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SD法とは│アンケート例、調査設計のやり方、分析方法を解説


目次[非表示]

  1. はじめに
  2. SD法とは
  3. SD法とリッカート尺度の違い
  4. SD法による調査設計
  5. SD法調査のデータ分析│「プロフィール分析」と「主成分分析」
  6. SD法にまつわるよくある質問
  7. 無料ダウンロード「SD法による調査設計と分析方法」
  8. おわりに

はじめに

SD法は、企業イメージや、ブランドイメージ測定、製品のイメージ評価などでよく利用されている測定方法です。ここでは、SD法による調査票の作成などの調査設計から、主なデータ分析方法までを、事例とともに丁寧に解説していきます。

この記事でわかること・できること

●SD法の調査票が作れるようになる。
●リッカート尺度とSD法の違いがわかる。
●SD法の調査結果を分析できるようになる。
●SD法に関するマニュアルを無料でダウンロードできる。

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SD法とは

SD法とは、企業イメージや、ブランドイメージ測定、製品のイメージ評価などでよく利用されている測定方法です。「明るいー暗い」「陽気なー陰気な」など、反対の意味を持つ修飾語を両端に配置し、回答者にどちらに当てはまるかを多段階で回答してもらいます。

Semantic differential法の略でSD法と呼ばれており、米国の心理学者のオズグッドによって考案されました。

SD法では、測定対象となるブランドなどをコンセプトと呼びます。
このコンセプトを多角的に捉えるため、反意語のある修飾語(形容詞・形容動詞・副詞など)を多数用意し、それらを両端に置いた多段階の評価尺度(間隔尺度)に対してスコアをつけます。
そして、得られたスコア(数値データ)で各種の分析を行うことになります。

なお、オズグッドはSD法を用いた研究結果により、3つの基本的な意味のまとまり(属性)を見出しました。

SD法とリッカート尺度の違い

リッカート尺度とは、アンケート調査で使用される最も代表的な設問形式です。設問に対して、多段階の選択肢を用いて回答をしてもらうため、回答者がどの程度同意するかを測定することができます。

SD法とリッカート尺度の違いは、リッカート尺度では「はい」か「いいえ」を多段階で回答しますが、SD法では、逆の意味となる修飾語が両端にあり、どちらに当てはまるかを多段階で回答します。SD法のほうが、「どちらに近いか?」を感覚的に選ぶことができます。

リッカート尺度
SD法
「はい」か「いいえ」を多段階で回答する
逆の意味となる修飾語が両端にあり、
どちらに当てはまるかを多段階で回答する
とてもあてはまる
ややあてはまる
どちらとも言えない
あまりあてはまらない
全くあてはまらない
明るい─暗い
積極的─消極的
騒がしい─静かな

SD法による調査設計

調査票の作成

反対の意味を持つ修飾語を両端に配置し、連続的に配置して調査票を作成します。
「【設問】この○○について最もよくあてはまると思うものをお選びください。」の場合の調査票例が下記です。

手順①修飾語対を選択する

調査票作成にあたり、修飾語対を選ぶ上での注意点を挙げます。

表現上の注意点

なじみの薄い表現や漢字は避けます。

《例1》「清々しいー鬱陶しい」という漢字を使うより、全てひらがなで「すがすがしいーうっとうしい」としたほうが好ましい。
《例2》「あつい」とその反意語の場合、「熱いー冷たい」「暑いー寒い」「厚いー薄い」のいずれか?

反意語のある語を選ぶ

否定の形容詞「~ない」は基本的に使いません。

《例 》もし「重い」に対し「重くない」を使った場合、「軽い」という反意語の他に「重くも軽くもない」「重いことが気にならない=わずかに重い」などの意味も含まれることになります。

オズグッドによる3つの基本属性に含まれる項目を盛り込む

評価性では「良いー悪い」「好きー嫌い」、
効力性では「強いー弱い」「大きいー小さい」、
活動性では「熱いー冷たい」「積極的なー消極的な」など。

手順②評価尺度の配列順序を決める

修飾語対を選定したら、それらの配列順序を決めます(調査票の縦方向)。

似通った修飾語対を前後に置かない

例えば「大きいー小さい」の次に「重いー軽い」が配列されていると、回答者が「大きい≒重い」「小さい≒軽い」という類似関係を連想し、二つの尺度を同一と捉えて同じスコアをつける可能性が生じます。
⇒ なるべく同じような属性が重ならないように配置します。

総合評価尺度は最後のほうに

総合評価の意味合いを持つ評価性の属性「良いー悪い」「好きー嫌い」などは、なるべく最後のほうに配置します。

コンセプトの順序性に合わせる

例えば食品をコンセプトとする場合、見た目の印象から始まり、匂い、咀嚼時の食感、味、食後の総合評価など、評価対象はいくつかの過程に分かれます。
この過程の順序に合わせて修飾語対を配置した方が、回答者にとって評価がしやすいでしょう。

手順③評価尺度の段階を決める

評価尺度の配列順序が決まったら、尺度の段階を決めます。

評価尺度は5または7段階

各評価尺度は間隔尺度を使うことが一般的で、通常は5または7段階です。
※9段階以上の場合、解析上の問題はありませんが、回答者の負担が著しく増加します。

順序性と等間隔性

選択肢となる程度の副詞は、順序性とともに等間隔性であることが必須です。

SD法に用いる修飾語対はたくさんあります。

《例 》大まか・細かい、あっさり・こってり、愛好的・嫌悪的、華美な・質素な、緩慢な・敏速な、客観的・主観的、几帳面な・ずぼらな、器用な・不器用な、肯定的・否定的など

下記よりダウンロードできるマニュアル(資料)では、上記例を含む200以上もの修飾語対の例を掲載していますので、是非参考にしてください。

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SD法調査のデータ分析│「プロフィール分析」と「主成分分析」

データ分析の考え方

SD法のデータ構造の概念は下記の通りです。
m個のコンセプトに対し、n個の評価尺度を用いて、k人の回答者に評価してもらった場合、合計で m × n × k 個のデータが得られることになります。
分析するときには、各評価尺度の悪い(小さい)印象を示す極側のスコアを「1」に統一して入力します。

分析をする前に│SD法の調査票例

9項目7段階の評価尺度を用いて行ったSD法の調査票例です。コンセプトは12種類の香水ブランドA~Lです。

分析方法①「プロフィール分析(アウトプットイメージ)」

SD法の最も基本的な分析は、プロフィール分析です。以下はアウトプットイメージになります。
ここではわかりやすくするため、香水ブランド(A,C)の平均値をプロットしました。
(ここでは最大、12コンセプト=ブランドをプロットできます)

分析方法②「多変量解析(主成分分析と因子分析)」

コンセプトが放つイメージを多角的に捉え、少数の要素で表現するというSD法の目的に適しているのが、「主成分分析」と「因子分析」です。

「主成分分析」は、観測できる変数に内包されている情報を、できるだけ損なわずに少数の変数(主成分)に縮約します。経済学や社会学領域で多く用いられています。

「因子分析」は、観測できる変数(現象)の背後に潜んでいて、直接には観察できないもの(因子)を探り出します。心理学領域で多く用いられています。

上図:主成分分析と因子分析(国語の文章要約問題にたとえた場合)

主成分分析とは​

主成分分析では、多くの変数を相関行列または分散共分散行列を用いて、​少数の合成変数に縮約しますが、この合成変数を「主成分」と呼びます。​

第1主成分は分散が最大(ということは​説明力が最大=情報量が最大)の主成分​のことで、第2主成分、第3主成分となる​に従って分散が小さくなります。​
各主成分同士は互いに無相関(独立)で​あることが、主成分分析の特徴です。​

もし、第1主成分だけで元のデータ群が持ってい​る情報の大部分を表せれば、それ以上の主成分を抽出する必要はありませんが、​そうでない場合、第2主成分以下を抽出することになります。​

主成分は観測変数の数だけ求めることができます(9つの場合は9主成分まで)。​しかし、全ての主成分を使った場合、縮約はなりませんし、何よりもひとつ​ひとつの主成分の情報量は少ないので使うことはありません。​

主成分分析のより詳しい説明(固有値と寄与率や、主成分負荷量と主成分得点の解説)のほか、アウトプットイメージについては、資料内にてご紹介しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

\主成分分析のより詳しい説明を見る/

SD法にまつわるよくある質問

Q:SD法はどんな場面で活用されますか。

SD法は元々、官能評価で用いられることが多く、現在も飲食品の新製品開発、​品質改善などの目的で使われています。その感覚的な性格から、企業や商品​・サービスのブランドイメージ測定など、利用範囲が広がってきました。

Q:SD法の最大のメリットとデメリットは何ですか。

SD法の最大のメリットは、選択肢における〝両端の対称性〟が鮮明であるということです。
​逆の意味となる修飾語が両端にあり、しかも段階ごとの数字が表示されて​いれば「どちらに近いか?」を感覚的に選べるので、感性的なデータを取得​し分析する際に適しています。​

一方、デメリットとしては、オズグッドによる3つの基本属性に含まれる項目​を盛り込む必要があるなど、調査設計時に入念さが求められることです。​

主成分分析結果の例で明らかなように、第1主成分の意味は総合評価を表す​「評価性」の内容が一般的であり、このような結果を導出するためには、​評価尺度の項目は何でもいいというわけにはいきません。​

Q:評価尺度の項目数の目安はありますか。

オズグッドの実験では50まで用いられていましたが、回答者への負担を軽減しモチベーションを維持するため、10~30程度が現実的です。

無料ダウンロード「SD法による調査設計と分析方法」

本記事で解説した「SD法による調査設計と分析方法」についてまとめた資料は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。

おわりに

ここまで「SD法による調査設計と分析方法」について解説いたしました。難しい用語もたくさん出てきますが、1つずつの用語と手順をしっかりと理解し、実りのある調査・分析となりますように願っております。



【参考文献】

『数理的感性工学の基礎 : 感性商品開発へのアプローチ』(長沢伸也・神田太樹共編、海文堂出版、2010年9月)、『マーケティングリサーチ入門』(高田博和 他著、PHP研究所、2008年12月)、『ウルトラ・ビギナーのための SPSSによる統計解析入門』(小田利勝著、プレアデス出版、2007年6月)、『SD法によるイメージの測定 : その理解と実施の手引』(岩下豊彦著、川島書店、1983年1月

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