ギャップ分析のやり方|重要ポイントを事例付きで解説!
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はじめに
ここではギャップ分析について、基本知識、分析の具体的な進め方について、事例を交えながら、分かりやすく解説していきます。
この記事を読んで分かること、できるようになること
●ギャップ分析の意味、基本知識、重要なポイントを理解できる。
●ギャップ分析の進め方を理解し、自分でおこなうことができるようになる。
●ギャップ分析に関するQ&Aやまとめ資料を、無料でダウンロードできる。
ギャップ分析とは
ギャップ分析とは、ビジネスプロセスにおける現状と理想のギャップを分析することです。
ギャップは問題と言い換えることができ、問題の解決方法が課題ということになります。
ギャップ分析においては、現状と理想を、数値で把握&管理することが必須です。
理想とは目標値のこと=KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)のことになります。
ギャップ分析の進め方
ギャップ分析における重要ポイント3つ
●ビジネスプロセスを構成する要素の一つ一つを、具体的な数値として把握すること。
●現状の問題の「原因とその背景」を、充分に吟味すること(問題には原因があり、原因にはそうならざるを得なかった背景があるから)。
●理想の姿も具体的な数値として設定すること(具体的な数値=KPI/重要業績評価指標)。
ギャップ分析の流れ
ギャップ分析は以下の流れで進めていきます。
1.現状を把握する(KPIの確認、KPIの構造の把握、要素分解)
↓
2.要素分解の結果をもとに、原因分析をする
↓
3.原因分析の結果、根本的な原因にたどり着いたら、その原因を細分化する
※その後、細分化した結果(3で分かった結果)に対する対策を練る
1.要素分解による「現状把握」
ギャップ分析は、まず現状の把握から始めます。
ここでは、『ある商品の売上と利益が目標に達しなかった例』を取り上げて説明していきます。
売上は「購入者数」と「購入者1人当たり年間平均購入金額」に分解できます。
よって、売上の減少は、「購入者数」の減少、「購入者1人当たり年間平均購入金額」の減少、ないしはその両方という3通りの原因のうちのいずれかと考えられます。
さらに利益の減少では、「売上」の減少、「コスト」の上昇、ないしはその両方という3通りの原因のうちのいずれかと考えられます。
上記のように、売上を「購入者数」「購入者1人当たり年間平均購入金額」、利益を「売上」「コスト」に分けることを、要素分解と呼びます。
2.要素分解による「原因分析」
前述の売上の減少を要素分解した結果、『購入者数と認知率がKPIを下回ったこと』が判明したとします。
影響する要素の検討
認知率の低下=認知者の増減には、どのような要素が影響するのかを検討しましょう。考えられるのは以下の3項目です。
① 広告・宣伝の出稿量(金額)とそれらの内容
② 広告・宣伝のリーチ(到達率)
③ 店頭での露出量(店頭配荷率など)
もし、②広告・宣伝のリーチ(到達率)に問題があったことが分かれば、次に、「テレビCMの量が少なかったのか」「量は少なくはなかったがテレビCMを流した時間帯が良くなかったのか」「番組の視聴者がターゲットではなかったのか」などの問題を検討することになります。店頭での露出の少なさも要検討です。
違うケースとして『興味・関心者数がKPIを下回ったこと』が判明した場合に考えられる問題は主に以下の4項目です。
①商品コンセプトの魅力
②競合商品との差別化
③価格の妥当性
④購買容易性(店頭にあるかどうかなど)
このように要素分解して分析することで、ギャップが生じている「原因と背景の把握」も、「理想の状態(目標)に到達するための課題」も、具体的な数字で明確化(定量化)されます。テレビCMの量が少なければ出稿量を増やす、内容に問題があるのなら改良するなどの具体的な施策の必要性が分かるのです。
売上と利益の構造
ここからは、『認知率が増加した(KPIを上回った)』場合の例で説明していきます。
売上と利益の構造は以下の図で表すことができます。
年間総売上は、購入者数×1人当たり年間平均購入金額で、そこから原価と投資、諸コストを差し引くと利益になります。
KPIの組み立て
現状把握の前に、既に策定されていたKPIを確認したところ、年間総売上のKPIは100億円でした。
※年間総売上を含め全てのKPIは、自社の過去実績や競合の推定値、競合を含めたカテゴリー全体の数値などを勘案して策定されたものです。
KPIに対する現状
年間総売上(99億円)はKPI(100億円)をほぼ達成しましたが、ギャップ分析の結果、いくつもの問題点と課題が浮き彫りとなりました。しかも、利益は6億円もショートしました。
まず、予定以上のメディア投下によって認知率は達成したものの、購入意向率がKPIを下回りました。
⇒ 商品の魅力が不十分。商品コンセプトの強化が必要。
店頭配荷率がKPIを下回っていることも、競合との差別化が弱いためと推察されます。
⇒至急、商品コンセプトの強化による競合との差別化が求められる。
3.ギャップ分析の細分化(2の結果、根本的な原因にたどり着いたらその原因を細分化する)
ユーザーの細分化
前項の「購入者数がKPIを30万人下回った」という問題について掘り下げていきましょう。
このような場合、ユーザーを様々なセグメントに分けて分析していきます。
購入頻度別のHML分析(Heavy/Middle/Lowの頭文字)がその代表的な分析ですが、もっと基本的に年代別の分析をしたとしましょう。
年代別にギャップ分析を行った結果、20代の認知率が50%で全体を15ポイント下回り、購入意向率は45%で全体を10ポイント下回ったことがわかりました。
つまり購入者数増加施策において、『20代の認知と購入意向を高める必要性』が浮き彫りとなりました。
広告効果の細分化
次に、「現状のメディア投下額が、KPIの30億円に対して35億円と5億円上回ったにも関わらず、メディアリーチ率(49%)はKPI(50%)を僅かながら下回った」という問題について掘り下げていきましょう。
これは明らかに効果が悪いということです。そして広告効果を、テレビCM、デジタル施策、店頭ツールなどのメディアごとに、それぞれの投資額、認知率、興味喚起率などを分析した結果、テレビCMの予算をより多く投下したものの、認知率の伸びは小さく、逆にデジタル施策で大きな効果が出たことがわかりました。
店頭配荷率の細分化
最後に、「店頭配荷率はKPIに5%及ばなかった」という問題について掘り下げていきましょう。
この数値を細分化する場合、業態別にコンビニエンスストアやスーパーマーケットでの配荷率を確認することが必要です。また、エリア別の分析を試みることも有効です。
ここでは関西圏は対前年比10%の伸長にも関わらず、首都圏では対前年比7%のダウンが判明しました。そこまでわかれば、後は首都圏での落ち込みの理由を探り、その対策を練ればいいことになります。
ギャップ分析にまつわる、よくある質問
Q:KPIを決めるポイントは何でしょうか。
KPIを決めるポイントは、見出し「KPIの組み立て」で解説したように、対象となる商品やサービスの前年比だけではなく、過去の最盛期と低迷期の数値、競合との比較、市場全体の傾向を検討することです。
今回のギャップ分析例では、「売上目標を達成するために、どのくらいの購入者数が必要で、その購入者数を確保するために、どのくらいの認知率と購入意向率が必要なのか。その認知率を達成するためにはどのくらいのメディアリーチ率が必要で、どのくらいのメディア投下額が必要なのか」をKPIとしました。
Q:細分化はどの程度、必要でしょうか。
実績がKPIを下回っている項目の細分化による分析は必須です。また、一見、問題がないような要素、についても注意が必要です。
今回の例で言うと「メディアリーチ率がKPIの50%をほぼ達成した49%だったとしても、メディア投下額が目標を5億円上回っていた」場合、その広告効果に問題があることが分かります。
全体における関係性を俯瞰し、各要素を細分化して分析することが重要です。
Q:マーケティングのフレームワークを活用したギャップ分析の事例が世の中に少なくありませんが、どんな特徴があるのでしょうか。
コンサルティング会社の領域である、企業の経営戦略・事業戦略における『〝広義〟のギャップ分析』では、SWOT分析、PEST分析、 PESTLE分析、フィッシュボーンダイアグラム、マッキンゼーの7Sなどの定番のフレームワークを使います。
しかし、マーケティングリサーチの現場に即したギャップ分析は、今回の紹介事例が基本の一つです。
商品やサービスの「認知率」「購入意向率」などの測定には、アンケート調査が不可欠です。
無料ダウンロード『ギャップ分析マニュアル~これだけは押さえておきたい、分析の進め方と細分化のポイント~ 』
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おわりに(まとめ)
最後に、ここまで解説してきた内容をまとめました。今一度の確認に活用してください。 |
ギャップ分析とは、ビジネスプロセスにおける現状と理想のギャップを分析することで、現状も理想も全て数値で把握・管理することが必須です。
今回は最も一般的なギャップ分析の基本の一つとして「売上と利益のギャップ分析の例」を紹介しましたが、分析対象が何であれ、まず、分析対象のKPIの構造を把握することが必須です。
そして構造の各要素を分解し、一つずつ分析をしていきます。
もし、売上がKPIに達していたとしても、各要素で問題点と課題が抽出されることも少なくありません。これらの問題点と課題が発見されることなく放置されていたら、ビジネス展開でその〝ほころび〟が露呈されるリスクもあります。
さらに抽出された問題ごとに、細分化して分析します。
今回は、マーケティングリサーチの現場に即したギャップ分析の例、具体的にはある商品の売上と利益の構造における要素分解を取り上げました。これはあくまでもギャップ分析の基本の一つです。
ギャップ分析は、マーケティングのフレームワークのように定型化されていません。目的を達成するため、多様な分析のバリエーションがあると考えていいでしょう。
【参考文献】
『「専門家」以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書』(米田恵美子著、東洋経済新報社、2022年4月)