アンケートツールの導入時に吟味する項目|Freeasyリサーチアカデミー
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第3回前半のテーマ:「アンケートツールの導入時に吟味する項目」
アンケートの実施を自社で行うか外部に発注するか?―「実施方法」は調査活動のインフラの決め事です。きっと皆さんも、「何を基準にツールや発注先を選定するとよいか?」「どうしたら社内の承認を得られるか?」などを模索されていることでしょう。
今回のテーマは「アンケートの実施方法」です。主にユーザーアンケートを実施・計画されている方を念頭に置いて、「アンケートツールを選ぶ時の基準」「調査会社を選ぶ時の基準」に加えて、「回答謝礼の種類+運用法」についても解説していきます。
解説するのはリサーチャーの菅原大介氏です。
①内製調査は自由度とコスパに長ける
ウェブアンケートツール選定時のチェック事項
ウェブアンケートツールを選ぶ時には、「自分たちがやりたいこと」の見通しを持つことが大事です。調査内容はもちろん、システム上で反映したいこと、データ上で見たい形式のイメージを持っておきます。そのうえで下記の項目をチェックしましょう。
・質問数上限
→1アンケートあたりの質問数上限。(ライトプランで10問程度になっていることが多い)
・回収数上限
→1アンケートあたりの回収数上限。(規模の大きなサービスで数千単位の回収をしたい場合に確認)
・排他選択肢設定
→選択肢「特にない」などの設定。(できない場合は回答者分岐を多用することになる)
・配信対象者設定 ※調査会社のモニターパネルを使用できる場合
→納品対象となる基本属性や指定条件のデータ項目。
・基本属性データ ※調査会社のモニターパネルを使用できる場合
→納品対象となる基本属性のデータ項目。
・ウェブ集計システム
→調査結果をウェブ上で簡易集計できるシステム。
スキル不問のためチームで使用する場合に便利。
・ローデータ形式
→結果データはファイル等でダウンロード可能か。
エクセルで集計する場合は仕様を確認すること。
・複数アカウント管理
→担当者でアカウント権限を分けることは可能か。
できないことが多いので運用ルール設定が重要。
・セキュリティ基準
→情報システム部門や法務部門が定めているセキュリティ基準を満たしているか。
回答協力の同意設定、データのダウンロードや保管の仕様、アクセス元の情報管理など。
・問合せ対応
→設計・操作・環境・取引などの問合せサポートがあるか。
不明点を2~3日以内に解消できる体制を整えておくこと。
・支払い方式
→法人クレジットカード決済の場合が多い。
即時決済のため、導入月・更新月前に経理部と連携する。
予算編成のポイント(内製型)
内製アンケートでの予算編成のポイントは次のようになります。
*サービス利用料
・サブスク型:毎月実施する場合は予算管理しやすい。
・スポット型:経費意識や使用実態を可視化しやすい。
*使用部門と想定テーマ
・社内で希望を募り、「*本部*部門」のようにまとめる。
・希望部門ごとに代表的な想定テーマを2~3挙げてもらう。
*外注費換算効果
・設計、分析、配信などのコスト効果を外注時比較で試算する。
・導入に際して経費削減努力が伝わりやすくなる。
内製型のみの場合は、会社の中でリサーチの価値がまだ浸透していない状況にあるので、総合的なコストメリットを追求すると良いです。導入メリットにあたるデータの価値は契約期間内に出していくとして、少なくともロス経費である印象は回避します。
内製型が向いているケース
以上の特徴を受けて、アンケートの内製化に向いている企業の特徴は次のようになります。
・設計、実施、分析を社内対応できる
→技術や稼働をある程度は担保できる
・自社ユーザーに自社中心で尋ねたい
→優先確認したいことは自社サービス
・部門ごとに個別にデータを集めたい
→部門別に希望テーマが点在している
・短期間での完結を目指す案件が多い
→起案~報告までタイトなことが多い
・調査予算が決裁されない
→調査の業務委託予算が認可されない
基本的にはコスト面からツールの導入に至るケースがほとんどですが、自由度の高さも内製化の大きな魅力です。自社ユーザーに関しては細かくセグメントができますし、スケジュールも短縮進行することができるので、まず自社の特性を把握しましょう。
②外注調査は信頼度と省力化に長ける
調査会社選定時のチェック事項
調査会社を選ぶ時には、「外せない条件」を吟味することが大事です。外注できると言っても、希望要件が万事噛み合うことはほぼ無いので、スケジュール・費用・回収予測・システムの仕様・調査技能などを念頭に、下記の項目をチェックしましょう。
・スケジュール
→希望スケジュールに対して実施・納品の進行が噛み合うか。
準備期間に数週間必要とする事案も珍しくないため要注意。
・料金体系
→希望予算に対して見積り金額が噛み合うか。
調査スペックを複数パターン準備しておくとセーフティー。
・サービス体系
→実査・集計・分析の各工程でサポートを選択できるか。
案件特性・プロジェクト体制に応じて相談できる関係性を築いておく。
・実査システム
→調査票で準備している設計をシステム上反映できるか。
契約前に調査票をもとに問題ないかすり合わせを行う。
・回答者パネル
→希望するテーマで希望する回答者構成を実現できるか。
数回発注をしてみて、回答意欲や回答精度も吟味する。
・納品データの種類と形式
→実査・集計・分析のそれぞれで、どんなファイルがどんなデータ形式で納品されるか。
納品物イメージに齟齬が出ないようサンプルデータで確認。
・取引サイト
→支払い期日が会社間の取り決めで合うか。
実施期間・検収期間が月をまたぐ展開になることもあるので、スケジュールと併せて要確認。
・営業・分析担当者との相性
→営業担当者・分析担当者と話が合うか。
調査手法やテーマに対してはもちろん、自社のレベル感に合った対応をしてくれるかも重要。
予算編成のポイント(外注型)
外注アンケートでの予算編成のポイントは次のようになります。
*費用計画
・見積書・調査スペックに基づく費用を試算する。
・自社で典型的なパターンを作成しておくと良い。
<例>定量調査120万円(本調査25問・800ss・SCRあり・集計あり・レポートあり)
*アウトプット
・調査で得られる納品アウトプットを列挙する。
(企画書・調査票・集計表・分析レポートなど)
*過去調査実績
・前回実績や過去実績を列挙する。
(実施時期・質問数・サンプル数・レポート枚数・実施意義など)
外注型では、投資対効果が不透明に見えてしまう懸念を常に伴うため、費目・納品物・業務実績を詳細にまとめます。その際、できるだけ数値を記載することを徹底し、*件・*問・*点・*ページのように、業務量が判明しやすいように書きましょう。
外注型が向いているケース
以上の特徴を受けて、アンケートの外注化に向いている企業の特徴は次のようになります。
・担当者業務がディレクター型の組織
→実務の実行よりも管理が多い担当者
・ニュートラルな対象者に実施したい
→属性や条件を生活者一般に広げる時
・報告や公表に向け品質を保持したい
→データが精緻に成形されるべき用途
・調査業務担当者を育成していきたい
→担当者の調査スキルを引き上げたい
・調査予算を編成できる
→プロジェクトで調査費を拠出できる
基本的には経営や事業の意思決定に耐え得るデータ信頼度が求められる組織体での利用が多くなっています。また、調査対象テーマが業界一般・競合他社であったり、基本属性での均等回収が望まれる場合も価値が高いので、組織や用途を意識しましょう。
③謝礼は経費と販促の両面を勘案する
インセンティブの種類
アンケートの回答謝礼には複数のパターンがあり、実施しながら自社にとって最適な種別と経費を見極めていくとよいでしょう。自社でユーザーアンケートを行う調査実施元では、主に下記の4つのインセンティブを用意していることが多くなっています。
a.ポイント・ギフト券(自社のもの)
自社サービスのポイントあるいはギフト券を付与する方法です。アンケートもサービス体験の一環として位置づけて長期的な関係性を志向する企業ではポイントを、調査対象テーマに紐づけて短期的な販促運用効果をねらう企業はギフト券を、それぞれ設定することが多いように感じます。自社の販促戦略がどちら寄りかを確認しましょう。
b.ギフト券(一般のもの)
ネットショッピング一般で使用できるオンラインギフト券を付与する方法です。以前はクオカード(プリペイドカード・金券)が多かったのですが、最近はもっぱら「Amazonギフト券」が主流になってきた印象です。インセンティブとしては非常にキャッチーなので、アンケート内容が一般向けで分量がやや多い時によく設定されています。
c.プレキャンの一環として実施
プレゼントキャンペーンの一環としてアンケートを実施し、インセンティブはキャンペーンのプレゼント(抽選方式など)で付与する方法です。アンケートの実施タイミングとしては合理的であり、回答意欲も高いケースが多いのですが、やや先鋭的なユーザーからの回答が集まりやすいので、回答傾向はよく注視する必要があります。
d.無し(心理的な報酬を含む)
インセンティブを設定しない方法です。アンケートを自社で内製している企業は、調査業務を外注しないくらいなので、そもそも調査の経費に対してシビアな傾向があり、報酬設定オペレーションの煩雑さもあって設定されないケースもあります。
担当者として気になるのは回収率ですが、ユーザーとの関係性が良好であれば、2~3問のショートアンケートなら協力してもらえることが多いように感じます。一方、マーケティング調査として10問超を尋ねる場合は回収予測がかなり難しいです。
併せて近年の取り組みとして、BtoBのアンケートで心理的報酬を謳うケースも見られます。「業界のファクトブックを制作して後日公表する」などの形で調査対象者がアンケートに参加する意義を伝える方法です。BtoBモデルですがご参考までに。
ここまで見てきた回答謝礼のあり方について要点をまとめると、「多人数に一斉付与できる方法」が報酬種別を選択する時の基本であり、「関連経費は顧客育成視点で捉える」ことがアンケート業務を長期的・安定的に運用するコツとなります。
次回のブログテーマは「アンケートプロジェクトの運営チーム編成」
Freeasy担当からお知らせです。次回、第3回(後半)のブログでは、今回の続きで「アンケートプロジェクトの運営チーム編成」をテーマに菅原氏に解説いただきますので、ご期待ください!(6月中旬公開予定)
>>第3回(後半)のブログ「アンケートプロジェクトの運営チーム編成」へはこちらから
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