従業員満足度調査(ES調査)とは│目的、項目、やり方を解説
目次[非表示]
はじめに
「従業員満足度調査」は、会社の成長に欠かせない要素の1つと言われています。
この記事で分かること・できること
●従業員満足度調査の意味を理解し、正しい調査をおこなうことができるようになる。
●従業員満足度調査結果を、有効活用することができるようになる。
●すぐに使える「質問項目例」と「調査設計フォーマット」を無料で入手できる。
従業員満足度調査とは
従業員満足度調査とは、会社・職場などの雇用主体に対し、そこで働く従業員の満足度を把握するための調査です。Employee Satisfactionの略で、ES調査とも呼ばれることもあります。
近年、従業員満足度調査はさらに重要視されるようになりました。
その要因としては、ワークライフバランスによる働き方の変化、働き方改革による新しい環境の整備など、働き手の意識にも大きな変化が見られることにあります。このことから、多くの企業で取り入れられています。
従業員満足度調査の目的
従業員満足度調査(ES調査)の大きな目的は、従業員の満足度から、今後の様々な展開における課題(現状の課題・今後の課題)を抽出することです。
この目的の背景は、
・労働環境、意識の把握(職場の生産性・経営側意識との乖離・CI/Corporate Identity:コーポレートアイデンティティ関連)
・顕在化していない課題の把握(潜在化している課題)
・離職率をおさえること(採用コスト・育成コスト)
以上の3点で構成されています。
従業員満足度調査のメリットや効果
従業員満足度調査から得られる基本要素は、主に5つです。
・従業員の満足度(全体構造と部門、役職、その他属性) ・従業員のモチベーション(源泉となる要因) ・従業員の不満足要因 ・従業員の意見・要望 ・職場環境の評価(取り組み評価など) |
※職場環境はそれぞれ異なるため、調査設計によっては、これら以外にも得られる効果はあります。
調査の流れ
手順は大きく分けると「1.目的・仮説の整理」「2.調査設計・実施体制を整える」「3.調査実施(前・中・後)」「4.集計・分析・アウトプット」の4つとなります。
各手順ごとに重要なポイントを解説していきます。
>>調査設計をおこなうための『従業員満足度調査(ES調査) 調査票の設計ガイド』はこちらから【無料ダウンロード】
1.目的と仮説の整理
まず始めに、従業員満足度調査の目的の内容を、さらに細部まで整理しましょう。
なぜ従業員満足度調査を計画しようとしたのか、大前提となる「目的」を中心とした「目的詳細」を明確にする必要があります。下記は具体例です。
●管理職者の離職率が高まり、さらに売上が低下したため、部署・チームなどの課題を把握したい。 ●会社の展望と社会環境に合わせたコーポレート・アイデンティティの改定へ向け、従業員意識を把握し、会社全体をONE TEAM(ワンチーム)にしたい。 ●「働き方改革などの施策は機能しているのか」を把握し、さらに生産性を高める体制を作っていきたい。 |
目的詳細は、多くの仮説要素で構成されているので、その仮説も明確にすることが重要です。
業種・業態によって目的は様々となるため、実施主体で把握している仮説もいくつかの視点で整理する必要があります。
<仮説整理の参考例(視点要素)> ●事業の現状と今後の展望 ●総合的な満足度評価と要因の柱 |
その他の視点要素としては、経営・マネージメント面、職場環境面、評価・処遇面、仕事内容などが活用されます。
これらの視点要素を整理できれば、方向性が定まり、この後の従業員満足度調査の実施・分析の効率が格段にアップします。反面、整理ができていないと効果的な調査が実施できない可能性があるので注意しましょう。
2.調査設計・実施体制を整える
調査設計をするにあたり、調査手法・実施時期・調査対象セグメントを整理しましょう。
調査手法を整理する
調査手法は大きく分けて「アンケート形式」と「インタビュー形式」の2種類があります。
調査の目的を達成するために、これらの手法を適切に選定し実行することはとても大切です。
なお、応用となりますが、これらの手法を組み合わせて行う「ハイブリッド形式」も実施されることもあります。
アンケート形式による実施
あらかじめ用意した質問(アンケート用紙やアンケート画面)を調査対象者に配布・見てもらい、回答してもらうことで情報収集を行う調査方法を、アンケート調査といいます。
この形式で実施する場合の記述方式は、インターネットを活用した「WEBアンケート」と「紙アンケート」が主流となっています(アプリなどもWEBに含みます)。
「WEBアンケート」は、短期間で多くの回答情報が集まり、集計まで行えるメリットがありますが、PCの基礎スキルが必要な点や、記述回答内容を深彫りできないというデメリットがあります。
「紙アンケート」は、手軽に誰でも回答できるというメリットがありますが、回収・入力作業にコストと時間がかかる等のデメリットがあります。
インタビュー形式による実施
インタビュー調査とは、その名の通り調査対象者にインタビューをして質問をし、回答してもらうことで情報収集を行う調査方法です。
インタビュー形式には「個別インタビュー(デプスインタビュー)」や「集団インタビュー(チーム内インタビュー/グループインタビュー)」等いくつか種類がありますが、主流は「個別インタビュー」です。
「個別インタビュー」は、個々の課題の深堀ができるため、組織と個人の課題を整理しやすいというメリットがありますが、専門のインタビュアーの介入が必要となったり、大規模なサンプルの実施は難しいというデメリットもあります。
「集団インタビュー」は、チーム内の課題の深堀ができるためチーム内の課題共有ができるというメリットがありますが、「個別インタビュー」と同じで専門のインタビュアーの介入が必要である点や、個人の課題が見えにくいというデメリットもあります。
実施時期、調査対象を決める
調査手法が決定したら、次は実施時期など、調査項目の大枠を考えていきます。目的を達成するための重要なポイントとなるので、十分検討しながら進めていきましょう。
実施時期
実施時期は、繁忙期を避け、従業員の方が参加しやすいタイミングにしましょう。
職務中に実施することを指示したとしても、繁忙期の場合、「目先の不満」や「体制への批判」に集中することが懸念されます。この点を配慮した期間にて設ける必要があります。
調査対象
調査対象については、基本的に全従業員が望ましいのですが、場合によっては、該当部署/入社年数などピンポイントで実施することも有効です。
このように絞り込む場合は、全従業員に聞けないデメリットを確認し、再度目的と照らし合わせると良いでしょう。
もうひとつ重要なのは、セグメントを検討しておくことです。調査対象となる方のセグメントは、目的を達成するための重要ポイントです。
例えば、「部署」「入社年数」「役職」「属性」「エリア」のように、どのようなセグメントで実施していくかを明確にすることで、回答分析がより良いものになります。また、無記名のアンケートを実施した場合でも、記名相応の分析ができることになります。
実施体制を整える
各ステップごとに管理が必要となるため、どのステップをどの部署が担当するか等、様々な役割を明確にすることで、調査を効率よく進めることができます。同時に、事業者内で実施できるかどうかの判断もしましょう。
調査実施の基本ステップ
・目的、調査設計、実施体制の構築
・実施手法に合わせた準備(調査票、インタビューフロー、各種アサイン)
・実施前のアナウンス
・実施中の窓口
・実施後のフォロー
・データ集計(入力・書き起こしなど)
・分析、レポート
・フィードバック
アンケートツールの活用
調査設計、実施、集計・分析という一連の流れをすべて事業者内(自部署)にて行うことは、とてもハードです。ましてや初めて実施する際は、とても不安が大きいでしょう。
アンケート形式で実施する場合は、専門会社や専門家に依頼したり、便利なアンケートツールを活用するのもおすすめです。コストを押さえたい場合は、セルフ型のアンケートツールも便利です。
3.調査実施(実施前・実施中・実施後)
従業員満足度調査の実施前・実施中・実施後の各ポイントをまとめました。
実施前(準備)のポイント
●調査票を作成し、関係部署内での承認を得る。
調査項目については、調査の目的に合う適切なものを設定していきます。具体的な基本設問は、下記からダウンロードできる資料に記載しておりますが、一部をご紹介します。
・【SA】仕事に対する満足度(総合満足度5~7段階)
・【MA】職場環境に関する項目評価(チーム体制、共有環境、ナレッジ、連携、チャレンジ制度など)
・【MA】経営サイドに関する項目評価(企業姿勢、事業の将来性、現場関与、法令順守など)
>>「従業員満足度調査の具体的な基本設問」はこちらから【資料を無料ダウンロード】
●調査を行う目的と必要性をアナウンスする。
無記名の場合は、ここで明確に伝えてもOKです。
可能であれば経営側が発信の主体となる方がベストであり、その上で、回答方法・実施期間・当部署なども明記しましょう。
●各部署の管理者への同意を確認する(従業員への直接確認ができれば方法は問わず)。
実施中のポイント
●中間~後半時点での回答状況のチェック。
●従業員からの問い合わせ対応。
●必要に応じて、各部署(各チーム)との連携をとる。
実施後のポイント
●調査終了のアナウンスをおこなう(経営サイドと担当部署)。
●回答者数の速報フィードバック(各部署管理者へ)。
●レポートフィードバックの想定を案内する。
※すべての調査、または、調査表作成・実施・集計・レポートなど部分的に、調査会社などの第三者機関に依頼する場合は、内容が異なる場合があります。
4.集計・分析、アウトプット、対策の検討
集計をおこなう
回答が集まったら、集計作業に移ります。
集計作業を進めるにあたり、紙アンケートの場合は、データ化(入力作業)が必要です。
そして入力したデータを集計可能なフォーマット(ローデータ)にしていきます。これは、データに規則性を持たせることで、主計という手段が取れるようにするためです。
文字でも集計できるツールもありますが、基本的には項目を数字に置き換えたり、複数回答を「0,1」に置き換えたりしていきます。
集計には、単純集計(GT集計)とクロス集計の大きく2つの方法があります。
分析をおこなう
集計結果をもとに分析を行います。下記はよく利用される解析手法です。
・因子分析等(相関関係から回答傾向を推測する解析法)
・ポートフォリオ分析(重要指標と満足指標の2軸でマッピングしていく解析法)
アウトプット(レポーティング)、対策の検討、フィードバックをおこなう
集計結果や解析を行った結果を分析する際は、調査目的を達成するための分析であることをまず念頭に置いてアウトプット(レポーティング)していきましょう。
顕在する課題、潜在する課題の発見など、様々な角度からデータを分析することが重要です。
効率の良いアウトプット作業をするためには、データ上での結果を、担当部署(担当者内)で共有・意見交換した方が良いでしょう。
集計結果から新たな実態を発見した場合も、まずは目的に沿ってフィードバックできるようなアウトプットをしていきましょう。
フィードバックについては、結果だけでなく課題抽出と改善示唆も含めた形でまとめられるとベストです。
まとめた結果は、まず経営サイドから改善示唆部分を中心に施策などが検討されるかと思いますので、それらを含めて、関係部署・チームで施策を協議する必要があります(従業員全体の理解を得られる施策内容へ)。
一般的に多い施策・対策例としては、「社内教育の充実化」や「人事制度・評価の見直しや透明化」「課題を解決するためのプロジェクトチームの発足」「繋がりを円滑にするためのコミュニケーションツールの導入」などがあります。
その後、最終フィードバックレポートという形になります。
従業員へのフィードバックについては、サマリー形式で行うこともありますので、その点も検討の上、最終フィードバックを行ってください。
従業員満足度調査実施後の、思いがけない効果
実施によって浮き彫りになった課題や改善点に取り組んでいくことで、従業員に対して直接的な解決ができることはもちろん、「社内アンケート(従業員満足度調査)」を実施していること自体が、企業のイメージアップにも繋がります。
2021年4月30日にセルフ型アンケートツール『Freeasy(フリージー)』にて実施された「新入社員の本音を知るためのアンケート調査」において、社内アンケート(従業員満足度アンケート等)を実施している企業に対しては、「社員を大切にしていそう」「人間関係が良さそう」「風通しが良さそう」「離職率が低そう」という、良いイメージがあることが分かりました。
その結果からも分かるように、「社内アンケート(従業員満足度調査)」の結果や具体的な目標とする改善値などを自社のホームページに掲載して発信することで、世間一般に、従業員を大切にしている企業だということが知られ、採用において大きなアピールとなることも期待できます。
>> 従業員満足度調査を企業の成長に活かす方法!「従業員満足度」に関するアンケート」の記事はこちらから
無料ダウンロード『従業員満足度調査(ES調査) 調査票の設計ガイド』
本記事で解説した『従業員満足度調査』に関連した資料を、下記よりダウンロードすることができます(無料)。
こちらの資料では、記事には掲載されていない、
●従業員満足度調査(ES調査)の基本設問
●スグに使える「調査票の設計フォーマット」
について掲載しています。下記よりダウンロードしてご活用ください(無料)。
おわりに
ここまで従業員満足度調査のやり方について説明してきました。総務や人事担当の方、経営者の方は絶対におさえておきたい知識となります。ぜひ活用してください。
基本指標は、定点で観測できるデータとなりますので、今後も有効に活用してください。さらに、目的によっては、顧客満足度調査(CS調査)と平行に行い、比較分析する手法もあります。
初めて従業員満足度調査を実施する場合、イメージがわかないこともあるかと思いますが、効率の良い調査を実施するために、疑問点・不安点があれば専門家などに確認することをお勧め致します。