調査報告会の進め方(共有・成果編)参加者アンケートで成果を可視化する方法
調査報告会の参加者アンケートとは何か
ここでは、調査報告会の進め方(共有・成果編)について解説していきます。
※本記事は菅原氏の書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。
│概要

調査報告会の参加者アンケートとは、調査報告会の実施を経て参加者のテーマ理解度を確認したり、業務での活用方法をフィードバックしてもらう社内アンケートです。(イベントの満足度よりもこうした理解や活用の程度を重視します)
参加者アンケートを実施すると参加者の感想・意見を可視化することができます。報告会当日の中で参加者の声を満遍なく聞くのは難しいことが多く、アンケートを通じて組織内のコミュニケーションをキープアップしていきます。
アンケートの結果データは、担当者が自身の業務総括を行うにあたり、ステークホルダーからの評価として活用します。役に立った情報や提案の声を参照しつつ、調査範囲や開催方式などについてチューニングするかを検討します。
また副次的なメリットとして、組織内でリサーチの活動を前向きに評価してくれたり、率先してデータを活用してくれる熱量の高い仲間を見つけることができます。こうした仲間の存在は実務をスムーズに進める原動力になります。
│種類
調査報告会の参加者アンケートのパターン展開は複数あり、ここでは私自身が使う2種類を紹介します。

1.定性評価版
- 自由回答形式
- 内容面、運営面への評価を参照する
- 良かった点、悪かった点が回答者の言葉でわかる
- 回答者の熱量がわかる(高い場合も、低い場合も)

2.定量評価版
- 複数回答形式
- トピックごとのデータに対する評価を参照する
- 話題や観点への関心度・共感度が可視化される
- Miroなどのホワイトボードツールで行う、付箋への投票をアンケート上で行うイメージ
参加者アンケートの代表的な質問項目としては、「満足度」を尋ねる形式が一般的であり、セッションごとに5段階での尺度評価(単一回答)とその評価理由(自由回答)で質問を構成するのがオーソドックスな設計です。(報告会に限らずイベント全般で同様)
しかしこの設計方法の下では、調査テーマを限りなく現場要望に寄せるなどのテクニックによってスコアが上下したり、スピーカーやスライドの出来によって評価が偏ることもあり、こと調査報告会の参加者アンケートでは個人的にあまりおすすめしていません。
詳細は以下に続く構成要素の項目で説明しますが、定性評価版ではシンプルに企画・運営への評価とデータの活用可能性を尋ねます。定量評価版では提供価値を意思決定へとつなげるために、データ単位で投票を行いステークホルダーの関心事項を可視化します。
※全体の質問数(回答負荷)を考慮しつつ定性・定量の質問をMIXする設計もおすすめです。
│調査報告会の参加者アンケートを構成する要素
調査報告会の参加者アンケートの構成要素(質問項目)は以下のようになります。

定性評価版
1.調査結果で新たにわかったこと(自由回答)
- データや説明会を通じて得られた気づき(新たに得られた知識や技能)
2.調査結果でわからなかったこと(自由回答)
- データや説明会ではわからなかったこと(もっと知りたいと思ったこと)
3.業務に活かすビジネスアイデア(自由回答)
- 今後の企画や活動につながりそうな情報(自身の業務、社内の業務)
4.企画・運営へのフリーコメント(自由回答)
- リサーチの活動への感想や要望

定量評価版
1.印象に残ったファクト(複数回答)
- 報告会で共有した対象者の発話・行動に関する情報
2.印象に残ったインサイト(複数回答)
- 報告会で共有した分析者の考察・示唆に関する情報
3.印象に残ったソリューション(複数回答)
- 報告会で共有した戦略(方針)・戦術(打ち手)に関する情報
4.印象に残ったアウトプット(複数回答)
- 報告会で共有した資料(分析成果物)・調査(調査手法に紐づく成果物)に関する情報
調査報告会の成果を可視化したいケース
「組織要請に応えた調査活動なのに業務評価が低い…」
⇒この悩みに一枚で答えるためのアウトプット

│1.目標設定に意思決定への寄与が入っているケース
リサーチ担当者の目標設定には、「業務を通じて重要な意思決定に寄与すること」という項目がしばしば入っています。ところが、リサーチの業務成果は遅効性であることが多く、当期内に最終成果を報告するのが難しいものです。
そもそもリサーチ活動自体が実査や分析に一定の期間を要するものであり、そのうえ意見や提案が採用されてプロジェクトで何らかの成果が出るまでにはさらに時間がかかります。しかしこの状況は上長にはあまり理解されません。
│2.目標設定に複数部門での活用が入っているケース
リサーチ担当者の目標設定には、「データが複数の部門で活用されていること」という項目がしばしば入っています。ところが、調査データは特定の調査目的に沿ったデータなので、従業員皆に活用してもらうのは難しいものです。
そうすると、複数部門での活用が証明できず、「狭小なことをやっている」という見え方になってしまいます。データが広がらない真因は組織としての環境設定にあるのですが、個人としてできていない評価になってしまいます。
調査報告会の参加者アンケートの作り方

│定性評価版
1.データ・分析の価値を確認する
- 事業ドメイン理解、商品理解、ユーザー理解、競合動向理解についての意見→組織内で新しく感じられた知識や概念を確認する→分析・提案の中で評価されたポイントを把握する
2.関連する対応ニーズを確認する
- 調査テーマで設定した範囲内でわからなかったという意見→追加で分析を行う
- 調査テーマで設定した範囲外でわからなかったという意見→今後の参考にする
- 業務への具体的な落とし込み方についての意見→個別対応とする
3.具体的なアクションを認識する
- 商品企画、サービス企画、販促企画についての意見→企画や改善の意向を把握する
- デザイン、制作・開発についての意見→制作や改善の意向を把握する
4.報告会の出来や精度を振り返る
- 調査テーマについての意見→情報の目新しさ、網羅性などを参考にする
- 資料・データについての意見→情報量、活用のしやすさなどを参考にする
- 開催形式についての意見→開催時間帯、所要時間、関連する活動のタイミングなどを参考にする
- 説明レベルについての意見→説明方法、用語のわかりやすさなどを参考にする

│定量評価版
1.共感を集めた価値観・判断軸を確認する
- 関係者の皆が注目するファクト・インサイト→妥当性と意外性の両面から結果を参考にする
2.支持を集めた提案・アイデアを確認する
- 関係者の皆が気になっている企画・施策→戦略・戦術の討議の時に初期評価として活かす
3.共感を集めたユーザーモデルを確認する
- 調査対象者単位(N1単位で分析した個票)の評価→ターゲットの軸となるユーザー像を参考にする
4.評価を集めた成果物・データを確認する
- トピック単位、フレームワーク単位の評価→参照・活用価値が高い.分析成果物を参考にする
調査報告会の参加者アンケートの活用方法

│1.調査の実施価値それ自体への他者評価を確定できる
参加者アンケートを取ると、調査活動の中間成果を言語化することができます。意思決定に至るまでには、データが生成され、理解される工程を挟みます。アンケートの質問を通じて、誰に、どのように届いたのかを確認できます。
リサーチ担当者にとって最も怖い事態はプロジェクトの与件そのものが変わるケースですが、アンケートで調査データへの評価の声を集めておけば、プロジェクトの状況にかかわらず自身の努力による評価を形成できます。
│2.調査データを評価してくれた部門や人を可視化する
参加者アンケートを取ると、調査データが響いた部門や人の存在を可視化できます。リサーチ担当者はここで生まれた縁を自己の業務評価の際にアピールします。組織の一員として勉強になった、という従業員もいることでしょう。
また自由回答のコメントから熱量が高い人が見つかることもあります。この人とは同じ仕事で協業する時には互いを信用した状態でスタートでき、周りの同僚にも「リサーチを担当している人」として紹介してもらえたりします。
調査活動の価値を、組織に残すために
調査報告会の価値は、実施したかどうかではなく、組織にどのような理解や行動が残ったかで決まります。
Freeasyでは、調査設計から回収、レポート作成、報告、評価までを一貫して行うことができます。本記事で解説した参加者アンケートの考え方を、実務でそのまま活かしたい方は、Freeasyのサービス紹介資料もご参考にしてください。
本シリーズで学べるリサーチ実務・アウトプット活用ノウハウ
本シリーズでは、調査結果の集計・分析からレポート作成、報告会での共有・成果創出までを「実務フローとして体系化」し、調査活動の価値を組織内に定着させるための代表的なアウトプットと、その活用方法を解説しています。
各記事はそれぞれ独立して読める構成になっていますが、 シリーズ全体を通して読むことで、調査結果を「出す」だけで終わらせず、「伝え、活かし、評価につなげる」までの一連の業務を実務レベルで理解できるよう設計されています。




