クープマン目標値とは|リサーチ マーケティング用語集
クープマン目標値
クープマン目標値とは
クープマン目標値とは、市場シェアの目標数値のことで、企業が対象の市場において、製品やサービスの占有率や立ち位置、競争上の優劣を評価する際の指標となります。例えば、ある企業の市場シェア率が50%の場合、クープマン目標値では「安定的トップシェア」に位置していることになります。
ランチェスターの法則とクープマン目標値の関係
ランチェスターの法則を研究した、アメリカの数学者B.O.クープマンによる「ランチェスター戦略モデル式」の市場シェア理論を、コンサルタントの田岡信夫と社会統計学者の斧田太公望が解析し、導き出された値が、クープマン目標値です。
6つの目標値
目標とするシェアに応じて、下記の表の通り、6つの目標値に区分されます。
目標値の名称 |
シェア率 |
1.独占的市場シェア(上限目標値) |
73.9% |
2.安定的トップシェア、相対的安定シェア(安定目標値) |
41.7% |
3.市場影響シェア(下限目標値) |
26.1% |
4.並列的上位シェア、並列的競争シェア |
19.3% |
5.市場認知シェア(影響目標値) |
10.9% |
6.市場存在シェア(存在目標値) |
6.8% |
1.独占的市場シェア(上限目標値)
独占的市場シェアとは、シェア率が73.9%を超えている状態を指します。
ごく少数の企業しか存在しない市場で、「独占的寡占型」とも呼ばれます。
ここに位置する企業は優位独占の状態で、市場をコントロールできる立ち位置にあり、他社は短期的な市場シェア奪還が困難となります。このシェアを持った企業は、業界内の競合相手以上に、独占禁止法など政府の規制に目を配る必要があります。
また、2番手に位置する企業と合わせてシェア率が73.9%を超えている場合は、「二大寡占市場」と呼ばれます。
2.安定的トップシェア、相対的安定シェア(安定目標値)
相対的安定シェアとは、シェア率が41.7%を超えている状態を指します。
「シェア率40%」は、多くの企業で安定的トップシェアの最終目標として掲げられることが多い数字です。「安定目標値」とも呼ばれます。
また、業界で実質3社以上の戦いの場合、41.7%以上のシェアを取れば業界のトップシェア企業となり、安定した地位を確保できます。
トップ企業に安定的トップシェアを確保されてしまうと、2位以下の下位ブランド・下位企業はトップシェアの確保が困難になります。
3.市場影響シェア(下限目標値)
市場影響シェアとは、シェア率が26.1%以上ある状態を指します。
業界によってはトップに位置できるシェア率だといえます。「下限目標値」とも呼ばれます。
市場影響シェアを上回る企業は、競争状況から一歩抜け出した状態となり、自社の動きに対して他社が同調する動きが見られる場合がある等、「市場に影響を与える」立場として考えられています。
4.並列的上位シェア、並列的競争シェア
並列的上位シェアとは、シェア率が19.3%以上ある状態を指します。
複数の企業が競争し、拮抗している状況で、どの企業も安定したトップ企業の位置を確立できていない状態です。
競合他社に先んじて「市場影響シェア」である26.1%を獲得することが目標となります。
5.市場認知シェア(影響目標値)
市場認知シェアとは、シェア率が10.9%以上ある状態を指します。
消費者から純粋想起がなされる程度のシェア率であり、競合他社からも認識されていることを示す目安値です。「影響目標値」とも呼ばれます。
市場認知シェアを下回っている企業は、消費者や競合他社からほとんど知られていない状況といっても良いでしょう。
6.市場存在シェア(存在目標値)
市場存在シェアとは、シェア率が6.8%以上である状態を指します。
消費者から助成想起がなされる程度のシェア率であり、市場で存在が許される最低レベルの位置づけの目安値です。「存在目標値」とも呼ばれます。
市場存在シェアを下回った場合は、市場からのブランド撤退を検討、企業であれば倒産リスクがあります。
クープマン目標値のメリット
改めて、クープマン目標値のメリットや活用方法について説明します。
市場シェアの目標値である、クープマン目標値を把握すると、戦略立案に役立つ下記3つのメリットがあります。
1.自社の立ち位置が確認できる
対象の市場における、自社の立ち位置を客観的に確認することができます。
企業側が想定している立ち位置は、意外にも、顧客が思っている実際の立ち位置と異なるケースが多いです。自社と顧客との認識に違いがあると、努力して立案した戦略が無駄になってしまうため、マーケティング戦略においても重要視されています。
2.競合他社との差を把握できる
競合他社との差から、自社に不足している要素を明確化することができます。
特に、「相対的市場シェア率」の把握は、自社が目指すべき競合他社との差を明らかにするため、製品・サービスの改良や戦略の検討において重要な指標になります。
3.新規市場への参入を検討するときに活用できる
新製品・新サービスの展開を検討する際に、必要な目標や戦略を明確化することができます。
参入を検討する市場のシェア率の状況や、競合他社の数、顧客のニーズなどを分析し、参入する価値自体の判断を含めた、最善のアプローチ方法の検討に役立ちます。
クープマン目標値の活用方法
クープマン目標値が活用できる主な分析方法の一つとして、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)分析があります。
PPM分析とは、相対マーケットシェアと市場成長率の2つの軸を組み合わせ、事業を下記4つのポジションに分類する手法です。
自社製品・サービスの分析や、経営資源の投資配分を判断する際に活用することができます。
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