デシル分析(顧客分析)を解説!手法、エクセル手順について
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はじめに
デシル分析について、基本的な意味、同じような目的を持つ分析手法との違いや、Excelでの実践方法を、事例を交えながら分かりやすく解説していきます。
この記事を読んで分かること、できるようになること
●デシル分析の分類方法、目的、メリットやデメリットを正しく理解できる。
●エクセルを使ったデシル分析のやり方を学び、習得することができる。
●デシル分析とRFM分析・ABC分析の違いを理解できる。
●デシル分析のマニュアル(資料)を無料でダウンロードできる。
デシル分析とは
デシル分析とは、顧客を累計購入金額の高い順から10等分(「デシル1」から「デシル10」)に顧客分類する、顧客分析の手法の一つです。デシルの語源はラテン語の「Deci」で「10等分」を意味します(1リットルの10分の1が、1dl)。
デシル分析の目的は、10分類された顧客層ごとに効果的なマーケティング施策を行うことです。
デシル分析の典型的なアウトプットは、下記のような、棒と折れ線の組み合わせグラフです。作成方法は後述します。
デシル分析とRFM分析の違い
顧客分類をおこなう代表的な分析といえば「RFM分析」です。
RFM分析では、「Recency(最新購入日からの経過期間)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(累計購入金額)」という3つの指標から、顧客を「新規」「優良」「離反」と細かく分類し、それぞれの顧客層に対するマーケティング施策を練ることが目的です。
一方、デシル分析の指標は、顧客の累計購入金額という1つの指標のみ、しかも分類は10等分でとてもシンプルです。
ゆえにRFM分析のほうがきめ細かな顧客の分類が可能ではありますが、分析のリソース(予算、時間など)に制約がある場合は、デシル分析を行えば、大きな枠で顧客像を把握することが可能となります。
なお、RFM分析を行う前段階として、デシル分析を行うのもいいでしょう。デシル分析では、RFM分析の「Recency(最新購入日からの経過期間)」は使わないものの、分析に使う顧客データの「Recency(最新購入日からの経過期間)」を決めておくこともあります。例えば後述の「デシル分析のやり方」では、半年間に限定しています。
メリットとデメリット
デシル分析の最大のメリットは、短時間かつ簡単に分析ができることです。指標は購入金額だけのため、迅速な意思決定が可能となります。
さらに、Excelを使う場合に煩雑な操作が不要な点もメリットです。
デシル分析のデメリットは、指標となる変数が一つだけのため、精度が高く顧客へのきめ細かなマーケティング施策に効果的な「RFM分析」には及ばない点です。
デシル分析のマーケティング施策例
デシル分析の結果をどのようにマーケティング施策に反映させるかは、企業・商品・サービスによって千差万別であり、「正解」はありません。以下で紹介する施策例はあくまで参考となります。
上位顧客(デシル1~3)
限定的な特別割引や、VIP待遇のロイヤリティプログラムの提供で、リピート率アップを狙う。
中位顧客(デシル4~7)
次回の購入を促す割引の提供や、新商品を案内することで、再購入を促進する。
下位顧客(デシル8~10)
リマインダーメールやハガキを送付し、再購入の場合の割引などを訴求し、離脱を防ぐ。
Excelを使ったデシル分析のやり方
デシル分析の手順
デシル分析には、Excelが使えます。煩雑な操作はなく、例えば分散分析で使う“分析ツール”や、ロジスティック回帰分析で使う“ソルバー”、判別分析で頻繁に使う複雑な計算式や関数などは、デシル分析では使いません。
手順は大きく分けて4つになります。
まず、データを整形するフェーズからスタートし、次にデシル分析の唯一の指標である「累計購入金額の高い順(降順)」でデータをソートします。
ソートしたデータは、「デシル1」から「デシル10」までの10等分に分類し、最後にグラフを作成してビジュアル化し、完了です。
1.データの整形
まず、データの整形から始めましょう。RFM分析との違いを実感することも考慮し、ここではRFM分析で使うデータを用いて説明していきます。
下記のExcelの購入データは、「オーダーID」「会員ID」「累計購入金額」「購入頻度」「最終購入日からの日数」という5つの変数で構成されています。
このうちRFM分析で使うのは、「累計購入金額(M)」「購入頻度(F)」「最終購入日からの日数(R)」ですが、デシル分析で使う変数は「累計購入金額(M)」の1つだけです。
この購入データは合計1,000名ですが、全てのデータを分析するのではなく、最終購入日から半年間のみのデータ(410名)を分析します。累計購入金額が著しく高くても、5年前に一度だけ購入したような離反顧客を分析対象から外すことで、デシル分析の大きなデメリットを回避することができるからです。
2.降順ソート、3.デシル分類
データの整形後、「累積購入金額」の高い順にデータをソートします。そして、410名分のデータを10等分し、最終列に41名を1グループとして「デシル1」から「デシル10」まで、1から10の数字を入力します。
4.グラフ作成によるビジュアル化
Excelシートの「挿入」タブで、分析するデータの全範囲を指定した後、「ピボットテーブル」をクリックします。
ピボットテーブルのダイアログボックスが表示され、ピボットテーブルの出力先を任意の「場所」に設定し「OK」をクリックすると、ピボットテーブルのフィールドが表示されます。ここで行を「デシル」、値を「合計/累計購入金額」に設定します。
ピボットテーブルで、「デシル」ごとの累計購入金額が算出されました(左下の図)。
次に、ピボットテーブルとは別のセルに、右下の図のような表を作成していきます。
累積購入金額は、ピボットテーブルのデータをコピーし「値貼り付け」します。
そして累積購入金額をもとに、デシルごとの累積購入金額比率と、それらを足し上げた累積購入金額比率(足し上げ)を算出します。結果、右上のような表ができあがります。
続いて、できあがった表をもとに、「『デシル』ごとの累計購入金額」が縦棒、「累積購入金額比率(足し上げ)」が折れ線、の複合グラフを作成します。
分析結果(折れ線の複合グラフから分かること)
「累積購入金額比率(足し上げ)」は、「デシル1」で5割弱、「デシル2」までで6割、「デシル3」までで7割、「デシル4」までで8割という結果となりました。
この結果では、上位顧客は「デシル1」のみとの判断も成り立つでしょう。
デシル分析にまつわる、よくある質問
Q:デシル分析とABC分析の違いについて教えて下さい。
1つ目の違いは、デシル分析が「10分類」、ABC分析は「A・B・Cの3分類」という点です。
2つ目の違いは、デシル分析では顧客数を均等に10分類するのに対し、 ABC分析では累計購入
金額に応じて割合を決めることです。
なお、デシル分析とABC分析には、指標が累積購入金額ただ一つという共通点があります。
Q:デシル分析で使用する顧客データは、予め「直近の購入期間別」に分けておく必要はありますか。
必ず期間別に限定する必要はありません。
ただし期間を限定しない場合、たとえ高額購入の履歴があってもそれは数年前のことで、現在は離反してしまっている可能性もあります。
それでもまず大まかな傾向だけでも把握したい場合には、期間を限定することなくデシル分析を行うこともあります。
※前述のエクセルの手順内で示したデシル分析例では、予め「最新購入日からの日数が半年間の購入者のみ」に限定してデータを作成しました。
Q:Excel以外の解析ソフトでも、デシル分析を行うことができますか。
はい、できます。Pythonもよく使われています。
操作方法はExcelとは大きく異なりますが、データを累計購入金額の高い順から10等分した後、ソートをして「デシル1」から「デシル10」に分類する手順は、Excelと変わりません。
無料ダウンロード『デシル分析マニュアル 』
本記事で解説した内容をまとめた資料「デシル分析マニュアル~デシル分析の基本的な仕組みとExcelを使った分析事例~」は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。
おわりに(まとめ)
最後に、ここまで解説してきた内容をまとめました。今一度の確認に活用してください。 |
デシル分析とは、全ての顧客に一律にマーケティング施策を実施するのではなく、累計購入金額の高い順に顧客を10のデシルに分類し、デシルごとの貢献度などを検討して、効果的なマーケティング施策を行うことを目的とした、短時間かつ簡単な分析のことです。
顧客分類をおこなう代表的な分析としては、他にも、【RFM分析】や【ABC分析】があります。
「Recency(最新購入日からの経過期間)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(累計購入金額)」という3つの指標で顧客を「新規」「優良」「離反」と細かく分類する【RFM分析】に対して、デシル分析で使用する指標は「顧客の累計購入金額」一つのみであり、さらに分類は10等分と、とてもシンプルです。
一方、指標が一つのみという共通点がある【ABC分析】との違いは、3分類であること、分類がデシル分析のように等分ではないこと、の2点です。
デシル分析の最大のメリットは、短時間かつ簡単に分析ができることです。デメリットは、指標が一つだけということにより、顧客へのきめ細かなマーケティング施策に役立つRFM分析には及ばないことです。
Excelを使ったデシル分析の手順は、まず始めにデータを整形した後、累計購入金額の高い順(降順)でデータをソート&ソートしたデータを10等分し「デシル1」から「デシル10」までに分類、そして最後にグラフを作成しビジュアル化します。
集計ではピボットテーブルを使いますが、分析ツールもソルバーも使う必要はなく、煩雑な操作はありません。