アンケート初心者向けの質問文作成法|Freeasyリサーチアカデミー
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第5回前半のテーマ:「アンケート初心者向けの質問文作成法」
アンケートの質問文は作成者によって書き方が変わり、また同じ作成者の中でも表記がゆらいだり、文章の長さに極端な差が出たりします。こうしたまとまりのなさは、回答者に画面を読み込むストレスを与えたり、質問意図を誤解させたりしてしまいます。
今回のテーマは「アンケートの質問文」です。主にユーザーアンケートを作成されている方を念頭に置いて、「質問文の表記パターン」「頻出表記の統一方法」「見直しチェックする時のポイント」「必須回答と任意回答の違い」などを解説していきます。
解説するのはリサーチャーの菅原大介氏です。
①質問文の表記ルールを定める
質問タイプごとの表記パターン
質問文は設定する質問タイプに合わせたパターン表記(紋切り型の言い回し)を使うようにします。
まず、質問文の冒頭は、「あなたは○○の場面で何をしましたか」(行動を尋ねる場合)、あるいは、「あなたは○○についてどう思いますか」(意識を尋ねる場合)と疑問形で書き出します。これで質問対象となる物事を簡潔に回答者に伝えていきます。
次に、ツールで設定する質問タイプごとに、単一回答:「あてはまるものを一つだけお選びください」、複数回答:「あてはまるものをいくつでもお選びください」、自由回答:「自由にお書きください」と、回答方法を言葉にして書き添えていきます。
これで完成です。質問文作成時に、文章として質問文を書くことが苦手な方もいると思います。本項で紹介している表記パターンは、平凡ながらもシンプルで運用しやすく、私も10年以上いろいろな表記を試してみてこの形式が一番良いと思っています。
ちなみに、調査会社が作成する調査票では「あてはまるものをお選びください(いくつでも)」のように、質問タイプをかっこ書きで示す表記も多いのですが、他に補足することがある時にかっこを連発してしまうと冗長なので私は文中に入れています。
回答者指定がある時の表記パターン
質問に特定の回答者指定がある時は、質問文の冒頭で補足を入れます。属性/経験/立場に基づく場合は「○○の方にお伺いします」、前問の回答内容に基づく場合は「前問で○○をお選びになった方にお伺いします」と、それぞれ付記するようにします。
システムで回答の対象者を制御できていればこの文言は不要と言えばそうなのですが、特定対象者向けの質問が数問続く時にトピックスの流れが変わることを明示できたり、回答する時の観点を回答者にあらためて意識してもらう時に効力を発揮します。
特に自社でユーザーアンケートを行う場合は、各質問が誰向けのものなのか調査票上でわかりづらくなっていることが多々あり、アンケート画面設定時に混乱のもとになります。内部向けにも質問の回答対象者を言葉で明示しておくと間違いがありません。
質問文中でよく使う表記の統一
質問文中でよく使う表記は統一します。たとえば、選択回答では定番の質問形である、「教えてください」「お答えください」「お選びください」は、作成する人により言い回しが変わってきますし、同じ作成者の中でも表記ゆれが出る場合もあります。
また、「当てはまる」「あてはまる」のように、漢字とひらがなもよく混在してしまう表記ゆれになります。こうしたベーシックな表現は大半の質問に入るため、後々になって直す作業が出ると時間を取ってしまいます。はじめに決め事をつくりましょう。
表記パターンを設けるメリット
ここまで説明してきた表記パターンを設けるメリットは次のようになります。
a.質問文の趣旨が明快になる
質問タイプに合った表記ができていると、たとえば、選択回答は「お選びください」、自由回答は「お書きください」と文末に書くことで、それぞれの回答形式を明示することができます。もし「教えてください」となっていたらどちらかはわかりません。
確かに選択肢の記号あるいは回答欄を見れば、通常はどういう回答形式か判別できますが、最近は質問を見たらすぐに回答に移りたい志向を持つ人が増えていたり、問いの内容によってはいずれの趣旨かわかりづらいケースもあるので留意しておきましょう。
b.質問文の長さが一定になる
質問タイプごとの表記パターンがあると、質問文の長さをおおよそ一定に保つことができます。同じ様式を繰り返すことによって、回答者は短い時間の中で質問文を読むことに慣れ、各質問で重要な部分(変化のある箇所)を素早く認識しやすくなります。
もしこれが質問作成時の設計者の気分次第で文章が長かったり短かったりしてしまうと、回答者が文章を読むリズムを大幅に損ねてしまいます。この文章形式が好きか嫌いかというより、回答者視点であるべき質問文の表記を判断すると良いでしょう。
c.完成形のイメージを持てる
質問文のパターン表記を使うメリットは、回答者側だけでなく設計者側にもあります。ふだんから質問文を書くことに慣れていないと、「質問文が埋まらない」状態に焦りを感じる方もいることでしょう。兼務でのユーザーアンケートならなおさらです。
そこで質問文をパターン表記にしておくと、おおよそ質問文全体の1/3程度は自然と埋まるので、完成形のイメージを持って書くことができます。真に大事なのは質問事項・質問内容の方なので、文章そのものは型で対応できるようにしておきましょう。
②質問文の精度を自分で見直す
経験則の質問を見直す方法
物事の実態調査のアンケートでは、回答者の経験を尋ねる質問をよく使います。その際、回答者の「いつの・どの」経験を尋ねるか、質問文で特定する癖をつけます。時期や場面を特定しておかないと、集まる回答の種類や粒度が不ぞろいになるからです。
設計者(自分)と回答者(相手)の回答観点を一致させるには、「これまでの経験すべて」「直近1年」「直近の利用」「○○の時点」のように、回答対象となる時期や場面を質問文で指定します。経験を尋ねる質問では毎回チェックしてみてください。
誘導的な質問を見直す方法
企画職や営業職の方が作成する質問文に多く見られるのが、誘導的な質問文で尋ねる方法です。たとえば、「テレビドラマ『半沢直樹』は令和最高視聴率を記録するブームになりました。あなたはこのドラマを面白いと思いましたか」のような書き方です。
質問の前半部では世論を刷り込んでいるため、当然答えの方向性は「はい」に傾きやすくなります。また後半部では「面白い」という評価に関する言葉が登場し、回答者に同調圧力をかけそうな流れになっており、結論への期待がかかってしまっています。
このような誘導的な表現は、口語体(親しい会話口調)の質問文を多用する癖がある人によく見られます。本人は回答イメージを膨らませるため良かれと思ってアシストしているつもりでも、調査的には大きなバイアスをかけてしまうので注意が必要です。
複合的な質問を見直す方法
調査ビギナーの方が作成した質問文に多く見られるのが、一つの質問文で複数のことを同時に尋ねる方法です。レストランサービスのお客様アンケートならば、「料理の味つけ、見た目、スタッフの対応などはいかがでしたか」という書き方が該当します。
この尋ね方だと質問事項が複数あって、回答内容が総論になったり散漫になったりしてしまいます。選択回答ではどの項目について回答するのか対象が曖昧ですし、自由回答では主語が省略される最悪の場合に何についての回答なのかわからなくなります。
そこで、同じくレストランサービスを例にすると、「料理の味つけはいかがでしたか」と単一の項目について把握できるようにするか、もしくは、「料理の見た目・盛り付け・テーブルコーディネートはいかがでしたか」と近い項目で揃えるようにします。
③必須と任意のバランスを取る
必須ではなく任意にする主なケース
アンケートの質問は必須回答または任意回答の設定をすることができます。ビギナーの方は使い分けに迷うかもしれませんが、もちろん全問の回答を集めたいですし、アンケート回答者には協力的な人が多いので、基本はすべて必須設定で問題ありません。
任意回答設定を検討するのは、具体的に次のような場合です。
a.自由回答を複数入れる場合
自由回答を2~3問設定する際、場所がアンケートの終盤でしかも考えて書いてもらう内容だと回答負荷はかなり高まります。もし質問の優先度に甲乙つけがたい場合は、冒頭の一問だけ必須設定にして、残りは任意設定にするとスマートな設計になります。
b.アンケート全体が長い場合
アンケート全体の質問数が多い時(一般的には20問以上~)、後半に選択肢数が多い質問を設定すると回答の離脱につながってしまいます。何らかの事情で質問としては外せない場合もあるかもしれませんが、その時はせめて任意回答の設定にしましょう。
c.センシティブな内容の場合
質問する内容がセンシティブな内容の場合、任意設定にしておいて回答を強要しないように配慮します。具体的には、健康のこと、お金のこと、家族のことを尋ねる時などが該当し、いずれもできるだけテーマを明示したうえで実施するようにしましょう。
次回のブログテーマは「アンケート初心者向けの選択肢作成法」
Freeasy担当からお知らせです。次回、第5回(後半)のブログでは、今回の続きで「アンケート初心者向けの選択肢作成法」をテーマに菅原氏に解説いただきますので、ご期待ください!(8月下旬公開予定)
>>第5回(後半)のブログ「アンケート初心者向けの選択肢作成法」へはこちらから
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