
アンケートの自由記述回答とは(活用・集計・分析例)
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はじめに
アンケートには多くの設問タイプがあり、その中で「こちらの商品に対するご意見を、ご自由にお書きください」のように、選択肢から回答するのではなく、自由に回答する設問があります。
いったいどのような時に用いられ、どのように活用し、集計・分析していくのでしょうか。
この記事で分かること、できること
●アンケートの自由記述回答の意味を理解し、正しい設問作成・集計・分析ができるようになる。
●自由記述回答に関する「よくある質問」が確認できる。
●自由記述回答の、より詳しい説明や具体例が掲載された資料が、無料でダウンロードできる。
アンケートの自由記述回答とは
アンケートの自由記述回答とは、回答者に選択肢を選んでもらう形式ではなく、文字や数字を、直接記入してもらうアンケート形式のことです。
自由記述回答の種類
文字入力と数値入力の2種類があります。
数値(代表値)入力
数値入力とは、金額・数量・時間・回数などを、主に半角で入力していく方法です。
最も典型的なケースは購入金額や購入数量です。平均値などの代表値を算出し、全体の傾向を把握します。Excelの関数を使えばすぐに計算できます。
下記は、主な代表値とExcel関数の一覧です。
文字入力
文字入力とは、理由などを文章記述していく方法です。
文字(「その他」の内訳など)
文字入力で最も多いのは、選択肢の「その他」の内訳を具体的に( )内に記載してもらうケースでしょう。「その他」の具体的な内容により、思わぬ発見やヒントが得られることもあります。
回答者が「その他」を選んだ場合、( )内への具体的な内容の記載は『必須』に設定しましょう。
文字(文章)
定量調査の設問の選択肢ではカバーできない内容を知るため、自由記述回答を設けることも少なくはありません。
商品の好き嫌いの理由、購入した・購入しなかった理由などを、自由に記述してもらうケースです。
文字(文章)入力のデメリット
文字入力、特に文章の入力の場合、次のようなデメリットもあります。
●回答者にとって負担が大きく、途中で離脱する可能性も高い(特にスマホ・タブレット使用の場合)。
● 生活者は好き嫌いや購入などの理由を、容易に言語化できるとは限らない。
● 集計の手間と時間、コストが高くなる。
よって、多用することは望ましくありません。
文字(文章)の回答を促進するコツ
前述の通り、回答者の負担の大きさという点でデメリットはありますが、回答者が自発的に記入したくなる性質の設問はあります。
コツは、思わず答えたくなってしまうような設問にすることです。
・自分の経験談を答えてもらう
・ネガティブな体験を答えてもらう
上記のような設問が良い理由や、具体的な設問例は、資料にてご用意しました。ご興味のある方は、下記よりダウンロードしてご覧ください。
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アンケート調査の鉄則「消費者に直接聞いてはならない」
マーケティングリサーチ界の常識の一つに、アンケート調査で「消費者に直接聞いてはならない」という鉄則があります。それは「どのような商品・サービスが欲しいか」ということです。
一般的に、ヒット商品・サービスとは、普段、消費者が全く思い浮かばないにもかかわらず、発売されてみれば「このような商品が欲しかった!」というサプライズを喚起する商品・サービスです。
そのようなヒット商品・サービスのアイデアは、消費者に直接聞いて得られるものではありません。
消費者の「ニーズ」を直接聞くのではなく、間接的に消費者の商品・サービスのイメージや、利用シーンなどを聞くことによって、「シーズ」(種/ヒント)を生み出すケースがほとんどです。
代表的な自由記述の手法「投影法」
長年、マーケティングリサーチで活用されている自由記述の代表的な手法「投影法」の中から、自由連想法と文章完成法について説明します。
自由連想法とは
自由連想法とは、アンケートにおいて、ある言葉を与えられたときに、思いついたまま自由に考えを連想して回答する方法です。
文章完成法とは
文章完成法とは、アンケートにおいて、一部が欠けた文章(未完成の文章)を提示されたときに、思いついた回答を自由に記入していき、文章を完成させる方法です。
なお、マーケティングリサーチで一般的に使われる文章完成法は、厳密には臨床心理検査のSCT(Sentence Completion Test)と異なります。
※自由連想法と文章完成法の各設問例は、資料にてご紹介しております。
>> 「自由連想法」と「文章完成法」の設問例はこちらから【資料を無料ダウンロード】
実践編(1)エクセルで集計するための準備
ここからは、自由記述回答の『集計のやり方』について解説していきます。
例として、「企業の社員を対象とした、新入社員の言動・行動で驚いたこと」という設問をもとに、説明していきます。
1.設問
今回の設問は下記のとおりです。
2.ローデータ
下記はローデータ(Excel)の集計対象シートの抜粋です。BC列の「Q9」が集計対象列となります。
3.アフターコーディング
メーカーの商品開発をはじめとするマーケティングリサーチ担当者は、アンケート調査の自由記述回答結果を、最初どのように利用するのでしょうか。
まず、「ざっと眼を通し」ます。地位や職責により、「ざっと眼を通す」ことで用が足りてしまう担当者もいれば、まるで調理をするかのようにデータを切り刻みながら詳細に分析する担当者もいます。
データを詳細に分析する場合でも、まず最初に全てのデータに眼を通すことは必須です。
アフターコーディング(コーディング)とは
データに眼を通し終わりましたら、次は、全てのデータの分類にとりかかります。このデータを分類する作業のことを、アフターコーディング(コーディング)といいます。
コーディングでは、一般的に大・中・小レベルの階層項目を設定し、1件のデータごとにフラグを付与していきます。
コーディング表の例
下記は各階層項目の説明です。
大項目 |
ポジティブかネガティブの2択ですが、今回の例は「新入社員(新卒1年目)の言動や行動で驚いたこと」なのでネガティブのみということになります。 |
中項目 |
「言葉」「態度」「行動」「その他」の4項目としました。 |
小項目 |
「言葉」では「敬語を使わない」「馴れ馴れしい」「ふさわしくない言葉遣い」の3項目、「態度」では「挨拶をしない」「礼儀知らず」など4項目、「行動」では「マナーの悪さ・常識のなさ」「身だしなみの悪さ」「家族への過度な依存」など10項目としました。 |
下記は、コーディング表です。小項目に一つずつ番号を振って、フラグを作ります。
ローデータ1件ごとに、フラグの番号を入力します(下図のBD列「フラグ」)。
実践編(2)集計・まとめ方
いよいよ集計に入ります。集計はExcelのピボットテーブルを使います。
ピボットテーブルでは、フラグの「個数」(デフォルトは「合計」)を集計します。
実践編(3)分析
円グラフにして集計の全体像を見る
集計結果を円グラフにしてみましょう(3%未満の項目は「その他」にまとめました)。全体像がわかります。
中項目ごとに分析する
全体像が示された前ページの分析結果を、中項目の「言葉」「態度」「行動」に細分化してみましょう。中項目では「行動」の比率が38%と最も高いことがわかります。
資料では、さらに、3つの中項目「言葉」「態度」「行動」ごとに小項目の比率を集計したアウトプット例も紹介しています。
>> 「3つの中項目ごとに小項目の比率を集計したグラフ」はこちらから【資料を無料ダウンロード】
実践編(4)テキストマイニング
テキストマイニングとは
テキストマイニングとは、文字列を対象としたデータマイニングのことです。マーケティング分野では、長年、主にコールセンターでの顧客の声の解析で活用されてきました。
自由記述回答の文章において、どのような言葉が沢山書かれていて、それらの言葉同士がどうつながっているか(例:○○が△△なので)を明らかにすることにより、アンケート回答者の ”声” の全体像をつかむことができます。
例えば商品開発の調査では、機能・価格・用途・販路という区分の中で、最も多く書かれている内容はどれか。その内容はポジティブが多いのか、ネガティブが多いのか。などが、一目でわかります。
テキストマイニングでは、文章を品詞ごとに分類(形態素解析)することで、単語・文節の出現頻度や関係性などが明らかにされます。
テキストマイニングを実施するためには
テキストマイニングのフリー(無料)ソフトが普及しており、誰もがExcelファイルを使って分析することができます。まずはフリーソフトを入手しましょう。
おすすめのフリーソフトの情報や、 テキストマイニングのアウトプット例は、資料にてご用意しております。下記よりダウンロードしてご活用ください。
>> 「おすすめのテキストマイニングのフリーソフト」や「テキストマイニングのアウトプット例」はこちらから【資料を無料ダウンロード】
アンケートの自由記述回答にまつわる、よくある質問
Q:アンケート全体の中で、自由記述回答はなるべく少ないほうがいいと言われていますが。
定量調査の場合、まず回答者の負担、そして集計・分析の費用と時間のコストを勘案すれば、少ないに越したことはありません。
特に文章を入力する自由記述回答は、想定できなかった貴重な知見を得ることもあるものの、あくまでも補助的な設問です(現在、商品・サービスへの不満のテキストデータを解析するサービスもあり、将来、メインとなる可能性はあります)。
Q:文章を記入してもらう自由記述回答は、調査票の最後に置いたほうがいいでしょうか。
調査票の最後に置いたほうが良いです。自由記述回答は回答者の負担が多いため、途中離脱を防ぐためにも、調査票の最後のほうが望ましいです。
また、年収など回答者が答えたくない数値項目は、調査票の最後に、という鉄則があります。
>> Q&Aをもっと見たい方はこちらから「アンケートの自由記述回答にまつわる、よくある質問」【資料を無料ダウンロード】
無料ダウンロード『アンケートの自由記述回答の活用と集計・分析例』
本記事で解説した『アンケートの自由記述回答の活用と集計・分析例』についてまとめた資料は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。
こちらの資料では、記事には掲載されていない、
●「自由連想法」と「文章完成法」の設問例
●3つの中項目ごとに小項目の比率を集計したグラフ
●テキストマイニングのアウトプット例
●「まだある自由記述回答のデメリット」や「回答例を示すべきか」(よくある質問)
についても掲載しています。下記よりダウンロードしてご活用ください(無料)。
おわりに
アンケート調査と深く関わりがある「自由記述回答」について解説してきました。回答者の負担の大きさや、集計作業に手間がかかるというデメリットはありますが、回答者の自由な考え(回答)を導き出すことができるというメリットはとても大きいです。アンケートの目的に応じて、効果的に活用していきましょう。