catch-img

ポートフォリオ分析を解説!エクセルのやり方と事例

目次[非表示]

  1. はじめに
  2. ポートフォリオ分析とは
  3. ポートフォリオ分析の4象限
  4. ポートフォリオ分析のアウトプットイメージ
  5. ポートフォリオ分析のベースとなる「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」とは
  6. プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の4象限
  7. PPMのアウトプットイメージ
  8. Excelを使ったポートフォリオ分析のやり方と事例
  9. ポートフォリオ分析のプロセス
  10. ポートフォリオ分析にまつわる、よくある質問
  11. 無料ダウンロード『ポートフォリオ分析マニュアル 』
  12. おわりに(まとめ)

はじめに

分散分析について、基本概念やExcelでの実践方法を、事例を交えながら分かりやすく解説していきます。

この記事を読んで分かること、できるようになること

●マーケティングにおけるポートフォリオ分析の活用目的や用語の意味を正しく理解できる。
●ポートフォリオ分析の実施手順を事例とともに理解し、やり方を習得できる。
●ポートフォリオ分析のマニュアル(資料)を無料でダウンロードできる。

\今すぐ資料を見たい/

ポートフォリオ分析とは

ポートフォリオ分析とは、商品やサービスの各項目に対して、生活者・消費者・得意先などの調査対象者が、「どの程度満足しているか(満足度)」、「各項目の満足度への影響はどの程度なのか(重要度)」という2軸による4象限のマップを作成し、着手すべき課題の優先順位を明確にするための分析手法です。

顧客満足度調査の一手法でもあり、Customer Satisfaction(顧客満足)の頭文字から、CS分析と呼ばれることもあります。

ポートフォリオ分析の4象限

ポートフォリオ分析の4象限の各内容は以下の通りです。

重点維持項目(第1象限)

満足度、重要度ともに高い象限。自社の強みであり重点的に維持していく象限です。

維持項目(第2象限)

満足度は高いながら、重要度は高くはない象限。満足度のスコアの低下は防ぎましょう。

改善項目(第3象限)

満足度、重要度ともに低い象限。改善の優先順位は最も低く、場合によっては切り捨てます。

重点改善項目(第4象限)

重要度が高いにもかかわらず、満足度が低い象限。改善の優先順位が最も高い象限です。

ポートフォリオ分析のアウトプットイメージ

ポートフォリオ分析では、各項目が以下のような4象限のマップ上のプロットで配置されます。

ポートフォリオ分析のベースとなる「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」とは

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは、米国のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が考案した、事業ポートフォリオのフレームワークで、ポートフォリオ分析のベースです。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(以下、PPM)は、事業の魅力度と競争上の優位性の評価を単純化したモデルで、「資金を生み出す事業」と「投資が必要な事業」を区分し、資源配分の最適化を図ることを目的としています

分かりやすく言うと、基本的な戦略は、問題児の数を減らして一部に集中投資をして花形事業を育てるという、選択と集中です

PPMの考え方のベース

まずはじめに、「市場の成長は時間の経過とともに低下し、成長性の高い事業は多くの資金を必要とする」という【事業ライフサイクル】の考え方です。

次にベースとなる考え方は、「製品の生産量が増えれば単位あたりのコストが下がり、生産性が向上する」ことから、「市場シェアの高い企業のほうが、低い企業よりも相対的に低コストで生産ができるゆえに高い収益が得られる」、という【経験曲線】の考え方です。

これら【事業ライフサイクル】と【経験曲線】という考え方を前提として、市場成長率と相対マーケットシェアの2軸でマトリクスを作り、事業を4象限に分類することが、PPMです

なお、市場成長率は、今後3~5年後の年平均の成長率です。また、相対マーケットシェアは、トップ企業のシェアを基準とします。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の4象限

BCGによるPPMの4象限の各内容は以下の通りです。

問題児│Question Mark(第1象限)

成長性は高いがシェアが低い。早いうちに集中投資してシェアを上げる戦略をとるか、思い切って撤退するか否かの判断が必要。

花形事業│Star(第2象限)

シェアも成長性も高い。現在のシェアを維持しつつ、成長するための投資を行い、将来の金のなる木に育てる。

金のなる木│Cash Cow(第3象限)

シェアは高いが成長性は低い。投資をシェアの維持に必要な最小限度にとどめて収益をあげ、キャッシュを回収する戦略をとり、他の事業への資金源とする。

負け犬│Dog(第4象限)

シェアも成長性も低い。改善の見込みが立たない場合、買い手がいるうちに売却するなどの撤退戦略をとる。

PPMのアウトプットイメージ

PPMの2軸は、市場成長率と相対マーケットシェアという産業調査データであり、アンケート調査結果ではないのでポートフォリオ分析のベースになっている点は、2軸4象限のマッピングであるという点です。

\今すぐ資料を見たい/

Excelを使ったポートフォリオ分析のやり方と事例

ここからは、Excelを使ってポートフォリオ分析を行うやり方を具体的に解説していきます。

事例として、「あるネットスーパーが、顧客満足を高めるために、どのような課題をどのような優先順位で 改善していくのかを明確化すること」を目的としたポートフォリオ分析を実施するとします。

ポートフォリオ分析のプロセス

ポートフォリオ分析は、以下の手順で行います。

1.アンケートの実施
2.集計表の作成(ローデータから)
3.満足率・重要率の算出(平均値と標準偏差も算出)
4.満足度・重要度の算出
5.散布図の作成
6.ポートフォリオ分析

1.アンケートの実施

あるネットスーパー利用者を対象とした、インターネットによる定量調査の結果を分析します。

●必要となるデータは、満足度の総合評価各項目別満足度の個別評価の2種類です。
●必要となる設問は、以下、Q1とQ2の2問です。
●総合評価(Q1)と個別評価(Q2)の選択肢の尺度を同一とします(この例では4段階ですが、5段階のケースが多いです)。
●一般的な設問の選択肢では、「『1』が、とても満足」「『4』が、とても不満」のように、満足度の高いほうが低スコアとなりますが、ポートフォリオ分析ではスコアの高低が逆になり、満足度の高い方が高スコアとなる点に注意しましょう。

2.集計表の作成(ローデータから)

ローデータの準備

Q1とQ2のローデータから、集計表を作成します。

Excelのローデータは、B~L列が各項目別満足度の個別評価(Q2)、M列が満足度の総合評価(Q1)になっています。

※通常はQ1がB列に表示され、Q2はC列からM列に表示されますが、データの加工・集計プロセスがわかりやすくなるように、Q1とQ2の列を逆にしました。

シート名は「Raw data」です。

集計は、シート名「Raw data」ではなく、別のシートで行います。
なお、今回のサンプルサイズは269人ですので、270行目まで続いています。

出現数の算出

続いて、各項目別満足度の個別評価(Q2)満足度の総合評価(Q1)出現数を算出します。

出現数は、「とても満足」「やや満足」「やや不満」「とても不満」の4段階の各回答数になります。

B列「検索のしやすさ」の、セルB列3行~B列6行に入力した関数を、M列の「総合評価」まで入力します。
※M列の「総合評価」は、シート名「Raw data」の集計範囲がM列となります。

出現率の算出

次に、出現数から出現率を算出します。

前述の集計表(出現数)のM列より右側、O列2行~AA列6行までの範囲に、「集計表(出現数)」と同じフォームで、「集計表(出現率)」を作成します。

Q1、Q2ともにシングルアンサー(単数回答)なので、「とても満足」から「とても不満」までの各々のデータを、合計で割る計算式を、AA列の「総合評価」まで入力します。

3.満足率・重要率の算出(平均値と標準偏差も算出)

集計表の出現率のうち、とても満足」(Raw dataのスコアでは「4」)の出現率=「満足率になります

続いて、「総合評価(AA列3行)」の右側、AB列3行とAC列3行に、個別評価の満足度(P列3行~Z列3行)の 平均標準偏差を算出します(「総合評価」の満足度は含みません)。

満足率」の次に、「重要率」を算出します。

ここでの重要率とは、「10項目ある満足度の個別評価(Q2)が、満足度の総合評価(Q1)にどの程度影響を与えているのか」、つまり「満足度の個別評価」と「総合評価」の相関係数のことです。

相関係数は、Excelの分析ツールでも算出することができますが、ここではCORREL関数を使って相関係数を算出します

※この重要率以降の集計表では、総合評価はなく、個別評価(10項目)のみ扱います。

P列9行「検索のしやすさ」に入力したCORREL関数を、Q列9行「ポイントの貯まりやすさ」~Z列9行 「実店舗以上の品揃え」まで入力します。

そしてAA列とAB列に、個別評価の満足度(P列9行~Z列9行)の平均標準偏差を算出します。

4.満足度・重要度の算出

3.で算出した「重要率」のデータをもとに、「重要度」を算出します。算出式は以下の通りです。

重要度=(重要率-重要率の平均値)÷重要率の標準偏差値×10+50

P列12行「検索のしやすさ」に入力した数式を、Q列12行「ポイントの貯まりやすさ」~Z列12行 「実店舗以上の品揃え」まで入力します。

そしてAA列に、個別評価の重要度(P列12行~Z列12行)の平均を算出します(標準偏差は必要ありません)。

続いて、ポートフォリオ分析のために必要な、最後の指標「満足度」を算出します。算出式は以下の通りです。 

満足度=(満足率-満足率の平均値)÷満足率の標準偏差値×10+50

P列16行「検索のしやすさ」に入力した数式を、Q列16行「ポイントの貯まりやすさ」~Z列16行「実店舗以上の品揃え」まで入力します。

そしてAA列に、個別評価の満足度(P列16行~Z列16行)の平均を算出します(標準偏差は必要ありません)。

5.散布図の作成

算出した「重要度」と「満足度」の集計表を使用して、散布図を作成します。

①「挿入」タブで、②データ範囲を指定し、③「グラフ」、④「散布図」の順でクリックします。

※散布図において、横軸(X軸)=重要度縦軸(Y軸)=満足度とするために、行は重要度のほうが満足度の上になります。

散布図が作成されました!横軸(X軸)=重要度、縦軸(Y軸)=満足度、です。

こちらはExcelのデフォルトで作成された散布図になります。

グラフのサイズ、グラフのフォント、軸ラベルの追加、文字の大きさ、グラフエリアの枠線などは、自由に設定し直しが可能です。

また、デフォルトでは横軸(X軸)も縦軸(Y軸)も最小値が「0.00」ですが、見やすさを優先するため、グラフの「軸の書式設定」メニューで、最小値を調整することも大切です。
今回は横軸(X軸)も縦軸(Y軸)ともに最小値を「30.00」にしましょう。

なお、Excelの散布図は、円グラフや棒グラフ、折れ線グラフとは異なり、データラベルとスコアが自動的に表示されることはありません(データ範囲指定の段階で、データラベルは含まれません)。よって、散布図のプロット(点)にカーソルを合わせて右クリックし、「データラベルの追加(B)」で数値を表示させた後、手作業で一つずつ数値を上書きして、個別評価の項目名を入力していきます。

6.ポートフォリオ分析と結果

ここまでの調整を掛けてできあがった散布図に、重要度・満足度ともに、ポートフォリオ分析の基準となる平均値(ともに50.00)を赤線で追加します。

結果、重要維持項目は「検索のしやすさ」でした。
重要度と満足度がともに高いので、このネットスーパーの最大の強みであることが分かります。

維持項目は「当日配送がある」と「24時間配送がある」という配送に関する2項目でした。
特に「当日配送がある」の満足度の高さが際立っており、今後とも満足度が落ちることのないよう注意する必要があります。

改善の優先順位が最も高い重要改善項目については、「ポイントの貯まりやすさ」「アプリの使いやすさ」「品質への信頼」の3項目でした。
割くことのできるリソース次第ではありますが、一般的に「ポイントの貯まりやすさ」が最も着手しやすく、技術向上による「アプリの使いやすさ」は時間が掛かり、「品質への信頼」は最も時間が掛かると言えるでしょう。

改善項目については、「実店舗以上の価格の安さ」と「品揃え」の項目は、ネットスーパーにおいて、相対的な重視度は低いということが分かりました。
以上の分析結果をもって、改善項目の検討と取り掛かる優先順位を決め、各象限ごとの具体的な施策を立て、実行へ繋げていきます。

\今すぐ資料を見たい/

ポートフォリオ分析にまつわる、よくある質問

Q:ポートフォリオ分析では、満足率を満足度に、重要率を重要度に計算していますが、定量調査の設問で、各項目についての満足度と重要度をダイレクトに聞いた結果を、2軸4象限にマッピングすることも、「ポートフォリオ分析」と言えますか。

いいえ、ポートフォリオ分析とは言えません。しかしながら、実務においては、一般的に行われています。

Q:ポートフォリオ分析において、アンケートの選択肢を、通常の定量調査の選択肢「『1』がとても満足」、「『4』がとても不満」のように逆に設定してしまった場合の、対処方法を教えてください。

方法の1つは、ローデータの作り直しです。集計表の別のシートに、ローデータのフォームを作成し、全てのセルに、『1』を『4』、『2』を『3』、『3』を『2』、『4」を『1』に変換する数式を入力します。

以下のようなIF数式です。

=IF('Raw data'!B2=1,4,IF('Raw data'!B2=2,3,IF('Raw data'!B2=3,2,IF('Raw data'!B2=4,1))))

Q:重要率の算出に「CORREL関数」を使うとのことですが、Excelの分析ツールで相関係数を算出してもいいのでしょうか。

はい、算出してもいいです。但し、CORREL関数を使ったほうが容易におこなうことができます。

Excelの分析ツールを使う場合、アドインで「分析ツール」をインストールする必要があり、さらにアウトプットされるマトリクス表には、満足度の個別評価同士の相関係数など、ポートフォリオ分析に不必要なデータも算出されてしまいます。

よってCORREL関数の使用をお薦めします。

無料ダウンロード『ポートフォリオ分析マニュアル 

本記事で解説した内容をまとめた資料「ポートフォリオ分析マニュアル~Excelを使った分析事例~」は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。

おわりに(まとめ)

最後に、ここまで解説してきた内容をまとめました。今一度の確認に活用してください。

ポートフォリオ分析とは、商品やサービスの各項目に対する「重要度」と「満足度」という2つの軸を基に、課題の優先順位を明確にすることを目的におこなう分析手法です。

2次元マップ上で、2軸による4象限に各項目がプロットされるため、誰が見ても分かりやすく結果が一目瞭然であることが特徴です。

ポートフォリオ分析の4象限は、以下の通りです。

  • 重点維持項目(第1象限):満足度、重要度ともに高い象限。自社の強みであり重点的に維持していく
  • 維持項目(第2象限):満足度は高いながら、重要度は高くはない象限満足度のスコアの低下は防ぐ
  • 改善項目(第3象限):満足度、重要度ともに低い象限。改善の優先順位は最も低く、場合によっては切り捨てる。
  • 重点改善項目(第4象限):重要度が高いにもかかわらず、満足度が低い象限。改善の優先順位が最も高い

ポートフォリオ分析のベースは、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が考案したプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)です。

ポートフォリオ分析は、Excelを使っておこなうことができます。

手順は、まずローデータから集計表を作成し、次に集計表のデータから、満足率重要率を算出します。満足率と重要率では、各々の平均値標準偏差も算出します。

次に満足率とその平均値・標準偏差から満足度を算出、重要率とその平均値・標準偏差から重要度を算出します。

そして、満足度重要度2軸にした4象限の散布図を作成します。

なお、調査設計の段階で、評価の高い項目のスコアを高くする、総合評価と個別評価の選択肢の尺度を同一とすることを注意しましょう。



【参考文献】

『新版MBAマネジメント・ブック』(グロービス・マネジメント・インスティテュート編著、ダイヤモンド社、2002年2月)

もっと簡単で、
もっと自由なアンケートを作ろう

「500円」から始められる

セルフ型アンケートツール「Freeasy」

初心者の方には、分かりやすく! 
経験者の方には、高機能でもっと低コスト且つスピーディーに!
500円から始められる自由で簡単なセルフ型アンケートツール「Freeasy」を
さっそく始めてみませんか?

記事ランキング

ページトップへ