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アンケートの自由記述回答とは(活用・集計・分析例)

目次[非表示]

  1. はじめに
  2. 自由記述回答とは
  3. 自由記述回答の種類
  4. 自由記述回答のデメリット
  5. 回答を促進するコツ
  6. 注意すること
  7. 代表的な自由記述の手法「投影法」とは
  8. 自由記述回答の集計と分析
  9. アンケートの自由記述回答にまつわる、よくある質問
  10. 無料ダウンロード『アンケートの自由記述回答マニュアル(活用と集計・分析例)』
  11. おわりに(まとめ)

はじめに

アンケートには多くの設問タイプがあり、中には、選択肢から回答するのではなく、「こちらの商品に対するご意見を、ご自由にお書きください」のように自由に回答する設問があります。どのような時に用いられ、どのように活用し、集計・分析していくのかについて、解説していきます。

この記事で分かること、できること

●アンケートの自由記述回答の意味を理解し、正しい設問作成・集計・分析ができるようになる。
●自由記述回答に関する「よくある質問」が確認できる。
●自由記述回答の、より詳しい説明や具体例が掲載された資料が、無料でダウンロードできる。

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自由記述回答とは

アンケートの自由記述回答とは、回答者に選択肢を選んでもらう形式ではなく、文字や数字を、直接記入してもらうアンケート形式のことです。

自由記述回答の種類

文字入力と数値入力の2種類があります。

数値(代表値)入力

数値入力とは、金額・数量・時間・回数などを、主に半角で入力していく方法です。

最も典型的なケースは、購入金額や購入数量です。平均値などの代表値を算出し、全体の傾向を把握します。Excelの関数を使えばすぐに計算できます。

下記は、主な代表値とExcel関数の一覧です。

文字入力

文字入力とは、理由などを文章記述していく方法です。

文字(「その他」の内訳など)

文字入力で最も多いのは、選択肢の「その他」の内訳を具体的に( )内に記載してもらうケースでしょう。「その他」の具体的な内容により、思わぬ発見やヒントが得られることもあります

回答者が「その他」を選んだ場合、( )内への具体的な内容の記載は『必須』に設定しましょう。

文字(文章)

定量調査の設問の選択肢ではカバーできない内容を知るため、自由記述回答を設けることも少なくはありません。

商品の好き嫌いの理由、購入した・購入しなかった理由などを、自由に記述してもらうケースです。

自由記述回答のデメリット

自由記述回答において、文字入力、特に文章入力の場合、次のようなデメリットがあります。

  • 回答者にとって負担が大きく、途中で離脱する可能性が高い(特にスマホ・タブレット使用の場合)。
  • 生活者は好き嫌いや購入などの理由を、容易に言語化できるとは限らない。
  • 集計の手間と時間、コストが高くなる。

よって、多用することは望ましくありません。

回答を促進するコツ

前述の通り、回答者の負担の大きさというデメリットはありますが、回答者が自発的に記入したくなる性質の設問はあります。コツは、思わず答えたくなってしまうような設問にすることです。

自分の経験談

アンケート調査ですのでSNSのような共有機能はありませんが、例えば購入した商品が想定外に  良かった場合など、思わず人に話したくなるような内容にします。

例)Q. あなたが●●●を使っていて、ご家族やお友達に羨ましがられたことがあれば教えてください。


A.(具体的に)


ネガティブな体験

一般的にポジティブよりもネガティブな体験のほうが本音が出やすい傾向があります。聞かれていなくても、改善策やアイデアを書いてくれる回答者もいます。

例)Q. あなたは▲▲▲でお食事をしていて、スタッフの接客で気になったことがあれば教えてください。


A.(具体的に)



注意すること

マーケティングリサーチ界の常識の一つに、アンケート調査で「消費者に直接聞いてはならない」という鉄則があります。それは「どのような商品・サービスが欲しいか」ということです。

一般的に、ヒット商品・サービスとは、普段、消費者が全く思い浮かばないにもかかわらず、発売されてみれば「このような商品が欲しかった!」というサプライズを喚起する商品・サービスです。そのようなヒット商品・サービスのアイデアは、消費者に直接聞いて得られるものではありません。

消費者の「ニーズ」を直接聞くのではなく、間接的に消費者の商品・サービスのイメージや、利用シーンなどを聞くことによって、「シーズ」(種/ヒント)を生み出すケースがほとんどです。

代表的な自由記述の手法「投影法」とは

長年、マーケティングリサーチで活用されている自由記述の代表的な手法「投影法」の中から、自由連想法文章完成法について説明します。

自由連想法とは

自由連想法とは、アンケートにおいて、ある言葉を与えられたときに、思いついたまま自由に考えを連想して回答する方法です。

例)●●●といわれて、あなたが思い浮かべるイメージを教えてください。


A.(具体的に)


文章完成法とは

文章完成法とは、アンケートにおいて、一部が欠けた文章(未完成の文章)を提示されたときに、思いついた回答を自由に記入していき、文章を完成させる方法です。

例)Q. カッコ内にあなたが思い浮かぶことを書いて、以下の文章を完成させてください。


A.もし、政府の規制によって▲▲▲の使用が禁止されるとしたら、私は(       )と感じて、政府に対して(          )をしてくれるように要求するでしょう。

なお、マーケティングリサーチで一般的に使われる文章完成法は、厳密には臨床心理検査のSCT(Sentence Completion Test)と異なります。

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自由記述回答の集計と分析

ここからは、自由記述回答の『集計のやり方』について解説していきます。
例として、「企業の社員を対象とした、新入社員の言動・行動で驚いたこと」という設問をもとに、説明していきます。

1.集計するための準備(エクセル)

設問

今回の設問は下記のとおりです。

Q. 新入社員(新卒1年目)の言動や行動で驚いたことがあれば、教えてください。

A.(具体的に)

ローデータ

下記はローデータ(Excel)の集計対象シートの抜粋です。BC列の「Q9」が集計対象列となります。

ローデータのコーディング(フラグ付け)

メーカーの商品開発をはじめとするマーケティングリサーチ担当者は、アンケート調査の自由記述回答結果が出たら、まずは「ざっと眼を通し」ます

地位や職責により、「ざっと眼を通す」ことで用が足りてしまう担当者もいれば、まるで調理をするかのようにデータを切り刻みながら詳細に分析する担当者もいます。

データを詳細に分析する場合でも、まず最初に全てのデータに眼を通すことは必須です。

そして、全てのデータの分類にとりかかりますが、この作業のことをコーディングといいます。
コーディングでは、一般的に大・中・小レベルの階層項目を設定し、1件のデータごとにフラグを付与していきます。

下記は、コーディング表です。小項目に一つずつ番号を振って、フラグを作ります。

大項目は、ポジティブかネガティブの2択ですが、今回の例は「新入社員(新卒1年目)の言動や行動で驚いたこと」なので、ネガティブのみということになります。

中項目は、「言葉」「態度」「行動」「その他」の4項目としました。

※小項目は、「言葉」では『敬語を使わない』『馴れ馴れしい』『ふさわしくない言葉遣い』の3項目、「態度」では『挨拶をしない』『礼儀知らず』など4項目、「行動」では『マナーの悪さ・常識のなさ』『身だしなみの悪さ』『家族への過度な依存』など10項目としました。

ローデータ1件ごとに、フラグの番号を入力します(下図のBD列「フラグ」)

2.集計(ピポットテーブル)

いよいよ集計に入ります。集計はExcelのピボットテーブルを使います。

ピボットテーブルでは、フラグの「個数」(デフォルトは「合計」)を集計します。

3.分析

円グラフにして集計の全体像を見る

集計結果を円グラフにしてみましょう(3%未満の項目は「その他」にまとめました)。全体像がわかります。

中項目ごとに分析する

全体像が示された前述の円グラフの分析結果を、中項目の「言葉」「態度」「行動」に細分化してみましょう。
中項目では「行動」の比率が38%と最も高いことがわかります。

中項目と小項目ごとの分析

さらに、3つの中項目ごとに、小項目の比率を集計してみましょう。
「言葉」「態度」「行動」各々の合計を100%として集計します(小数点2位以下四捨五入のため、合計が100%にならない場合もあります)。

4.テキストマイニング

テキストマイニングとは

テキストマイニングとは、文字列を対象としたデータマイニングのことです。

自由記述回答の文章において、どのような言葉が沢山書かれていて、それらの言葉同士がどうつながっているかを明らかにします。具体的には、文章を品詞ごとに分類(形態素解析)することで、単語・文節の出現頻度や関係性などが分かります。

このことにより、アンケート回答者の ”声” の全体像をつかむことができます。マーケティング分野では、長年おもにコールセンターにおける顧客の声の解析で活用されてきました。

また、商品開発の調査では、例えば、機能・価格・用途・販路という区分の中で、最も多く書かれている内容はどれか。その内容はポジティブが多いのか、ネガティブが多いのか。などが、一目でわかります

テキストマイニングのフリーソフト

学術分野で広く利用されている「KH Coder」をはじめ、テキストマイニングのフリーソフト(無料) が普及しているので、まずは入手しましょう。

※「KH Coder」の操作方法は以下のサイトをご参照ください。フリーソフトも簡単にインストールすることができます。>>http://khcoder.net/ 

テキストマイニングのアウトプット例

ここからは、「KH Coder」を使ったテキストマイニング事例を紹介していきます。

左図は、「KH Coder」で出力された「抽出語リスト」の一部です。単語の出現頻度がわかります。

右図は、「KH Coder」で出力された「抽出語の共起ネットワーク」です。バブル(円)の大きさは「抽出語リスト」の通りの、出現頻度の高い単語です。

共起とは、単語同士の結びつきのことで、例えば「敬語」は『上司』『使う』『使える』という単語と同じ文節で使われることが多いということです。「遅刻」は『多い』『理由』『言い訳』ですね。

テキストマイニングの有効性

テキストマイニングは、あくまでもデータマイニングのテキスト版です。前述のアウトプット例では、「出現頻度の高い単語は何か?」「どの単語とどの単語が同じ文節で出現しているのか」という自由記述回答の〝全体像〟は俯瞰できますが、深堀するための分析手法ではないことを理解しておきましょう。

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アンケートの自由記述回答にまつわる、よくある質問

Q:アンケート全体中で、自由記述回答はなるべく少ないほうがいいと言われている理由は何でしょうか。

定量調査の場合、回答者の負担、そして集計・分析の費用と時間のコストを勘案すれば、少ないに越したことはありません。

特に文章を入力する自由記述回答は、想定できなかった貴重な知見を得ることもあるものの、あくまでも補助的な設問※です。

※現在、商品・サービスへの不満のテキストデータを解析するサービスもあり、将来、メインとなる可能性はあります。

Q自由記述回答は、定性調査とは異なるのでしょうか。

はい、異なります。1つ前のよくある質問の回答の通り、あくまで自由記述回答は「補助的な設問」であるため、定性調査を代替することはできません

定性データを取得したい場合は、グループインタビューなどの本格的な定性調査を行いましょう。

Q自由記述回答は、調査票の最後に置いたほうが良いでしょうか。

はい、調査票の最後に置いたほうが良いです。自由記述回答は、回答者の負担が多いため、途中離脱を防ぐためにも調査票の最後のほうに設置することが望ましいです。

また、年収などの回答者が答えたくない数値項目についても、「調査票の最後に」という鉄則があります。

Qコーディングは分析者の主観が入りますか。

はい、コーディングにはどうしても分析者の主観が入ります。10人が行えば、10通りになるでしょう。

この分析者の主観はメリットでもありデメリットでもありますが、将来、AIにより代替されていく可能性はあります。

Q自由連想法や文章完成法では、回答例を示したほうが良いでしょうか。

回答例を示すケースも見られますが、その場合、多くの回答が回答例とほぼ同じ内容となってしまいます。よほど回答するのが難しいケースを除けば、回答例は示さない方がいいでしょう

無料ダウンロード『アンケートの自由記述回答マニュアル(活用と集計・分析例)』

本記事で解説した内容をまとめた資料『アンケートの自由記述回答マニュアル(活用と集計・分析例)』は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。

おわりに(まとめ)

アンケート調査と深く関わりがある「自由記述回答」は、回答者の負担の大きさや、集計作業に手間がかかるというデメリットはありますが、回答者の自由な考え(回答)を導き出すことができるというメリットはとても大きいです。

アンケートの目的に応じて、効果的に活用していきましょう。

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