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コンジョイント分析をわかりやすく解説!(事例・直行表)


目次[非表示]

  1. はじめに
  2. コンジョイント分析とは
  3. コンジョイント分析の活用場面
  4. コンジョイント分析の注意点(実施前に確認すべきこと)
  5. 手順1|調査準備
  6. 手順2│調査票の作成、実施
  7. 手順3│調査後、集計・分析用データの準備
  8. 手順4│統計ソフトによるデータ処理結果の確認
  9. コンジョイント分析にまつわる、よくある質問
  10. 無料ダウンロード「コンジョイント分析の方法・活用マニュアル」
  11. おわりに

はじめに

新商品を開発する際に、機能・デザイン・価格などの商品を構成する各要素ごとの受容性をそれぞれ測定するだけではなく、複合的に組み合わされた「商品コンセプト」として評価したいという課題を解決する調査手法の一つが、コンジョイント分析です。

この記事を読んで分かること、できるようになること

●コンジョイント分析とは何か、事例とともに基本知識を得ることができる。
●コンジョイント分析と関係が深い、属性と水準、直行表、コンジョイントカードについて理解することができる。
●コンジョイント分析についてまとめた資料を、無料でダウンロードできる。

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コンジョイント分析とは

コンジョイント分析とは、消費者が、商品の「好き・嫌い」を判断するプロセスにおいて、その商品の価値を決定する多くの要素(機能・デザイン・価格など)の中から、どの要素を重視して、全体としてどのような商品コンセプトを最も好ましいと感じているかを把握することができる分析方法です。多変量解析の手法の中の1つです。

コンジョイント分析の特徴

コンジョイント分析は、通常の定量調査のように「ひとつひとつの要素の効果」から全体を評価する(部分から全体へのではなく、全要素の効果が結合した「全体」に対する評価から「個々の要素」を分析して(全体から部分へいきます。

したがって、コンジョイント分析では、商品全体に対する評価(全体評価その「モノ」を構成する各要素の個別効果(コンジョイント分析では部分効用値と呼びます)の両方を測定することができます。

コンジョイント分析の活用場面

新商品の開発・企画はもちろん、販売促進などのマーケティング活動においても活用されています。業界別では、製造業や、小売店や飲食店をはじめとするサービス業界でも広く活用されています。

コンジョイント分析の注意点(実施前に確認すべきこと)

●分析対象によって、向き・不向きがある

コンジョイント分析は、必ずしも全ての商品・サービスへの適応が可能とは限りません。以下のような条件があてはまることが前提となります。

■商品・サービスの特徴をいくつかの属性に分解できること
 ※コンジョイント分析では、商品の機能、大きさ・重さ、価格などの特徴=構成要素のことを、『属性』といいます

■それらの属性が客観的に表現できること
 ※例えば、飲食品の「甘い・辛い」といった主観的な評価は向いていません。

●前提として、属性が補償的であること

コンジョイント分析は、補償的な意思決定を前提とした分析です。

例えば、「このヘアドライヤーは重いのが欠点だが、マイナスイオン発生装置がついているからこれでいい」という場合、「マイナスイオン発生装置」が「重さ」を補償していることになるため、属性が補償的である=コンジョイント分析に向いていることになります。

これに対し、「ドライヤーは軽くなければ話にならない」ということであれば、非補償的ということになり、コンジョイント分析には向いていません

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手順1|調査準備

ここからは商品例として「ヘアドライヤー」を取り上げて解説していきます。

属性と水準の決定

ヘアドライヤーの属性は、
①重さ、②マイナスイオン発生装置、③色、④価格、の4つとします。

また、属性の内容(水準と言います)は、
①重さは「400g」「600g」、②マイナスイオン発生装置は「なし」「あり」、③色は「ホワイト」「ピンク」、④価格は「8,900円」「12,400円」、とします。

まとめると、ヘアドライヤーの属性(4つ)と水準(2つ)は、以下のようになります。

属性と水準の数の目安

属性と水準の数は、ともにそれぞれ4つ以内が適当といわれてい​ます。5つ以上になる場合には、プリテストによって属性と​水準を絞り込んだほうがいいでしょう。

なお、水準の数は、今回の事例では全て2水準ですが、属性ごとに異なっていてもかまいません。​​

直交表の作成

属性と水準が決まったら、これらを組み合わせていきます。

もし、属性と水準の全てを順列組み合わせで作成すると、今回の4属性・2水準の場合、合計で2×2×2×2の16通りになりますが、これでは調査対象者の回答負担が増す上に、調査費用もかさみます。

そこで、全ての組み合わせの属性間の相関がゼロになる「直交表を利用して、偏りのない組み合わせを作ります。

ここでは、7属性以下・2水準の場合に最もよく使われている「L8直交表」(8通りの組み合わせ)を使います。

※L8直行表は、「SPSS Conjoint」など専用ソフトを使えば、簡単な操作で作成することができます。

コンジョイントカードの作成

属性と水準を割り付けたL8直交表では、8通りの組み合わせができ上がります。それらを1枚ずつまとめたカードを「コンジョイント・カード」と呼びます。

手順2│調査票の作成、実施

コンジョイント・カードが完成したら、調査票を作成し実査に入ります。

従来型リサーチでの一般的な調査方法は、対象者に、コンジョイント・カードを満足する順番に並べてもらう方法です。

ネットリサーチでは、満足度を一対比較(1対1でカードを比較)する方法もありますが、ここでは『合計8種類の【商品案】を全て提示』し、選択肢10段階評価の間隔尺度(1:非常に不満~10:非常に満足)』を、採用することにします。

なお、調査対象者は5名とします。

※ネットリサーチであれば、対象者が多数でも調査可能です。

手順3│調査後、集計・分析用データの準備

先述の調査のアンケート結果である「満足度」の集計データが下表です。

調査対象者は各商品案の、①重さ、②マイナスイオン発生装置の有無、③色、④価格、という属性について、一般的なアンケート調査のように一つずつ回答するのではなく、属性と水準が組み合わされた全体としての商品案(商品コンセプト)のみ評価します

この「満足度」の集計データから、例として上表の赤破線内「回答者1」の集計データをピックアップし、「1-0」データに変換した水準の表に追加します。

例えば「重量」では「400g」の列の「1」が400g、「0」が600gになります。
※前出の【属性と水準を割り付けたL8直交表】の水準を、「1-0」データの形にしたものです。

このように表すことで、全体としての商品案(商品コンセプト)に対して、部分としての属性の水準はどのように評価されるのかについても、知ることができます

「水準」が「1-0」データに変換された表に、最終列の「満足度」を結合することで、コンジョイント分析用の集計前データが完成します。

回答者1の【商品案1】から【商品案8】までの「1-0」データの内容(赤破線内)は、回答者2から回答者5まで同一です。

このようなコンジョイント分析用のデータが整ったら、次に、SPSSやrなどの統計ソフトを用いてデータ処理を行います。

手順4│統計ソフトによるデータ処理結果の確認

下表は、SPSSによるコンジョイント分析実行結果をイメージ化したものです。

これにより、マイナスイオン発生装置の有無が、部分効用値に最も強く影響していること、寄与率も45%と突出して高いという結果が分かりました。

したがって、単純に寄与率(属性重要度)と部分効用値の高い順に属性の水準を組み合わせると、『マイナスイオン発生装置を備え、色はシンプルなホワイト、重さは軽量の400g、価格は安いほうの8,900円』ということになります。

ただし、実際の商品開発においては、単純にコンジョイント分析結果を採用するわけではなく、実際の商品化の可能性(特に費用と価格)などの検討を重ねます

コンジョイント分析にまつわる、よくある質問

Q:コンジョイント分析には複数のバリエーション(質問形式)があるのでしょうか。

コンジョイント分析には、「評定型」と「選択型」の2種類のバリエーションがあります。
さらに「評定型」は、「完全プロファイル評定型(今回取り上げた事例が該当)」と「ペアワイズ型」に分類されます。(詳細は下図参照)

評定型コンジョイント分析
完全プロファイル評定型
全てのコンジョイントカードの内容を提示し、間隔尺度などの選択肢で回答してもらう。(今回取り上げた事例)
ペアワイズ型

コンジョイントカードを2枚だけに絞り、双方のカードに書かれた商品案のどちらにどれくらい満足できるか回答してもらう。

選択型コンジョイント分析
複数のコンジョイントカードに記された商品案の中から、最も満足度の高い商品案を一つだけ回答してもらう。

Q:直行表には、L8直交表以外にも種類がありますか。

属性と水準の数に対応して多くの直交表があります。​
今回ご紹介した例では水準の数が「2」でしたが、「3」水準のケー​ス(色が3色など)も多く、それらに対応する直交表があり​ます。

いずれの直交表も、属性と水準間の組み合わせの出現バランスが整うよう、列内の数字が配列されています。

ただしSPSSなど統計ソフトを使用すれば、直交表を探して​手作業で属性と水準を当てはめていく手間は省けますので、​複雑な直交表の知識を持つことが必須ではありません。​

Q:調査票の回答尺度に、決まりごとはありますか。

ここでの事例では、選択肢10段階評価の「間隔尺度で解説しましたが、選択肢は7段階でも5段階でもかまいません。また、順番を答えてもらう「順序尺度」でも構いません。

Q:コンジョイント分析をおこなうことで、商品開発の結論は出ますか。

コンジョイント分析で絞られた、属性と水準の組み合わせによる『商品コンセプト』が、機能と価格のアンバランスさから商品化の実現は不可能である、というケースも少なくありません。

そのため実際のところはその『商品コンセプト』を再検討した後、さらに受容性・購入意向・使用意向の調査を行うのが一般的です。

無料ダウンロード「コンジョイント分析の方法・活用マニュアル」

本記事で解説した「コンジョイント分析をわかりやすく解説!」についてまとめた資料は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。

おわりに

コンジョイント分析は、消費者やユーザーにとって一番ベストな商品やサービスのコンセプトを探し出す分析手法です。マーケティング全般において活用できるため、知っておいて損はありません。難しく考えずに繰り返し実践することで身につけていきましょう。



【参考文献】

『1からのマーケティング分析』(恩藏直人、冨田健司著、碩学舎、2011年3月)/『課題解決! マーケティング・リサーチ入門』(田中洋編著、リサーチナレッジ研究会著、ダイヤモンド社、2010年8月)/『SPSSによるコンジョイント分析 : 教育・心理・福祉分野での活用法』(真城知己著、東京図書、2001年9月)/『マーケティングで使う多変量解析がわかる本』(酒井隆、酒井恵都子著、日本能率協会マネジメントセンター、2007年2月)/『例題とExcel演習で学ぶ多変量解析』(菅民郎著、オーム社、2016年11月)/『ビジネスに活かす統計入門』(内田学、兼子良久、矢野佑樹著、日本経済新聞社、2012年12月)

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