
クロス集計とは?集計表の作り方と活用事例
この記事でわかること
- クロス集計の基礎を理解できる
- エクセルの関数、ピボットテーブルを使ってクロス集計ができるようになる
- 属性別の傾向をExcelで可視化する方法がわかる
- 実務におけるクロス集計の活用シーンを知る
集計の全体像
アンケートやネットリサーチで回収した回答データ(結果)を確認するためには、「集計」という作業が必要となります。よく活用される集計方法は「単純集計(GT集計)」と「クロス集計」の2種類です。
まず初めに行うのは「単純集計」です。各設問における選択肢ごとの回答数や割合を単純にそのまま集計して表したもので、全体傾向を把握するのに適しています。
しかし、単純集計だけでは「誰がどう答えたか」という属性別の違いまでは見えてきません。そこで活用したいのが「クロス集計」です。
クロス集計では、性別や年代などの属性と回答結果を掛け合わせることで、より深いインサイトを得ることができます。
クロス集計とは
クロス集計とは、複数の属性(性別・年代・婚姻状況・子供の有無など)と回答結果を掛け合わせて集計する、集計方法です。2つの質問項目を「クロス」させて表を作成し、相互の関係を明らかにできます。
クロス集計の種類
全体をベースとしている単純集計の結果をどう作業するかによって、種類が分かれます。
①属性別に、細分化して集計する(例:性別、年代別) ②他の設問と掛け合わせて、細分化して集計する(例:Q1での回答者ごとに、Q2での回答傾向を把握する) |

クロス集計によって分かること
例えば「自社の商品Aは、男性20代がメインユーザーである」という仮説を検証したい場合、POSなどの販売データだけでは、購入をしていない他の性年代の人達との、定量的な比較はできません。
そこで、定量調査で商品Aの「好意度・購入経験・購入意向」を、「性年代別」に測定・集計します。この集計自体がクロス集計であり、さらに「好意度」という3つ目の変数を測定すると、3重クロス集計になります。
クロス集計をおこなうことで、単純集計では見えなかった「属性ごとの違い」や「傾向」が明らかになり、ターゲット分析や施策の立案に役立てることができます。つまり、マーケティング調査においては「分析=クロス集計」と考えても差し支えありません。
クロス集計表の構造と設計ポイント
クロス集計表の基本構造
クロス集計表は、縦軸に「属性(性別・年代など)」、横軸に「設問の選択肢(商品A〜Dなど)」を配置し、それぞれの組み合わせに対する回答数や構成比(%)を表示する形式です。
表側(縦軸)とは?
クロス集計表の「表側(縦軸)」には、回答者の属性情報を配置します。
代表的な属性には、性別・年代・婚姻状況・居住地域・職業などがあり、これらを軸にすることで「どんな人がどのように回答したか」を分析できます。
属性は調査目的に応じて選定する必要があり、例えば「購買傾向の違い」を見たい場合は「性年代」や「家族構成」などが有効です。
表頭(横軸)とは?
クロス集計表の「表頭(横軸)」は、設問の選択肢を並べる軸になるため、アンケートの設問に対する選択肢を並べます。
例えば、「最も好きな商品は?」という設問に対して、「商品A」「商品B」「その他」などの選択肢が横方向に並びます。
この軸と表側の属性を掛け合わせることで、属性ごとの回答傾向が明らかになります。
出力形式とは?
クロス集計の出力には、主に以下の2種類があります。
- 実数(n数):各セルに表示される回答者数。(例:男性20代で商品Aを選んだ人=35人)
- 構成比(%):全体や属性内での割合。(例:男性20代のうち商品Aを選んだ人=35%)
実数は「母数の把握」に、構成比は「傾向の比較」に適しており、両方を併記することで分析の説得力が高まります。違いを理解して使い分けましょう。
クロス集計軸の設計ポイント
クロス集計軸は、調査設計段階で決めておくことが理想です。調査目的に合った属性を選ぶことで、必要なデータを的確に抽出でき、分析の精度が向上するからです。
また、属性ごとの回答者数が少ない場合は「参考値」として扱うなど、サンプルサイズにも注意が必要です。
クロス集計を行う際の注意点
クロス集計は属性別の傾向を把握するための有効な手法ですが、正確な分析を行うためにはいくつかの注意点があります。
1.属性ごとのサンプルサイズに注意する
クロス集計では、性別や年代などの属性ごとに回答者数が分かれるため、一部の属性でサンプル数が極端に少ない場合、結果の信頼性が低くなります。
一般的には、各属性カテゴリに最低30人以上の回答者がいることが望ましく、それ以下の場合は「参考値」として扱うなどの配慮が必要です。
2.ローデータの前処理を丁寧に
設問の結果をそのまま集計する単純集計とは異なり、「年齢を、年代に変換する」・「複数回答をダミー変数化する」など、クロス集計では、集計軸に合わせたローデータの加工が必要です。この前処理が不十分だと、関数の誤動作や集計ミスにつながるため、ローデータの整備はクロス集計の土台と考えましょう。
Excelで実施する際、具体的には、集計軸となる項目の列を加えます。
単純集計表の「年代」の場合は「COUNTIF関数」を使い年齢から算出しますが、クロス集計では表側の集計軸となるため、あらかじめデータの列を作成します。

集計軸となる項目の列に関数を入力します。

「年代」「性年代」「婚姻状況(性別)」「子供の有無(性別) 」の4つの集計軸となる項目の列を加えたことで、3重クロス集計表を作る準備ができました。

以降のクロス集計表の作成手順は、別記事で解説しています。下記よりご覧ください。
🔗「手順2.シングルアンサー(SA/単一回答)のクロス集計をする(Q1)」に続く
3.関数の使い分けを理解する
COUNTIF関数は「単一条件」、つまり1つの条件でセルを数える際に使います。
COUNTIFS関数は「複数条件」、つまり複数の条件を組み合わせてセルを数える際に使わます。
クロス集計では、回答形式に応じて関数を使い分けます。基本は、単一回答(SA)には COUNTIFS 関数を、複数回答(MA)には COUNTIF 関数を使うのが一般的です。
■単一回答(SA):属性(例:性別)と回答(例:「購入したい」)という複数条件の組み合わせを集計するため、COUNTIFS(S=複数条件対応)を使います。
■複数回答(MA): 各選択肢(例:「商品A」「商品B」)が1列ずつ分かれており、1列=1条件で集計する場合は、COUNTIFを使います。ただし、属性条件も同時に絞り込みたい場合はCOUNTIFSを使います。
「どの列を基準に、何を掛け合わせるか」を意識して関数を使い分けることが大切です。属性と選択肢の組み合わせ指定を誤ると、集計結果がずれる原因になるため注意が必要です。
4.グラフ化する際の構成比の扱い
集計結果の構成比(%)をグラフ化する場合、各カテゴリの合計が100%になるようにデータを整える必要があります。
特に、単一回答と複数回答では合計値の意味が異なるため、どの母数を基準に%を算出しているかを明確にしておきましょう。
※詳しくは後述参照
5.ピボットテーブルとの併用で検証精度を高める
関数で作成したクロス集計表は、ピボットテーブルで再集計して結果を照合することで、計算ミスの発見や、数値の補完が可能です。
特に複雑な条件が絡む場合、ピボットテーブルを併用することで、集計の柔軟性と正確性が高まります。
※詳しくは後述参照
クロス集計のグラフ化と可視化
クロス集計表は、グラフ化することで視覚的に理解しやすくなるというメリットがあります。特に社内報告やプレゼン資料では、グラフによる可視化が説得力を高める要素になります。
帯グラフ(100%積み上げ横棒グラフ)
帯グラフとは、各属性の構成比(%)を横棒で表現し、全体が100%になるように積み上げたグラフです。
属性ごとの回答傾向を比較するのに適しており、例えば「性年代別に商品A〜Dの選択割合を比較する」といった場面で活用されます。
Excelでは「挿入」→「グラフ」→「100%積み上げ横棒」を選ぶことで作成できます。
軸の反転や色の調整、ラベルの追加などを行うことで、より見やすく整えることができます。
折れ線グラフ
折れ線グラフは、時間の経過に伴う構成比の変化、例えば「月ごとの回答割合の推移を示したい」や「年代別にオンラインショップの利用傾向を比較する」といった場合に、構成比の推移を折れ線で表現することで視覚化でき、違いが明確になります。
Excelでは「挿入」→「グラフ」→「折れ線」を選択し、構成比データを元に作成します。凡例やラベルの配置、色のトーン調整などを行うことで、視認性が向上します。
グラフ化のポイント
- 構成比(%)を使うことで属性間の比較がしやすくなる
- グラフの種類は目的に応じて選ぶ(帯グラフ=構成比比較、折れ線グラフ=傾向の推移)
- 割合の整合性が視覚的な理解に直結するため、以下のように視認性を高める工夫が重要
・軸の反転(必要に応じて、項目の並びを見やすくする)
・色の調整(カテゴリーごとに一貫性を持たせる)
・ラベルの追加(%や項目名を明示して誤解を防ぐ)
クロス集計表の具体的なグラフ化手順は、別記事で解説しています。下記よりご覧ください。
🔗手順4.シングルアンサーのクロス集計表をグラフ化する(Q1)
エクセル(関数)を使ったクロス集計のやり方
クロス集計は、エクセルを使っておこなうのが一般的です。下記は、アンケート集計結果のローデータをもとに完成した、クロス集計表のアウトプットイメージ例です。

エクセルで「関数」を使ったクロス集計のやり方は、別記事で解説しています(図解付き)。下記よりご覧ください。
🔗Excelで集計をする>クロス集計表の作成方法
ピボットテーブルを使ったクロス集計
関数によるクロス集計とともに、ピポットテーブルによるクロス集計も一般的です。
関数で集計後、加えてExcelのピボットテーブルを使えば、関数で算出したデータの検証にもなり、おすすめです。
ここでは、ピボットテーブルの具体的な手順を解説します。
なお、単純集計表を作る場合も、クロス集計表を作る場合も、ピボットテーブル作成手順のうち最初はまったく同じです。
1.「挿入」タブをクリック 2.ローデータ(集計したいデータ)の中にカーソルを置く 3.「ピボットテーブル」をクリック 4.「テーブルまたは範囲から(T)」を選択 5.表示されたダイアログで「OK」をクリック → 新しいシートにピボットテーブルの枠が作成される |

■「単一回答」のケース
「行」に設問Aを入れ、「列」に設問Bを入れます。
→「値」にいずれかの項目を入れて「件数(カウント)」を設定。
→ 設問A×設問Bの関係性を見ることができます。

■複数回答のケース
ダミーデータ「0,1」の値「1」の合計を算出しています。

複数回答の続き、「子供の有無(性別)」です。

参考までに、単純集計表の場合は、
フィールドリストで「行」に設問を1つだけ入れる。
「値」にも同じ項目を入れて「件数(カウント)」を設定。
→ 各選択肢の度数・比率がわかる。
つまり、ピボットテーブルの作成までは共通で、行・列・値の配置をどうするかで単純集計かクロス集計かが決まります。
実務での活用事例と次のステップ
クロス集計の主な活用シーンは以下の通りです。
商品開発|コンセプト調査の集計
商品を市場にリリースする前に、対象者(消費者)へ複数のコンセプト案(基本的な概念、企画の骨組み、方向性)を提示し、各案への反応を知るためにおこなう「コンセプト調査」のアンケート集計に使われます。
購入意向・新奇性・独自性などの各評価項目ごとにクロス集計で評価を整理し、ターゲットとしている消費者に刺さっているコンセプトはどの案なのかを、しっかりと見極めることに活かされます。
広告施策|効果測定ファネルの比較と活用
広告出稿後に行う広告効果測定では、アンケート結果をもとに、広告の認知から商品購入と商品情報シェアに至るまでのファネル(例:広告認知 →興味・関心→理解→購入→共有)を作成します。
例えば、“ ファネルの各段階の通過率”を、年齢・性別・地域などの属性別に比較する際に、クロス集計を用いることで、「広告認知 →興味」や「理解→購入」などの各移行率をセグメントごとに可視化することができます。
サービス・接客業|満足度インパクト分析の深堀り
サービス・接客業において「どの要素が顧客満足に影響しているのか」を探る“満足度インパクト分析 ”でも、クロス集計がとても役立ちます。
例えば「スタッフの対応満足度」と「総合満足度」をクロス集計すると、「対応に満足している人ほど総合満足度も高い」といった傾向が見えてきます。このことから、どの要素が満足度を左右しているかを直感的に把握できます。
さらに、性別・年代などの属性別にクロス集計を行うことで、「若年層は価格重視」「年配層は接客重視」といったターゲットごとの特徴も明らかにすることができます。
こうした結果をもとに、重点的に改善すべきポイントを見極めることが、満足度インパクト分析の第一歩となります。
関連:サービスと品質の評価に使われる「SERVQUAL(サーブクオル)モデル」とは何かを知る
広報・PR|プレスリリースに効く調査データの見せ方
アンケート調査結果をプレスリリース記事で発信することで、自社や商品の認知度向上、さらにはブランドイメージの向上に繋げることができます。特に、調査結果をそのまま提示するだけでなく、性別・年代・地域・職種などの属性別にクロス集計を行うことで、回答傾向の違いや特徴を可視化できる点がポイントです。
例えばある設問に対して「認知は高いが、関心・興味が低い」などのギャップが見える場合、その傾向がどの層で顕著なのか?を把握でき、「どの層」に「どのような切り口(情報発信)が必要か?」を検討・判断するための貴重なきっかけになります。
クロス集計は単なるデータ整理ではなく、調査結果にストーリーを与え、メディアや読者に響く広報コンテンツ作りを支援する有効な分析手法の1つともいえます。
「クロス集計」にまつわる、よくある質問
Q:単純集計とクロス集計の違いを、簡単に分かりやすく教えてください。
単純集計は、どの設問に何人の人が回答したのか、その比率は何パーセントか、という全体の結果を単純にそのまま表す集計方法といえます。
一方「クロス集計」は、2つの質問項目を「クロス」させて表を作成し、相互の関係を明らかにするための集計方法です。
Q:3重クロス集計などの「多重クロス集計」について、集計例や注意点を教えてください。
多重クロス集計とは、複数の変数を掛け合わせて集計する方法です。
例えば、「性別」「年代別」「設問1(購入したい)」と3つの変数を掛け合わせると「3重クロス集計」になります。さらに「婚姻状況」も加えると「4重クロス集計」となります。
変数が増えると、集計対象が小さなグループに分割されるため、分析に耐えられるn数に達しない場合が多い点は、注意しましょう。
Q:クロス集計と相関分析の違いを教えてください。
クロス集計と相関分析は、どちらもアンケート結果などのデータを分析する手法ですが、目的や使い方が異なります。
例えば、クロス集計では、下のグラフのように「好意度の各レベルごとに、各香味特性がどの程度影響しているか」を把握できます。
一方、相関分析では、「好意度そのものと香味特性の関係」、さらに「香味特性同士の絶対的な相関関係」を明らかにできます。
クロス集計は分析の基本ではありますが、相関関係を示すものではない、といういがあることを理解しておきましょう。
以下の表に、クロス集計と相関分析の違いをまとめました。
分析手法 | クロス集計 | 相関分析 |
簡単に言うと… | 誰がどう答えたか、を知る | どの項目同士が関連しているか、を知る |
主な対象 | 属性×選択肢(カテゴリーデータ) | 数値データ同士 |
目的 | 属性別の傾向を把握する | 関係性の強さを測る |
出力例 | 実数、構成比(%) | 相関係数(-1~+1) |
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おわりに
ここまでクロス集計について詳しく解説してきました。基本を理解できれば、実際の集計・分析作業は、実施していくうちにだんだん慣れて、こなすスピードもアップします。件数をこなしていくことで、マスターしていきましょう。
【参考文献】
『Excelで学ぶ統計解析入門』(菅民郎著、オーム社、2016年5月)






