
コンジョイント分析のやり方|活用方法や手順を例を交えて解説
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この記事は下記のような方におすすめ
- コンジョイント分析の基本について理解したい
- コンジョイント分析マニュアルをすぐ確認できるようにしたい
- マーケティング現場で役に立つ分析方法を身に付けたい
はじめに
コンジョイント分析とは、消費者が商品の好き嫌いを判断するプロセスを検討する場合、その商品の価値を決定する多くの要素(機能・デザイン・価格など)の中から、どの要素を重視して、全体としてどのような商品コンセプトを最も好ましいと感じているか把握することができる分析手法です。
新商品を開発するとき、機能・デザイン・価格などの受容性をそれぞれ単独で測定するだけでなく、複合的に組み合わされた商品コンセプトとして評価したい。このような課題を解決することができます。
コンジョイント分析は、新商品企画・開発のほかにも、販売促進などのマーケティング活動において活用されています。また、製造業に限らず、小売店や飲食店をはじめとするサービス業界でも、広く活用されています。
コンジョイント分析の結果は、通常の定量調査のようにひとつひとつの要素の効果から全体を評価(部分から全体へ)するのではなく、全ての要素の効果が結合した全体に対する評価から、個々の要素を分析します(全体から部分へ)。
コンジョイント分析では、全体に対する全体評価から、その「モノ」を構成する各要素の個別効果(コンジョイント分析では部分効用値と呼びます)まで測定できるということです。
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コンジョイント分析の実施条件
カテゴリーの向き・不向き
コンジョイント分析は、必ずしも全ての商品・サービスへの適応が可能とは限りません。以下のような条件があてはまることが前提です。(ここからは、商品カテゴリー例としてヘアドライヤーを取り上げます。)
①商品・サービスの特徴をいくつかの属性に分解できること
※例えば、商品の機能や大きさ・重さ、価格などの特徴(構成要素)のことです。
②それらの属性が客観的に表現できること
※例えば、飲食品の「甘い」「辛い」といった主観的評価は向いていません。
補償的か非補償的か
コンジョイント分析では、機能・デザイン・価格などの属性が補償的であることが前提となります。
「このヘアドライヤーは重いのが欠点だが、マイナスイオン発生装置がついているからこれでいい」という場合、「マイナスイオン発生装置」が「重さ」を補償しているということになります。
これに対し、「ドライヤーは軽くなければ話にならない」ということになれば、非補償的ということになります。
コンジョイント分析は、補償的な意思決定を前提とした分析です。
コンジョイント分析の手順・やり方
1.コンジョイント分析の調査準備
属性と水準の決定
今回、商品カテゴリー例として取り上げるヘアドライヤーの構成要素は、①重さ、②マイナスイオン発生装置、③色、④価格の4つとします。
※コンジョイント分析では、構成要素のことを属性といいます。
①重さは「400g」「600g」、②マイナスイオン発生装置は「なし」「あり」、③色は「ホワイト」「ピンク」、④価格は「8,900円」「12,400円」とします。
※コンジョイント分析では、属性の内容のことを水準といいます。
ヘアドライヤーの属性(4つ)と水準(2つ)は、以下のようになります。
直交表の作成
属性と水準が決まったら、これらを組み合わせます。
もし、属性と水準の全てを、順列組み合わせで作成すると、今回の4属性・2水準の場合、合計で2×2×2×2の16通りになりますが、これでは調査対象者の回答負担が増す上に、調査費用もかさみます。
そこで、全ての組み合わせの属性間の相関がゼロになる「直交表」を利用して、偏りのない組み合わせを作ります。ここでは、7属性以下・2水準の場合、最もよく使われている「L8直交表」(8通りの組み合わせ)を使います。
※「SPSS Conjoint」など専用ソフトを使えば、簡単な操作で作成できます。
コンジョイントカードの作成
属性と水準を割り付けたL8直交表では、8通りの組み合わせができ上がります。それらを1枚ずつまとめたカードを「コンジョイント・カード」と呼びます。
2.コンジョイント分析の調査実施
コンジョイント・カードが完成したら、調査票を作成し実査に入ります。
従来型リサーチでの一般的な調査方法は、コンジョイント・カードを対象者が満足する順番に並べてもらう方法です。
インターネットリサーチでは、満足度を一対比較(1対1でカードを比較)する方法もありますが、ここでは合計8種類の【商品案】を全て提示し、満足度の10段階評価(1:非常に不満~10:非常に満足)を採用することにします。
調査対象者は5名とします。
※インターネットリサーチでは対象者が多数でも可能です。
3.調査後のコンジョイント分析用データ例
5名の調査対象者に、1から8までの商品案(商品コンセプト)を、10段階評価で回答してもらった「満足度」の集計データが下の表です。
調査対象者は各商品案の、①重さ、②マイナスイオン発生装置の有無、③色、④価格という属性について、一般的なアンケート調査のように一つずつ回答するのではなく、属性と水準が組み合わされた全体としての商品案(商品コンセプト)のみ評価します。
この「満足度」の集計データを、「1-0」データに変換した水準の表に追加します。
具体例として上表の赤破線内「回答者1」のデータを使用した、調査後のコンジョイント分析用データを、資料としてご用意しました。下記よりダウンロードしてご覧ください。
>>「調査後のコンジョイント分析用データ」を見る【資料を無料ダウンロード】
コンジョイント分析の結果
前章で解説したようなコンジョイント分析用(分析前)のデータが整ったら、SPSSなど統計ソフトを用いてデータ処理を行います。
コンジョイント分析実行結果をイメージ化した表も資料としてご用意しておりますので、下記よりダウンロードしてご覧ください。
>>「コンジョイント分析実行結果の表」を見る【資料を無料ダウンロード】
コンジョイント分析のバリエーション(参考)
コンジョイント分析には、「評定型」と「選択型」の2種類があります。さらに「評定型」は、「完全プロファイル評定型」(今回、具体例として取り入れたケース)と「ペアワイズ型」に分類できます。
コンジョイント分析にまつわる、よくある質問
Q:属性と水準の数に目安はありますか?
はい。属性と水準ともそれぞれ4つ以内が適当といわれています。5つ以上になる場合には、プリテストによって属性と水準を絞り込んだほうがいいでしょう。
また、水準の数は、今回のケースでは全て2水準でしたが、属性ごとに異なっていてもかまいません。
Q:L8直交表以外にも直交表はあるのでしょうか?
はい。属性と水準の数に対応して多くの直交表があります。
今回ご紹介した例では水準の数が2でしたが、3水準のケース(色が3色など)も多く、それらに対応する直交表はあります。いずれの直交表も、属性と水準間の組み合わせの出現バランスが整うよう、列内の数字が配列されています。
ただし、SPSSなど統計ソフトを使用すれば、直交表を探して手作業で属性と水準を当てはめていく手間は省けますので、複雑な直交表の知識は必須、ということはありません。
Q:調査票の回答尺度で決まりごとはありますか?
今回の例では、選択肢10段階評価の間隔尺度で解説しましたが、選択肢は7段階でも5段階でもかまいません。また、順番を答えてもらう順序尺度でも構いません。
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無料ダウンロード「コンジョイント分析の方法・活用マニュアル」
本記事で解説した「コンジョイント分析の方法・活用マニュアル」についてまとめた資料は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。こちらの資料では、記事では紹介できなかった、調査後のコンジョイント分析用データ例や、アウトプットイメージなどを掲載しています。
無料ですので、下記よりダウンロードしてご活用いただけますと幸いです。
おわりに
コンジョイント分析は、消費者やユーザーにとって一番ベストな商品やサービスのコンセプトを探し出す分析手法です。マーケティング全般において活用できるため、知っておいて損はありません。難しく考えずに繰り返し実践することで身につけていきましょう。