
abc分析とは?目的・エクセルのやり方と活用例を解説
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はじめに
abc分析は、マーケティングや在庫管理、経営戦略の立案など、様々な場面で活用できる分析方法です。
この記事を読んで分かること、できるようになること
●abc分析の基本、業界別の活用場面、デシル分析やRFM分析との違いを理解できる。
●abc分析のエクセルを使ったやり方を図解で学べる。
●abc分析にまつわるよくある質問、マニュアルを入手できる(無料ダウンロード)。
abc分析とは
abc分析とは、商品の重視する指標(売上・コスト・在庫など)を決めて、ウェイトが大きい順にa、b、cの3グループに分類する分析方法です。
abc分析の目的は、優先すべき商品(売上や在庫)・サービス・顧客などの優先順位を明確化し、予算・時間・人材などの経営資源の分配を最適化することにより、売上や利益の向上を図ることです。
abc分析のabcとは、Activity Based Costing(活動基準原価計算)の略です。
下のグラフは、ある企業の商品AからJまでの10商品の「売上高」と「その累積構成比」を指標としたabc分析のアウトプット例です。
abc各グループの特徴と対策例
abc分析のアウトプットをもとに、aグループからcグループに対してそれぞれ必要となる対策例は下記の通りです。
基本的には重要度の高いaグループの商品群に対する対策を最も手厚くすることになります。
aグループの特徴と対策例
売上高の上位7割以上を占めている、重要度の高い商品群。
在庫を切らすことによる機会損失を極力避ける必要がある。
bグループの特徴と対策例
売上高の上位7割から9割を占めており、aグループに次いで重要な商品群。
基本的な対策は現状維持。
cグループの特徴と対策例
売上高が1割に満たないグループ。
売れ残りの在庫を削減したり、改善案が見つからない場合は撤退まで検討する必要がある。
abc分析のベースとなる「80:20の法則」
abc分析のベースとなる考え方は、20世紀前半まで活躍したイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した、「売上の8割は2割の顧客によってもたらされる」「売上の8割は2割の社員によってもたらされる」という「パレートの法則(80:20の法則)」です。
経営戦略への活かし方
abc分析を活用した主な経営戦略として、マーケティング施策、商品の在庫管理、コストの見直し、経営資源の最適化、顧客アプローチの最適化が挙げられます。
マーケティング施策
aランク商品には、CM出向の強化やDMなど広告・プロモーションに注力する。
商品の在庫管理
aランク商品の販売機会喪失防止のため、欠品が発生しないように在庫管理を見直す。
コストの見直し
コストの高い商品やサービスを見直し、コスト低下の余地を検討する。
経営資源の最適化
aランク商品に充てる人材配置を再検討する。
顧客アプローチの最適化
aランクの顧客に対するケアを強化し、cランクの顧客への対策を検討する。
デシル分析、RFM分析との共通点&相違点
abc分析と類似した分析に、デシル分析とRFM分析があります。
デシル分析との共通点&相違点
共通点は、売上高とその累積構成比が指標になることです。
相違点は、デシル分析の10分類に対して、 abc分析は3分類であることです。さらにデシル分析では均等に10分類するのに対し、 abc分析では累計構成比に応じて3分類の割合を決めます。
分析のリソース(予算、時間など)で制約がある場合、大きな枠で顧客像を把握するデシル分析が重宝されていますが、 abc分析もシンプルかつわかりやすいアウトプットを手軽に得ることができる分析手法です。
RFM分析との相違点
「Recency(最新購入日からの経過期間)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(累計購入金額)」という3つの指標から顧客を「新規」「優良」「離反」と細かく分類するRFM分析とは異なり、少ない変数で時間と手間をかけることなく分析することができるのが、abc分析です。
エクセルを使ったabc分析
abc分析は、エクセルで簡単におこなうことができます。デシル分析と同様、煩雑な操作はありません。また、分散分析で使う分析ツール、ロジスティック回帰分析で使うソルバーも使わず、判別分析で頻繁に使う複雑な計算式や関数も使いません。
エクセル(Excel)でabc分析をする手順
まず初めにデータを整形し《1》、売上構成比とその累計構成比を算出します《2》。
そして累計構成比を基準として、分析対象の商品やサービスをaからcまでの3グループに分類《3》、組み合わせ(棒と折れ線)グラフを作成して、分析結果をわかりやすく可視化します《4》。
1.データの整形
下図のExcelのデータ①「商品別売上高」は、商品AからJまで10種類の商品の売上高の一覧で、売上高の高い順に並んでいます。
もし売上高の高い順に並んでいない場合は、C列をキーにして降順(値の大きい順)ソートして下さい。
この表のD列に売上高の「構成比」、E列に「累積構成比」、F列に「区分」の欄を追加します(Excelのデータ②「商品別売上高・構成比」)。
2.売上構成比の算出
構成比(D列3~13行)、累積構成比(E列3~12行)の各セルに、計算式を入力します。
「$」は絶対参照といい、構成比の分母は全て合計のC列13行(C$13)ということです。
累積構成比は、構成比を足し合わせた値です。
構成比(D列3~13行)、累積構成比(E列3~12行)の各セルに計算結果が表示されました。
E列12行の商品Jの累積構成比が100%になっていることを確認してください。
3.累積構成比による分類
累積構成比を基にして、各商品のa、b、cのグループ分けをします。
まず、任意のセル(この場合、H列3行~J列5行)に「累計構成比が0%から79%はaグループ、80%から89%まではbグループ、90%から100%まではcグループ」という基準を入力します。
次に、F列3~12行に、VLOOKUP関数を入力します。VLOOKUP関数によって、E列の累積構成比を参照しながら、各商品がabcのどのグループに分類されるのかがF列に表示されます。
F列3~12行にa、b、cのグループ名が表示されました。商品AからEまでがaグループ、FとGがbグループ、HからJまでがcグループという結果になりました。
4.グラフ作成によるビジュアル化
売上高(C列)と累積構成比(E列)を基に、組み合わせグラフを作成します。
売上高が第1軸の集合縦棒、累積構成比が第2軸のマーカー付き折れ線です。
*このグラフはデフォルトのグラフに整形を施しています。
次に、3つのグループの売上高の縦棒の色を変えてみました。
パレートの法則(80:20の法則)の教科書通りにはなりませんでしたが(あくまでもabc分析の基になった理論に過ぎません)、abc分析の結果のわかりやすいアウトプットとなりました。
abc分析にまつわる、よくある質問
Q:abc分析において注意することを教えて下さい。
abc分析には、3つの注意点があります。
第一に、季節性やセールなどの影響を考慮することです。
分かりやすい例として、2月のバレンタインデーの特需期のチョコレート類の売上を、そのままabc分析したところで有効な結果を得ることはできません。
さらにセールなどの実施状況も加味する必要があります。
第二に、高い売上を期待できなくても、集客効果の高い魅力のある商品(見せ筋商品)は、abc分析の結果、cグループに分類されてしまうケースも想定されます。
しかし、在庫を切らすことは避けなければならないという点です。
第三に、Eコマースにおいては、単純にabc分析の結果を活用すればいいわけではないという点です。
Eコマースでは、Cグループに分類されてしまった販売機会の少ない商品であっても、実店舗に比べると在庫管理面で低コストなことがあり、取り扱いやすい場合があります。
〝ロングテールの法則〟によって、ごく稀にしか売れない商品群でも塵も積もれば山となるので、在庫を切らせないほうがいい商品もあるという点を考慮しましょう。
Q:abc分析とデシル分析、ともに簡単にできますが、どのように使い分けるのでしょうか。
一概には言えませんが、マーケティング課題や研究課題次第となります。
どのような場合にどちらの分析のほうが適しているか厳密な決まりはありませんが、強いて言うならば、デシル分析は顧客分析において重宝されてきました。
対して、abc分析は在庫管理の分野で重宝されてきた中、売上や利益、顧客分析など広い分野で使われてきた経緯があることを踏まえておいたほうがいいでしょう。
Q:abc分析の応用的な使い方はありますか。
SWOT分析にクロスSWOT分析があるように、abc分析にもクロスabc分析があります。
売上高を基準にしたabc分析の結果と、利益高を基準にしたabc分析の結果をマトリクスにして比較すれば、より緻密な商品・サービスの分析と施策立案が可能になります。
無料ダウンロード『abc分析』マニュアル
本記事で解説した内容をまとめた資料「abc分析マニュアル-Excelのやり方と活用法-」は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。
おわりに(まとめ)
最後に、ここまで解説してきた内容をまとめました。今一度の確認に活用してください。 |
abc分析とは、商品の売上・コスト・在庫など重視する指標を決め、ウェイトが大きい順にa、b、cにグループ分けする分析方法です。abcは、Activity Based Costing(活動基準原価計算)の略です。
abc分析の目的は、優先すべき商品(売上や在庫)・サービス・顧客の優先順位を明確化し、予算・時間・人材などの経営資源の分配により、売上や利益の向上を図ることです。
abc分析結果を活用した主な経営戦略は、マーケティング施策、商品の在庫管理、コストの見直し、人材など経営配置の最適化、顧客アプローチの最適化です。
基本的に、重要度の高いaグループの商品群に対する対策を最も手厚くすることになります。
abc分析とデシル分析との共通点は、売上高とその累積構成比が指標になることです。相違点はデシル分析の10分類に対して、 abc分析は3分類であることです。さらにデシル分析では均等に10分類するのに対し、 abc分析は累計構成比に応じて割合を決めます。
エクセルを使ったabc分析の手順は、1.データを整形し、2.売上構成比と累計構成比を算出します。次に3.累計構成比を基準として分析対象の商品やサービスをaからcまでの3グループに分類し、4.組み合わせ(棒と折れ線)グラフを作成、分析結果をわかりやすく可視化します。