組織的事情など)
  • 設問が固まっておらず、粗いまま実施しようとしている(まずは設問の設計を優先する)

実施すべきサイン

  • 社内の稟議や上長への報告で、根拠となる数字が必要(推測では承認が得られない)
  • ターゲット市場の大きさや、事業の規模感を見積もりたい
  • 営業資料やPR資料に、引用できる数字が欲しい

実施する場合のポイントは次の3点です。

①設問を絞る
STEP1の意思決定文に関係する設問だけに絞り、スマホで5分以内で終わる分量にします。設問が短いほど回答率と精度が上がります。

②回答形式をある程度統一する
選択式など、クロス集計しやすい形式を基本にし、自由記述は補助的に使います。

③報告はSTEP1の意思決定文に照らす
レポートの最後に、STEP1の意思決定文を再掲し、その答えを書くのが最も効果的です。「調査の結果、自社はどう判断するのか」まで書き切ることで、結果が意思決定に直結します。

BtoB市場調査をさらに効率化する実践テクニック

進め方を整えたうえで、対象者の集め方や依頼先の選び方、回答の質を保つ工夫を取り入れると、期間とコストをさらに抑えられます。本章では次の3点を解説します。

  • 対象者集め(リクルーティング)の手間を減らす方法
  • 依頼先(調査会社/セルフ型ツール/自社)の使い分け
  • 回答の質を落とさない設問・謝礼・機密配慮のコツ

いずれも、STEP1〜5の進め方を土台にして組み合わせることで、効果が高まります。

対象者集め(リクルーティング)の手間を減らす方法

対象者集めは、①既存の接点(商談・カスタマーサクセスの定例・契約更新時など)を転用する方法と、②外部モニターにスクリーニングを行うことで協力者を募る方法の2つが基本です。

リクルーティングが難しいのは、「対象者を探す手間」と「対象者と日程などを調整する手間」の両方がかかるためです。2つの方法の特徴を、比較表にまとめました。

①既存接点の転用

②外部モニターのスクリーニング

向いている

・既存顧客と見込み客の定性調査

・満足度、NPS、解約理由の把握

・未接点企業と決裁者を対象とした調査

・特定業種・役職での抽出

注意点

自社の接点に偏る(競合検討中・失注についての声は得られない)

条件が狭いと出現率が低下し、回収期間が延びる

実務での工夫

営業担当者との事前調整、カスタマーサクセス定期会議に10分の枠を組み込む

・関与度をスクリーニング設問で確認する

・オンラインで1対1のデプスも可能

①既存接点は、既存顧客や見込み客への定性調査に適しています。一方、②外部モニターは、未接点の企業・決裁者を対象にできるのが強みですが、条件が狭いと出現率が下がるという限界があります。実務では、「既存顧客なら①、未接点企業なら②」を基本に、まず①で既存の接点を当たり、次に②で未接点企業に広げると、対象者集めが最も速く進みます。

①既存接点の転用(実施の際の注意点)

営業担当者と事前調整することが重要です。事前に通知がないと、顧客が困惑したり、営業担当者との関係に支障が出ることがあります。目的・主な設問・匿名性・謝礼の目安を事前に共有してください。

カスタマーサクセスの定期会議を利用する
定期会議の一部(例えば10分)に「顧客の声を聞く枠」を組み込むと、その場で対象者の適性の判定もできて効率的です。

商談や問い合わせの中で承諾を得ておく
商談や問い合わせの際に、「後日、別の担当者から短時間お話を伺えないでしょうか」と打診し、事前に承諾を得ておく方法も現実的です。

②外部モニターのスクリーニング

例えばFreeasyの場合、1,300万人規模のモニターから、アンケートで条件(業種・役職・購買関与度)に合う人を抽出し、協力者を募集できます。1対1のオンラインデプスインタビューであればWeb会議システムでそのまま実施できます。

その他、自社の顧客リストやリード・メルマガ読者に自社でアンケートを配信したい場合は、セルフ型のアンケートツールで配信・回収を一括管理する方法もあります。

🔗アンケート作成ツール(FreeasyASP)
🔗インタビュー協力者を募集できる「Freeasyリクルーティング」

調査会社への依頼・セルフ型ツール・自社実施の使い分け

どこに依頼するか(調査会社・セルフ型ツール・自社)は、「向いている調査」「スピード」「社内の負担」の3つの観点で比較して決めます。 「調査会社にすべて任せる」「自社ですべて実施する」と決めつけず、調査の内容に応じて使い分けるのが効率的です。

調査依頼先の比較表

視点

①調査会社へのフル依頼

②セルフ型ツール(Freeasyなど)

③自社実施(既存接点の転用)

向いている調査

ニッチな業界の経営層インタビュー(機密性が高い案件)

条件が比較的広いビジネスパーソンへの短期アンケート

既存顧客へのインタビュー・満足度/NPS調査

スピード

依頼から報告まで1~1.5か月程度

設問が固まれば即日~1週間で実施可能

調整次第で素早いが、社内調整工数が増える

社内の負担

低い(設計・回収・分析までを外注)

中程度(設問設計も集計も自社で行う)

高い(対象者との調整、営業やCSの負担増)

“セルフ型ツール”が向いているのは、条件が比較的広いビジネスパーソンへの短期アンケート、そしてスピードを優先したいアンケートです。

“自社実施”が向いているのは、既存顧客へのインタビュー・満足度調査です。ただし「自社の既存接点に偏る」ことを設計時に織り込む必要があります。

一方、セルフ型ツールが向かないのは、主に次の3つのケースです。

1つ目は、極めてニッチな業界の経営層に、外部から接点をつくって聞きたい場合です(外部モニターにも該当者が少なく、回収できない可能性が高いため)。
2つ目は、社内に設問設計や集計ができる人員がいない場合です(ツールだけでは設計の良し悪しまでは判断できず、人の目が必要なため)。
3つ目は、機密性が非常に高い内容や、複数社の競合比較を横断的に取りまとめる必要がある場合です。

2つ目のケースについては、たとえば「セルフ型ツールを導入したものの、設問設計の人手が確保できずに棚上げになった」という声を聞いたことがあります。このような場合は、セルフ型ツールよりも先に、設計の相談先(外部のリサーチャーや調査会社)を確保するほうが、結果的に早く進むでしょう。

\BtoB調査の対象者集め・アンケートを効率化したい方へ/

Freeasyでは、設問の作成から配信・回収・集計まで自社で完結でき、調査モニターへのアンケートに加え、条件に合うインタビュー協力者を募集するリクルーティングも利用できます。

回答の質を落とさない設問・謝礼・機密配慮のコツ

BtoB市場調査における回答の質は、主に「設問の設計」「匿名性の設計」「営業調整」で決まります。具体的には、次の6つのポイントを押さえましょう。

回答品質を落とさないためのチェックリスト

設問の配慮

✓設問数を絞り、社内の内部名称・略称を一般名に置き換える

✓表記のゆれは事前に統一しておく(集計の混乱を防ぐため)

匿名性の配慮

✓「回答者が特定されることはありません」と明記する

✓可能なら自社名を伏せて第三者による実施と明記する

業務調整の配慮

✓担当営業と事前に共有(目的、設問、匿名性、謝礼など)

✓顧客が困惑しないよう、事前通知の担当者を決めておく

設問順序の配慮

✓最初に重い設問を置かない

✓軽く答えられる設問から始めると、回答が途切れにくくなる

必須設問の配慮

✓必須設問を絞る(関与度の確認など、必要最小限のみ)

✓必須設問が少ないと、回答が途切れにくくなる

謝礼の配慮

✓一般的に低すぎると誠意が伝わらず、高すぎると回答動機が歪んでしまうこともある

設問数を絞り、専門用語の表記をそろえる
製品コードや部内の略称など社内だけで通じる言葉は、外部の回答者には伝わりません。表記の揺れも集計時の混乱につながるため、配信前に統一しておきましょう。

匿名性を保証する
BtoB市場調査では、調査主の社名が分かるだけで回答が控えめになり、質が下がる傾向があります。必要に応じて、自社名を伏せたり、第三者による実施としたりする方法も検討しましょう。

既存顧客に聞く際には、担当営業と事前に調整する
事前の共有がないと、顧客が困惑し、営業担当者との関係が悪化する恐れがあります。顧客へ事前に連絡する担当者も決めておくと安全です。

最初から難しい設問を置かない
最初の設問が答えやすいかどうかで、回答を続けてもらえるかが大きく変わります。負担の重い設問は後半に置きましょう。

必須設問の数を絞る
必須設問が多いと、回答が途中で中断されやすくなります。関与度の確認など必須にすべき設問と、任意でよい設問を明確に分けましょう。

謝礼は一般的な水準にする
謝礼が低すぎると誠意が伝わらず、高すぎると回答の動機が歪みかねません。回答の質は、謝礼の額よりも「答えやすい設計」で決まることが多いと考えておきましょう。

BtoB市場調査の活用事例

ここでは、BtoB企業がよく行う市場調査の活用場面を3つ紹介します。

  • ①新規事業・新サービスの需要検証
  • ②既存顧客の満足度や失注・解約理由の把握
  • ③営業資料やPR向けの調査データの作成

なお、本記事で取り上げる事例は、手法を分かりやすく説明するための想定例です。実際の活用事例は、以下のページも参考にしてください。

🔗アンケート調査の活用事例!商品開発、広報など職種別で解説
🔗Freeasyの導入事例

①新規事業・新サービスの需要を検証する

新規事業・新サービスの需要検証は、定性(課題の掘り出し)⇒定量(割合と規模感の検証)の2段構えが基本です。 「どの時点で、どの数字を根拠にGo/No-Goを判断したか」を先に決めておくことで、判断の遅れを防ぎます。

新規事業の需要検証の流れ

STEP1.意思決定文

「中堅製造業に、生産管理システムのSaaS化版を提供すべきか判断する」と定義しました。

STEP2.社内情報で仮説

SFA・問い合わせログ・営業日報から、生産管理システムの代替を検討した顧客を把握しました。そのうえで営業・カスタマーサクセスに各30分ヒアリングし、「価格ではなく、既存システムからの移行の手間が第一の要因」という仮説を立てました。

STEP3.対象者定義

「従業員300名以上の中堅製造業で、生産管理システムの選定に関わった課長職以上」を4軸で定義し、関与度を専用設問で確認しました。

STEP4.少数インタビュー

検討を中断した経緯を語れる立場の担当者を選び、5~8社にデプスインタビューを実施しました。その結果、「移行の手間」が懸念の中心であることを確認しました。

STEP5.割合の検証

「移行の手間を第一の要因とする割合」「稟議の段階で検討を中止した割合」など、意思決定の根拠になる数字を、セルフ型アンケートで取得しました。

判断

移行の手間を減らす機能を付けたうえで、中堅製造業向けに提供すること(Go)と決定しました。あわせて、この機能を営業資料でも優先的に訴求することにしました。

判断のポイント

定量調査で取るのは、意思決定の根拠になる「割合」だけに絞り、「なぜそうなのか」という理由はインタビューの定性意見で補えば十分です。検証すべき仮説以外の設問を加えないことが、STEP5を過剰にしないコツです。

調査を小分けにして素早く進める方法(アジャイルリサーチ)については、以下の記事で解説しています。
🔗アジャイルリサーチとは

②既存顧客の満足度や失注・解約理由を把握する

解約した顧客や失注先に第三者がインタビューすると、営業担当者には言いにくかった本音が見えてくることがあります。一般的に、失注理由の「表向きの理由」と「本当の理由」がずれているケースは少なくありません。

例えば、製造業向けのサービスで、SFAに記録された失注理由が「価格が高い」だったとします。しかし、第三者が失注先の担当者本人にデプスインタビューを行うと、本当の理由は「稟議の段階で、既存システムからの移行に不安が残り、検討が途中で止まっていた」ことだった、というケースは珍しくありません。

「価格が高い」という記録は、営業担当者の推測にすぎません。実際には価格ではなく、導入全体への不安が検討を止めていたのです。

この「表向きの理由と本当の理由の乖離」を引き出せるのが、第三者インタビューの最大の価値でしょう。

表向きの理由と本当の理由の差

このずれが調査として問題になる理由

①SFAの「失注理由」は営業担当者の推測を含んでいる
本人が直接語ったものではなく、推測の要素が強い。

②正しい対策が打てない
表向きの理由に合わせて価格を見直しても、本当の原因が導入への不安であれば、対策は的外れになり、同じ失注が繰り返されます。

調査を設計する際の注意点

①SFAの記録をそのまま失注理由として扱わない
失注先の担当者本人に確認し、必要に応じて第三者によるインタビューを活用するのが有効です。

②「表向きの理由」と「本当の理由」を並行して聞く
まず表向きの理由を確認し、そのうえで背景を掘り下げます。匿名性を保証すると、本当の理由を聞き出しやすくなります。

③解約・失注先へのインタビューは、担当営業以外の第三者から行うことも検討する
顧客が自分の担当者に気を遣う状況を避けるためです。事前に「第三者が実施する」旨を案内しましょう。

既存顧客の満足度調査の進め方については、以下の記事で解説しています。
🔗
顧客満足度調査(CS調査)とは?目的・方法・調査票の作り方

③営業資料やPR向けの調査データの作成

「経理担当者の7割が〇〇に課題を感じている」のような調査データは、ホワイトペーパー・プレスリリース・営業資料の説得力を大きく高めます。このように、企業が情報発信を目的に自ら企画・実施する調査を「自主調査」と呼びます。下図のように、1つの調査データを複数の資料に再利用できます。

自主調査データの活用先(ホワイトペーパー・PR・営業資料)

自主調査がBtoBマーケティングで効果的な理由

BtoBの商談や提案では、「どのくらいの企業が同じ課題を抱えているか」という割合の根拠が求められます。そのため、数字で示せるデータがあるだけで、提案の説得力が大きく変わります。

情報展開の際の注意点

①誘導的な設問を避ける
例えば、「〇〇にどのような課題を感じていますか」のように課題があることを前提にした設問で、「7割が課題を感じている」と公表すると、結果の信頼性が疑われます。まず課題を感じているかどうかを聞き、感じている人にだけ内容を尋ねる形にするのが安全です。

②回答者条件とサンプル数を明記する
「従業員XX名以上の◯◯業種、n名の回答」のように、対象とサンプル数を明示して、読み手が結果の範囲を理解できるようにします。これらが書かれていないと、読み手に「どこから取った数字か」と疑問を持たれ、引用されにくくなります。

③実施時期・実施方法を明記する
実施時期や実施方法を明らかにすることで、データの信頼性が高まります。

自社で自主調査を実施する場合は、セルフ型ツールで配信・回収・集計まで自社で完結させることも可能です。多くの人の目に触れるデータだからこそ、「設問と対象者の妥当性」を優先して設計しましょう。

🔗自主調査とは 
🔗自主調査レポート事例(アウトプット例):【ソーシャルメディア利用実態調査】広告や投稿・シェア閲覧からの購入率1位は「TikTok」

よくある質問

ここでは、BtoB市場調査に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q

BtoB市場調査は自社で実施できますか?調査会社に依頼すべきですか?

A

条件が比較的広いビジネスパーソンへの簡易なアンケートや、既存顧客へのインタビューであれば、自社で、またはセルフ型アンケートツールを使って十分に実施できます。

一方、未接点の企業や経営層へのリクルーティングが欠かせない案件、機密性が高い案件、複数社を横断した競合比較が必要な案件は、調査会社に依頼する方が効率的です。

判断の目安は、次の3つです。

  • 必要な対象者がどこにいるか(既存の接点か・未接点か)

  • 社内に、設問設計・回収・分析ができる人員がいるか

  • いつまでに結果が必要か

Q

アンケートとインタビュー、どちらから始めるべきでしょうか?

A

課題や購買理由がまだはっきりしていない段階(新規事業や未知の業界など)なら、インタビューから始めるのが基本です。一方、検証したい仮説がすでに明確で、その割合を知りたい段階なら、アンケートから始めても構いません。

BtoB市場調査では多くの場合、5〜8社程度のデプスインタビューで仮説を固め、必要に応じてアンケートで割合を検証する、という順番が効率的です。

定量調査と定性調査の違いや使い分けについては、以下の記事で解説しています。
🔗
定量調査・定性調査とは?違いと使い分けの判断基準を事例で解説

Q

決裁者や特定業種の担当者にもネットリサーチで回答してもらえますか?

A

業種や役職を条件にしたスクリーニング調査を行えば、ネットリサーチのモニターからも、決裁者(部門長以上・経営層)や特定業種の担当者に回答してもらえます。

ただし、条件を厳しくするほどモニター内の出現率が下がり、十分なサンプル数を確保しにくくなる点には注意が必要です。極めてニッチな業界の経営層など、モニターに該当者がほとんどいない場合は、エキスパートインタビューや調査会社への依頼も検討しましょう。

調査の品質を保つうえで最も重要なのは、購買への関与度(利用・選定・情報収集・最終判断)を専用の設問で確認することです。役職だけでは、実際に購買に関わった人かどうかを区別できないため、関与度を確認する設問を合わせて入れましょう。

🔗Freeasyの調査モニターの特徴

まとめ

BtoB市場調査は、次の5ステップで進めると、限られた予算と人手でも意思決定に使える結果が得られます。

①調査で「何を決めるか」を一文で定義する
②社内の情報を使い切って仮説を立てる
③対象者を4軸(業種・規模・役職・関与度)で定義する
④少数のインタビューで仮説を磨く
⑤必要なときだけアンケートで検証する

特にDMUを踏まえて「誰に聞くか」を決めることや、出現率から条件の優先順位をつけることなど、BtoB特有の観点を押さえることが、結果の質を大きく左右します。あわせて、既存の接点と外部モニターの使い分けや、依頼先の使い分けを工夫すると、期間とコストをさらに抑えられます。

5ステップの全体像を、改めて下図にまとめます。

BtoB市場調査を効率的に進める5ステップ(再掲)

\アンケート調査の実施手段を検討中の方へ/

アンケートによる定量検証が必要になった場合は、セルフ型のネットリサーチツールを活用することで、調査を効率的に進められます。

セルフ型アンケートツール「Freeasy」は、設問の作成から配信・回収・集計まで自社で完結でき、調査モニターにアンケートを配信できます。また、条件に合うインタビュー協力者を募集するリクルーティングも利用できます。

柏田宮亜
柏田宮亜
この記事はアイブリッジ 柏田宮亜が編集・構成を担当しました(編集者 / コンテンツディレクター)。2020年6月よりセルフ型アンケートツール『Freeasy』に関わり、記事の編集・構成を担当。読者の目線に立って、わかりやすく、役立つ情報を届けられるよう心がけています。

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