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価格調査に使えるPSM分析とは?基本をわかりやすく解説

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目次[非表示]

  1. はじめに
    1. この記事を読んで分かること、できるようになること
  2. PSM分析とは
  3. PSM分析の手順とアンケート設問項目
    1. PSM分析の手順
    2. アンケート設問項目
  4. PSM分析で導き出す4つの価格
  5. PSM分析の4つの交点
  6. PSM分析の4つの交点と5つの受容価格帯
  7. PSM分析と他の価格調査との相違点
    1. 直接質問法との違い
    2. CVM分析との違い
    3. コンジョイント分析との違い
  8. PSM分析のメリットとデメリット
    1. PSM分析のメリット
    2. PSM分析のデメリット
  9. Excelを使ったPSM分析
    1. 1.ローデータの整形
    2. 2.集計表(実数)の作成
    3. 3.集計表(構成比)の作成
    4. 4.PSM分析の4つの交点
    5. 5.交点の算出方法
    6. 6.PSM分析の4つの交点(再掲載)
  10. PSM分析にまつわる、よくある質問
    1. Q:PSM分析を行う上でのポイントは他にありますか。
    2. Q:PSM分析の回答形式を、自由記述回答ではなく、選択肢にしてもいいでしょうか。
    3. Q:Excelを使ったPSM分析のグラフは左右非対称ですが、問題ありませんか。
    4. Q:PSM分析をExcel以外で実行できるソフトはありますか。
  11. 無料ダウンロード『PSM分析』マニュアル
  12. おわりに(まとめ)

はじめに

代表的な価格調査の1つ「PSM分析」について、基本知識とエクセルを使ったやり方を、グラフやエクセル画面の画像を交えて解説していきます。

この記事を読んで分かること、できるようになること

●PSM分析の基本、目的、注意点、他の価格調査との相違点を理解できる。
●エクセルを使って、実際にPSM分析ができるようになる。
●PSM分析にまつわるよくある質問、マニュアルを入手できる(無料ダウンロード)。

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PSM分析とは

PSM分析とは、Price Sensitivity Measurement(価格感度分析)の略語で、企業が商品やサービスの適性な価格を設定するために行う、代表的な価格調査です。具体的には、消費者に受け入れられる受容価格帯を明らかにします。

PSM分析は、1976年にオランダの経済学Van Westendorpによって開発されたことから、「Van Westendorpモデル」とも言われています。

PSM分析を行うことで、商品・サービスがどの程度の価格(帯)なら消費者に受け入れられるかを把握することができ、売り上げや顧客数を最大化するための価格が試算できます。

注意点は、消費者から受容される価格は、必ずしも購入される価格とは限らないことです。

PSM分析の手順とアンケート設問項目

PSM分析の手順

主な手順は、
1.アンケートを用意・実施する
2.結果を集計表にまとめて、グラフ(折れ線グラフ)化する
3.グラフの4つの交点を確認し、受容価格帯を判断する
の3ステップです。

アンケート設問項目

アンケートの設問は、以下の4問です。

回答形式は自由記述回答で、回答者にはテキストボックスに半角数字で記入してもらいます。

①この商品(サービス)について、あなたが高いと感じ始める価格はいくらくらいですか。
②この商品(サービス)について、あなたが安いと感じ始める価格はいくらくらいですか。
③この商品(サービス)について、あなたがこれ以上高いと買えないと感じ始める価格はいくらくらいですか。
④この商品(サービス)について、あなたがこれ以上安いと品質に不安を感じ始める価格はいくらくらいですか。

PSM分析で導き出す4つの価格

PSM分析の結果、「理想価格」「妥当価格」「上限価格」「最低品質保証価格」という4つの価格を導き出すことができます。下表に4つの価格ごとの特徴をまとめました。

「理想価格」が最も好ましい価格です。


交点
特徴
理想価格

「これ以上安いと品質に不安」

「これ以上高いと買えない」

購入の抵抗感が小さく、マーケットに浸透しやすい価格
妥当価格

「安いと感じ始める」

「高いと感じ始める」

これくらい支払っても「仕方がない」と思い始める価格
上限価格

「安いと感じ始める」

「これ以上高いと買えない」

この価格より高いと「買わない」価格
最低品質保証価格
「これ以上安いと品質に不安」
「高いと感じ始める」
この価格より安いと「品質が不安」な価格

PSM分析の4つの交点

PSM分析結果の4項目は折れ線グラフの交点となります。横軸が価格、縦軸が回答者比率です。
これら4つの交点が、「理想価格」「妥当価格」「上限価格」「最低品質保証価格」となります。

PSM分析の4つの交点と5つの受容価格帯

4つの交点それぞれの間が受容価格帯となります。
適正な価格帯は「理想価格」と「妥当価格」の間です。

PSM分析と他の価格調査との相違点

直接質問法との違い

価格調査の中で最もシンプルなのは「直接質問法」です。

直接質問法では、潜在的な購入者に対して、「○○○○ (商品・サービス)をいくらなら買いたいと思いますか」といった質問で、支払う価格を直接聞きます。

直接質問法のメリットは簡単に実行できることですが、潜在的な購入者が、実際に支払うよりも低い価格を回答する傾向があるというデメリットもあります。

これに対し、PSM分析は間接的な質問を複数回行うことで、間接的に価格を測定するので、バイアス(偏り)が少ない形で支払い意欲を測定することができるというメリットがあります。

CVM分析との違い

最もよくPSM分析と比較されるのはCVM分析(Contingent Valuation Method)です。

CVM分析とは、「様々な種類の生態系や環境サービス等の経済的価値を明らかにする」ことを目的として、仮想的な市場を描いたシナリオの元での、商品・サービスに対する回答者の支払い意思額を推定する分析です。

例)「この商品が3,000円だったら、購入したいと思いますか」
⇒ 「はい」と答えた場合、「3,500円だったら、購入したいと思いますか」
⇒ 「いいえ」と答えた場合、「2,500円だったら、購入したいと思いますか」

以上のような質問を繰り返し、回答者がどの価格で購入する意思があるのかを明らかにします。

自由記述回答によるPSM分析とは異なり、CVM分析では調査する側が提示した価格に対する購入意向がわかるので、実現不可能や解釈不能といった結果になることが少ないことがメリットです。

コンジョイント分析との違い

また、価格(帯)にフォーカスした調査ではありませんが、コンジョイント分析も広義の価格調査に分類されることもあります。
コンジョイント分析とは、商品やサービスの属性と水準を基本とする総合的な分析で、機能・効能やデザインなど他の属性との組み合わせで分析されますが、価格は外すことのできない属性の一つです。それでも価格(帯)にフォーカスを当てる調査としては、PSM分析、CVM分析、直接質問法の方が一般的です。

PSM分析のメリットとデメリット

PSM分析のメリット

自由記述回答による数値入力なので、分析結果は顧客視点での価格設定となることです。
また、直接質問法やCVM分析と比べると、設問数が少ないこともメリットです。

PSM分析のデメリット

PSM分析結果が顧客視点での価格設定であることの裏返しで、実現不可能な価格と価格帯になりやすいことです。商品の生産やサービスの提供には、原価と利益を綿密に計算しなければならず、消費者の価格感度とズレが生じることもあります。

また、学術的な根拠が提示されていないこともPSM分析のデメリットです。実際には「上限価格」以上でも購入を検討する人はいますし、「最低品質保証価格」以下でも品質が悪いとは思わない人もいます。

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Excelを使ったPSM分析

ここからは、実際にExcelを使用したPSM分析のやり方を事例とともに解説していきます。

1.ローデータの整形

下図は、あるFMCG(日用消費財)のPSM分析のアンケート設問に対する、自由記述回答結果です。

・Q1.高いと感じ始める価格
・Q2.安いと感じ始める価格
・Q3.これ以上高いと買えないと感じ始める価格
・Q4.これ以上安いと品質に不安を感じ始める価格

回答者の合計は552人ですので、A列553行からE列553行までのローデータとなります。

2.集計表(実数)の作成

G列3行から6行に、設問の文言「高いと感じ始める」「安いと感じ始める」「高すぎて買えないと感じ始める」「安すぎて不安に感じ始める」を入力します。

次にH列2行からQ列2行に、50から500の価格を入力します。最小の50円から最大の500円まで50円ごとの区分としましたが、調査ごとに最適な最小価格、最大価格、価格区分を設定します。

価格は、この表の各セルに入力する計算式で参照するので文字列の「50円」ではなく、半角数値の「50」で入力して下さい。

最後にH列3行からQ列6行に計算式を入力します。例えばH列3行は「50円で高いと感じ始める」人の人数です。

ローデータのB列2行から553行までの範囲で「50円で高いと感じ始める」人の人数を計算する式は「=COUNTIF($B$2:$B$553,“<=”&H2)」です。「“<=”」は「以上」です。式の最後の「 H2 」は「50(円)」です。

同じロジックでI列3行からQ列3行まで計算式を入力します。

「安いと感じ始める」の計算式は「=COUNTIF($C$2:$C$553,“>=”&H2)」で、 「“>=”」が「以下」となります。

3.集計表(構成比)の作成

作成した集計表をコピーし、S列2行からAC列6行の範囲にペーストします。
実数の入った集計表の構成比(%)を算出するためです。

T列3行からAC列6行までのセルの書式設定を「%」に設定します。

T列3行はH列3行の構成比です。H列3行の数値を回答者合計人数の「552」で割ります。
計算式は「=H3/552」です。

T列3行からAC列6行までの全てのセルに計算式を入力します。

最後にS列2行からAC列6行までを範囲指定し、折れ線グラフを作成します(次ページ)。
なお、次ページの折れ線グラフは整形済のグラフです。トンマナや折れ線のデザインなど、工夫してください。

4.PSM分析の4つの交点

「理想価格」161円、「妥当価格」180円、「上限価格」218円、「最低品質保証価格」142円という結果になりました。

5.交点の算出方法

交点の算出では、Excelのソルバーを使います。まず、ソルバーをアドインしましょう。

ここでは「上限価格」を算出してみましょう。「上限価格」 とは、「安いと感じ始める」と「高すぎて買えないと感じ始める」の交点です。

グラフの「上限価格」の交点をクローズアップすると、x軸(横軸)では200円と250円の間にプロットされていることがわかります。

次にy軸(縦軸)のパーセンテージを見ましょう。「安いと感じ始める」のは200円で15%、250円で2%、「高すぎて買えないと感じ始める」のは200円で8%、250円で15%です。

Excelの別のシートに、交点算出用の以下の項目と計算式を入力しましょう。

Excelのデータタブソルバーをクリックします。
目的セルの設定:(T)と変数セルの変更:(B)に以下の値を入力後、「解決(S)」をクリックします。

OKをクリックします。

交点のxは「217.5」、yは「10.45」という計算結果が表示されました。
価格はxなので「上限価格」は218円(217.5円を四捨五入)ということがわかりました。

6.PSM分析の4つの交点(再掲載)

「上限価格」以外の3つの価格も同様に算出しましょう。

「適正」価格は161~180円の範囲内ということがわかりました。

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PSM分析にまつわる、よくある質問

Q:PSM分析を行う上でのポイントは他にありますか。

直接質問法やCVM分析など価格調査全般で重要なポイントですが、調査対象者(回答者)は調査対象の商品やサービスへの関与度がある程度高いことが必須です。

例えば、普段の生活で生鮮食料品の買い物をしない人に、野菜や果物の価格調査を行っても有用なデータは収集できません。よって、通常は事前のスクリーニング調査が必要となります

Q:PSM分析の回答形式を、自由記述回答ではなく、選択肢にしてもいいでしょうか。

ごく稀に選択肢を使った設問を見かけますが、選択肢に提示された価格に引っ張られて回答にバイアスがかかる傾向があるため、あまりお薦めできません。

Q:Excelを使ったPSM分析のグラフは左右非対称ですが、問題ありませんか。

はい、問題ありません。データが左右対称できれいに分布することのほうが稀です。

Q:PSM分析をExcel以外で実行できるソフトはありますか。

PSM分析はRでも実行できますが、あまり一般的ではありません。
調査会社の提供しているフリーの集計ツールの中には、PSM分析を容易に行えるものもあります。交点も自動的に計算されますが、各調査会社独自のデータ形式のみ集計が可能です。

無料ダウンロード『PSM分析』マニュアル

本記事で解説した内容をまとめた資料「PSM分析-Excelを使った4つの価格と5つの受容価格帯の算出
-」は、下記よりダウンロードすることができます(無料)。

おわりに(まとめ)

最後に、ここまで解説してきた内容をまとめました。今一度の確認に活用してください。

PSM分析とは、Price Sensitivity Measurement(価格感度分析)の略語で、商品やサービスの適性な価格(帯)を設定するための、代表的な価格調査です。

目的は、商品・サービスがどの程度の価格なら消費者に受け入れられるかという受容価格帯を把握することです。

なお注意点は、PSM分析のための調査は、購入意向の調査とは違うことです。

PSM分析のアンケート設問は4つで、「高いと感じ始める価格」「安いと感じ始める価格」「これ以上高いと買えないと感じ始める価格」「これ以上安いと品質に不安を感じ始める価格」です。

回答形式は、数値による自由記述(半角数字)です。

PSM分析の結果、4つの価格を導き出すことができます。これらは折れ線グラフ(横軸が価格、縦軸が回答者比率)の4つの交点で、「理想価格」「妥当価格」「上限価格」「最低品質保証価格」に分類されます。

これら4つの価格の間が、受容価格帯ということになります。

受容価格帯は「安すぎる」「安い感じがする」「適正」「高い感じがする」「高すぎる」の5つです。

PSM分析をExcelを使っておこなう場合、表側に設問項目(「高いと感じ始める」から「安すぎて不安に感じ始める」まで)、表頭に任意の価格を入力した集計表(実数と構成比)を作成してから、4本の折れ線グラフを作成します。
4つの価格(交点)を算出する場合には、Excelのソルバーを使います。

【参考文献】

『値決めの教科書-勘と経験に頼らないプライシングの新常識』(高橋嘉尋著、日経BPマーケティング、2023年6月)

柏田宮亜
柏田宮亜
この記事はアイブリッジ 柏田宮亜が編集・構成を担当しました(編集者 / コンテンツディレクター)。2020年6月よりセルフ型アンケートツール『Freeasy』に関わり、記事の編集・構成を担当。読者の目線に立って、わかりやすく、役立つ情報を届けられるよう心がけています。

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