アンケート調査の活用事例!商品開発、広報など職種別で解説
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はじめに
アンケート調査を実施するにあたり、職種別の「調査事例・調査実施案」や「活用例・活用法」はとても参考になります。
ここでは4つの職種「商品開発、マーケティング担当」「広告代理店」「サービス・接客業」「広報・PR担当」をピックアップし、調査の目的からおすすめのアンケート形式、調査票、調査後にどういう成果が出たか(どんな“気づき”があったか)を分かりやすく解説します。
「商品開発、マーケティング担当向け」アンケート調査活用法
以下はあるFMCG(消費者向け日用消費財)の商品開発ステップを必要とされる調査の例です。
商品開発のステップと調査
商品開発のステップ順に、実施する主な調査を紹介します。
1.狙うべき市場の特定
デスクリサーチ、POSデータ分析、定性調査、定量調査
2.切り口の探索
・POSデータ分析、定性調査によるユーザーベネフィット候補策定
・定量調査によるユーザーベネフィットの絞り込み
3.商品コンセプトの作成
・定性調査による商品コンセプトの見直しと練り直し⇒ コンセプトテストの設問内容を検討
・定量調査によるコンセプトテスト(詳細後述)
4.プロダクト開発
自社従業員対象の試作品のラボラトリーテストなどを経て、セントラルロケーションテスト、ホームユーステストなどでプロダクトテストを実施⇒プロダクトテストと試作品の改良を繰り返す
5.商品仕様の決定、コミュニケーションコンセプトの作成
【商品仕様の決定】
・ネーミングの定量調査
・パッケージのシェルフインパクトテスト
【コミュニケーションコンセプトの作成】
・プロダクトテスト結果での高評価者へのインタビュー
・コミュニケーションコンセプト作成後、定量調査
6.発売準備
・価格設定のための販売テスト、ないしは販売予測モデルを使ったシミュレーションテストマーケット(STM)
・購入意向の調査として、トップブランドとの一対比較調査「ブランドアイデンティファイドテスト」を行う(ホームユーステスト)
7.発売
発売する
8.発売後の対応
購入者追跡調査は基本的に定量調査(ウェブ調査、店頭での声掛け調査、商品へのアンケートはがき封入など)だが、購入者を対象にした定性調査により、心理面を掘り下げる場合もある
アンケートの目的
前述の商品開発ステップのうち、重要度の高い商品コンセプトテストを取り上げて解説します。
商品コンセプトが作れたら、その商品コンセプトの「市場での受容性」を検討します。具体的には、商品コンセプトが消費者にどう評価されるか、どの程度受け入れられるか、さらに買ってもらえるかどうかを、明らかにしていきます。
調査項目は、商品コンセプトに対する「好意度」「魅力度」「内容の理解度」などの項目があり、
それぞれ高評価が望まれますが、その上で評価の決め手となるのは「購入意向」と「新奇性」です。
コンセプトテストの結果、評価が芳しくなかったということから、商品コンセプトを改良し、再度コンセプトテストにかけることは、効率が良くありません。コンセプトテストの段階で、吟味を重ねた上で作成した複数のコンセプトを用意しておくことが重要です。
おすすめのアンケート(選び方)
商品コンセプトテストは、商品開発ステップの中で最初に行われる本格的な定量調査です。
もちろん、「狙うべき市場の特定」と「切り口の探索」でも定量調査が行われることはありますが、ケースバイケースです。
コストと時間を勘案すれば、商品コンセプトテストにはウェブ調査が向いています。
アンケート調査票の例
今回の例では、P案、Q案、R案の3コンセプトについて、マトリクス形式の5段階シングルアンサー(単数回答)で調査票を作成しました。
3つのコンセプト案(文章)を提示した後に、以下の調査票に回答してもらいます。
アンケート結果の活用例
コンセプトテストの結果を分析し、どの案を採用するか決めます。もちろん、結果を受けて採用するコンセプトをブラッシュアップしていくこともよくあることです。
得られた知見
調査前の仮説と異なり、
・理解度が若干、低いながらも、Q案の新規性と購入喚起度が突出 ・好意度と魅力度も著しく低くはない |
よって、Q案がコンセプトとして選ばれる最有力候補になった。
Q&A
Q.コンセプトテストの結果通りに、コンセプト案を採用すればいいのでしょうか。
基本的にはその通りですが、5段階評価でTop1(「とても買いたい」)とTop2(「とても買いたい」 「まあ買いたい」の合算)の順位が異なるケースも、珍しくないです。その場合、クリエーターを含めた社内の各部署のメンバー間での協議で決めることもよくあります。
まとめ
コンセプトテストに限らず、定量調査では事前に調査項目を練りに練っておくことが必須です。また、項目ごとに「○○%を上回れば合格」というノルム値を設定することもよくあります。
「広告代理店向け」アンケート調査活用法
アンケートの目的
効果的な広告展開のためには、戦略検討に始まり、広告の事後評価をするなど多くの調査が必要となります。ここでは代表的な調査例として広告効果測定について解説します。
おすすめのアンケート(選び方)
広告出稿後に行う広告効果測定は、回答者数が数百人以上は必要なこともあり、ウェブ調査で行うことが一般的です。
アンケート調査を行うタイミングは、広告出稿後ある程度時間を空けないと商品購入に至らず、逆に数か月間など時間が空きすぎると消費者の記憶から消えてしまうこともあるので、過去の調査経験と実績を参考とし、入念に設定する必要があります。
アンケート調査票の例
アンケート調査票は、広告の認知から商品購入と商品情報シェアまでのファネルを作成するために設計します。
アンケート結果の活用例
広告の認知から商品購入と商品情報シェアまでのファネルを作成します。
ファネルの各フェーズの数字から、広告のどこにボトルネック(障害)があるのかなどを検討します。
得られた知見と課題
「理解」から「購入」に至るフェーズでの離脱が多かった |
つまり 「興味・関心」の高さまでは仮説通りだったが、「購入」に至るまでの内容「理解」が不十分。そこで、商品のスペック、消費者のベネフィットの訴求ポイントの再検討が必要となった。
Q&A
Q.ファネルのフェーズは、一般的に決まっているのでしょうか。
自社オリジナルのフェーズでも構いません。上記のファネルにはない「比較・検討」というフェーズを加えるケースもあります。
まとめ
上記Q&Aの通り、「広告効果測定」では自社にとって最もフィットするファネルやモデルを構築することもおすすめです。もちろん、ファネル作成だけではなく、各設問項目の結果をグラフ化して詳細に分析もおこないましょう。
「サービス・接客業向け」アンケート調査活用法
アンケートの目的
サービス・接客業において最も重要な指標は「顧客満足度」です。ただし、顧客にとって「満足度」が高い項目でも、「重要度」が低ければ手放しで喜ぶわけにはいきません。
おすすめのアンケート(選び方)
上記目的から、「満足度」と「重要度」をセットで調査する「満足度インパクト分析」が威力を発揮します。
サービス品質の項目の満足度と重要度を、主に5段階評価で測定し、4象限でマッピングをして評価します。そしてこの調査には、WEB定量調査が向いています。
アンケート調査票の例
サービスと品質の評価では、「SERVQUAL(サーブクオル)モデル※」がよく使われます。
①有形性、②信頼性、③応答性、④確実性、⑤共感性という「SERVQUALモデル」の項目について、5段階評価でデータを収集します。
※1988年に米国のA・パラスラマンなどが提唱したモデル。
アンケート結果の活用例
横軸に「重要度」、縦軸に「満足度」の4象限マトリクスを作成します。
そして、 4象限にプロットされたサービス品質の項目に優先順位をつけ、改善を行っていきます。
抽出された課題改善の方向性
・対応済:維持することが重要。過剰投資にならないように! ・要対応:経営資源投入の再分配(増加)が必要。 ・要調整:経営資源投入の再検討(減少)が必要。 ・後対応:経営資源投入の再検討が必要だが、満足度低下には注意! |
Q&A
Q.「SERVQUALモデル」の項目は難しそうです。必ずその通りの項目を設定する必要がありますか。
必ずしもその必要はありません。アウトプット(4象限)により、具体的に着手すべき施策の優先順位を決められるのなら、各企業独自の項目を設定するほうが現実的です。
まとめ
「満足インパクト分析」は、厳密に「SERVQUALモデル」を使うにせよ、独自の項目を設定するにせよ、一つの項目につき「満足度」「重要度」のデータを、ヌケモレなく取得する必要があります。
よって、レストランのテーブルに置かれているような自記式のアンケートではなく、タブレットを使用する、または自社顧客対象のWEB調査で行うことが理想的です。
「広報・PR担当向け」アンケート調査活用法
アンケートの目的
アンケート調査結果をプレスリリース記事にまとめて広く発信することにより、自社と商品・サービスの認知度向上、ブランドイメージ向上を図ります。
おすすめのアンケート(選び方)
インパクトとわかりやすさが求められるタイトルには数字を入れることが理想的です。よって定量調査がおすすめです。
スピード感が必要なケースが多い上に、コストを考えるとWEB調査がいいでしょう。
アンケート調査票の例
以下は、音楽サブスクサービス提供企業が自主調査を行った、【音楽嗜好調査】の調査票例です。
最もインパクトが強いコンテンツとなる項目は、Q2-3. 「想い出の曲を知った年齢」です。
まず想い出の音楽の有無を聞き、つづいて曲名とアーティスト名を自由記述で書いてもらいました。さらに、リリースの内容充実のため、Q11.やQ12.で音楽関与のデータも収集しました。
集計の結果、平均年齢は19歳でした。
アンケート結果の活用例
発信した結果が下記のとおりです。
・「想い出の音楽と出会った年齢の平均は19歳」というタイトルは注目を浴び、プレスリリース記事は、Yahoo!のトップページに採り上げられ、複数のテレビ局の情報番組で取り上げられた。
その結果、サイトへのアクセス数と有料契約者数が増加した。
・サイトの認知度の向上とともに、広告出稿企業の数も増加した。
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課題は、プレスリリース記事が多くの企業・生活者に届くことにつきます 。
Q&A
Q.メディアから注目される「テーマ」ですが、自由に設定していいのでしょうか。
自社の展開事業(商品・サービス)との関連性・整合性さえあれば問題ありません。商品やサービスそのものをテーマにした調査結果が多いですが、商品・サービスを取り巻く生活者のライフスタイル(価値観・行動)の調査も有効です。
まとめ
テーマは時流に合っていることが望ましいですが、「想い出の曲を知った年齢」のような、普遍性を狙ったテーマも有効です。
音楽というテーマは一般性も高く(音楽が嫌いな人は少ないという仮説)、FMCGに属する商品・サービスとは異なり、類似の情報が溢れていることはありません。
意図的な結果の無理な導出は望ましくありませんが、クロス集計で属性別に分析して、狙った結果を導き出すことはあります。もちろん、算出方法や根拠の正確な注記が必要です。
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おわりに
アンケートには必ず目的があります。そして実施するからには、結果をしっかりと活用し、成果に繋げなくてはなりません。
ここでは4つの職種別にアンケート調査活用法を解説してきましたが、どの職種についても、実際に行動を起こす際に思い浮かべやすいよう、実態にできるだけ沿った例を使用しました。
是非お役立ていただければ幸いです。
【参考文献】
『開発マンが書いた調査の本』(高見健治著、B-M-FT出版部、2020年8月)/『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書』(阿佐見綾香著、PHP研究所、2021年10月)/『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(平野 敦士 カール 監修、宝島社、2018年9月)